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聖女に愛された侯爵令嬢は愛を貫く決意をする  作者: 樋口 涼
ブランの家

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17/25

2

寝起きの所為か、灰色の髪の毛が所々跳ねている。

それを椅子に座ったブランの後ろから、サラがブラシをかけ真っすぐに戻していった。

ポットはすぐさま、ブランのカップに紅茶を注ぐ。


「こんな朝から…」


そう言ってあくびをする。

ブランは『朝』と言うが、もう昼近い。


「勇さんを帰す方法があるのか知りたくて…」


セピアが切り出す。


「後、昨日の話に出ていた邪神の事や、ノワール国の話も…知って居たら教えて欲しいの」


セピアの言葉に、ブランはまだ眠そうな目をこすり、あくびをした。

一応、昨夜三人が話していた事を伝える。


「出来れば…無事に勇さんを元の世界へ帰したいの」

「三人の考えは分かったよ。けど、帰す方法は分からない」


ブランの言葉にセピアとロホが肩を落とす。

そして、勇の目には絶望が見て取れた。


「だけど、昨日も言った通り邪神が目覚めたら、勇の力が必要なんだ」


そう言い切った。


「目覚めるって、どこでとか…見当はついてるの?」

「…邪神については昨日言った以上の詳しい事は言えない。まだ不明の事も多いし…禁書扱いの本に載っている事だからね。でも、目覚めたら…世界は滅ぶ…滅ばなくても…多数の死者や壊滅する国は出るだろう」


ブランの視線がセピアに行く。

そして、一口紅茶を啜り言葉を続けた。


「そして邪神の目覚めと共に、勇者…勇の力も目覚めるとされている」

「私の…力…ですか?」

「あぁ。君は今何も出来ないだろう?魔法を使う事も剣技もない」


勇の表情が曇るのを見て、セピアは「そんな言い方しないで」とブランに抗議する。

ロホもそれに頷いた。


「勇は来たばかりなのよ。ブラン」

「そうだ。召喚魔法が成功してしまった。だから、邪神が目覚めるのが近い」

「邪神を倒せたら…勇さんは戻れるの?」

「封印された事は…本には書かれていた。でも、勇者がその後どうなったか、記載はない」


三人は曇った表情を浮かばせた。

ブランは淡々と続ける。


「邪神は…建国前に居た神だと会議の間で言ったが、本当はノワールが生み出した神だろう。…いつか再びノワールが邪神を蘇らせる。と、続くページに書かれていた。いつ復活するか分からない邪神に、歴代の王は何年かに一度、召喚を試みては成功しない事に安堵していたんだろう」


でも…。と、勇を見る。


「今回は成功してしまった」


ブランの言葉を三人は静かに聞いている。

ブランは少し悩んだが、当事者である勇には関係するから…と前置きし、話し始めた。


「邪神は人の心を食う物だと記されている。心とは魂の事だと思う…体だけが残り、魂は邪神の中で苦しみ続けると」


その邪神を従えたノワールが他国を侵略し始め、滅亡しかけた五つの国が同盟を結び戦った。


「本の中での『創造神』は国の事で、聖女は化身とかではなくもともとはこの世界の者であると…考えている」


その同盟国の中に居た、聖なる力を持った女性。

後に聖女と呼ばれる存在が、窮地に追いやられ、死を覚悟した時、後に勇者と言われる者が異世界から現れ、聖女と勇者が力を合わせ邪神は封印される。

その後、同盟国が一つの国になり、プリシカ王国が誕生した。


それが、正しい歴史なのでは無いかと、ブランは考えていた。


「戦って勝利した。それ以上の事が流通する本に書かれないのは、これが広がると民衆に差別が生まれ…ノワールからここへ逃げてきた人達が迫害されると考えた歴代の王達が伏せたからだと思う」


五つの国とノワールの人間が混じったこの国だから、結果どんな人間でも受け入れるのだと、ブランは言う。


「勇者は…何をしたのかしら」


それにしても…と、ロホが考え込む。


「詳しくは分からないが…聖女は浄化し、勇者は邪神を抑える。抑えられなければ…封印は出来ない」

「束縛魔法でも特化しているのかしら…」

「体…あるいは心を縛るのか。今も禁書は研究されている。昨日見せたのは研究員が訳したヤツだ」

「持ち出し厳禁では無かったの?」


ロホが疑問を呈す。


「王が自分と数人の研究員には許可を出した」

「どうして?」


セピアもいずれは王室に入る身だが見せて貰っていないのに。と、不服な顔をする。


「さぁ…。何か思い当たる節が王には在ったのかも…召喚魔法を試みたのも歴代王最多だ」

「え?…ブラン。召喚魔法は…いつからかけてたの?」

「…16年前から、月一で」

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