表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女に愛された侯爵令嬢は愛を貫く決意をする  作者: 樋口 涼
城下町へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/25

5

良い木で出来ている箱は、蓋部分にガラスが嵌められ、開けなくとも中身が見える。

並んでいるのはブレスレットだった。


「好きな物は有る?」


よく見ると、セピアがしている腕輪に似た物も入っている。


「こっちは魔法補助具。これと一緒ね」


セピアは自分の腕輪を指さす。


「そしてこっちが魔法道具。補助じゃなくて、固定された魔法がかけられていてすぐ使えるの」


鎖に小さな宝石が一、二個ついている物や、石が糸や紐で繋げられたタイプのブレスレットが、店内の照明でキラキラと反射していた。

勇はどれも「高そうだ」と思う。


鎖はこんな店の物だから金や銀で出来ていそうだし、石屋さんで見るようなタイプも良い物の様だ。と悩む。


「どれでも良いのよ。ただ…勇さんの場合ここからここの、どれかね」


セピアは小箱の中の範囲を区切る。


「この中で選んで」


何の魔法がかけられたブレスレットなのか、隠しておきたい雰囲気がセピアから漏れている。


「わ…分かりました」


セピアの区切った範囲内に、勇が一際魅かれた物が入っていた。

シンプルな銀色の鎖の中心に、三色の石が並んでいる。

赤と黄色、そして白。

そのどれもが揺らめく緑色を有している。


「これ、オパールみたいで綺麗…」


勇はぽそっと呟いた。


「オパールを知って居るの?」

「はい。私の世界にもありました…母が好きで…」


一日しかまだ経って居なかったが、勇は酷く懐かしく感じた。


「そう…じゃあ…これが良いわね」


セピアは微笑むと小箱を開けて、オパールのブレスレットを勇の左腕に付けた。


「入る様に念じて」


キョトンとする勇にそう言うと、反対側の手に制服を持たせた。

勇は言われるままに「入れ」と念じる。


「あっ!!」


制服はシュルッと音を立てると、ブレスレットに吸い込まれる様に消えた。


「これは収納魔法のかかったブレスレット。容量は決まっているけれど、服なら後5着くらいは入るわ」


勇は道具とは言え初めて魔法を使った事と、制服が手元に有る安心感、そして母親を思い出した。

彼女は波の様に感情が一気に押し寄せ、言葉を無くす。


「ブレスレットは私からプレゼントさせてね」


勇の目尻に浮かぶ涙を、セピアがそっと拭う。


「帰っても、忘れない様に」


「そっちの世界で使えるか分からないけど」と続けるセピアの言葉に、勇は思わずセピアに抱き着いた。


「ありがとうございます…」


震える勇の背を、セピアは撫でた。

同じくらいの背丈の、可愛い女の子。


(勝手に勇者として呼ばれた…この子を、必ず帰してあげないと…)


店主が飲みやすい温度の紅茶を淹れてくれ、落ち着きを取り戻すと二人は店を出た。

勇は店主に謝罪とお礼を、頭を下げながら言うと、店主は優しい笑みを彼女に向けながら「またいらしてください」と丁寧に深く頭を下げた。


店主の見送りを背に、ブランの家までの道を歩く。

そんなに遠くは無い。


周りにまだまだ店は在ったが、勇は自分の左腕に着けられたブレスレットを眺めるのに夢中で、寄り道もせずセピアの横を離れない様に歩いていた。


「勇さん」


セピアの声に、やっと勇は顔を上げる。


「ブランさんの家に着いたわよ」


目の前に大きな屋敷が建っていた。

屋敷を囲む塀の中心、玄関に続く小道の前には、円の形をした鉄の門が存在を主張する。

その前には、短髪の紅い髪の人影が立っていた。


「ハァイ」


その人物が手を挙げる。ロホだ。


「待ってたわ」


ロホは「あら?」っと少し驚いた後、微笑んだ。


「勇、服変えたのね。素敵じゃない。あの服も似合ってたけど、パンツ姿も良いわね」


そう言って、シンプルな紺のズボンに薄い青の少し襟もとにフリルが有るが、派手ではないシャツ姿の勇を褒めた。


「ここでもズボンの事パンツって言うんですね」

「そうよ。言わないのは…この子だけ」


ふふふ。と、ロホは笑う。


「下着のパンツの事を言ってるって勘違いしてから頑なに…ね」


そう笑うロホを見るセピアは、何か凄く言いたげな顔をしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ