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良い木で出来ている箱は、蓋部分にガラスが嵌められ、開けなくとも中身が見える。
並んでいるのはブレスレットだった。
「好きな物は有る?」
よく見ると、セピアがしている腕輪に似た物も入っている。
「こっちは魔法補助具。これと一緒ね」
セピアは自分の腕輪を指さす。
「そしてこっちが魔法道具。補助じゃなくて、固定された魔法がかけられていてすぐ使えるの」
鎖に小さな宝石が一、二個ついている物や、石が糸や紐で繋げられたタイプのブレスレットが、店内の照明でキラキラと反射していた。
勇はどれも「高そうだ」と思う。
鎖はこんな店の物だから金や銀で出来ていそうだし、石屋さんで見るようなタイプも良い物の様だ。と悩む。
「どれでも良いのよ。ただ…勇さんの場合ここからここの、どれかね」
セピアは小箱の中の範囲を区切る。
「この中で選んで」
何の魔法がかけられたブレスレットなのか、隠しておきたい雰囲気がセピアから漏れている。
「わ…分かりました」
セピアの区切った範囲内に、勇が一際魅かれた物が入っていた。
シンプルな銀色の鎖の中心に、三色の石が並んでいる。
赤と黄色、そして白。
そのどれもが揺らめく緑色を有している。
「これ、オパールみたいで綺麗…」
勇はぽそっと呟いた。
「オパールを知って居るの?」
「はい。私の世界にもありました…母が好きで…」
一日しかまだ経って居なかったが、勇は酷く懐かしく感じた。
「そう…じゃあ…これが良いわね」
セピアは微笑むと小箱を開けて、オパールのブレスレットを勇の左腕に付けた。
「入る様に念じて」
キョトンとする勇にそう言うと、反対側の手に制服を持たせた。
勇は言われるままに「入れ」と念じる。
「あっ!!」
制服はシュルッと音を立てると、ブレスレットに吸い込まれる様に消えた。
「これは収納魔法のかかったブレスレット。容量は決まっているけれど、服なら後5着くらいは入るわ」
勇は道具とは言え初めて魔法を使った事と、制服が手元に有る安心感、そして母親を思い出した。
彼女は波の様に感情が一気に押し寄せ、言葉を無くす。
「ブレスレットは私からプレゼントさせてね」
勇の目尻に浮かぶ涙を、セピアがそっと拭う。
「帰っても、忘れない様に」
「そっちの世界で使えるか分からないけど」と続けるセピアの言葉に、勇は思わずセピアに抱き着いた。
「ありがとうございます…」
震える勇の背を、セピアは撫でた。
同じくらいの背丈の、可愛い女の子。
(勝手に勇者として呼ばれた…この子を、必ず帰してあげないと…)
店主が飲みやすい温度の紅茶を淹れてくれ、落ち着きを取り戻すと二人は店を出た。
勇は店主に謝罪とお礼を、頭を下げながら言うと、店主は優しい笑みを彼女に向けながら「またいらしてください」と丁寧に深く頭を下げた。
店主の見送りを背に、ブランの家までの道を歩く。
そんなに遠くは無い。
周りにまだまだ店は在ったが、勇は自分の左腕に着けられたブレスレットを眺めるのに夢中で、寄り道もせずセピアの横を離れない様に歩いていた。
「勇さん」
セピアの声に、やっと勇は顔を上げる。
「ブランさんの家に着いたわよ」
目の前に大きな屋敷が建っていた。
屋敷を囲む塀の中心、玄関に続く小道の前には、円の形をした鉄の門が存在を主張する。
その前には、短髪の紅い髪の人影が立っていた。
「ハァイ」
その人物が手を挙げる。ロホだ。
「待ってたわ」
ロホは「あら?」っと少し驚いた後、微笑んだ。
「勇、服変えたのね。素敵じゃない。あの服も似合ってたけど、パンツ姿も良いわね」
そう言って、シンプルな紺のズボンに薄い青の少し襟もとにフリルが有るが、派手ではないシャツ姿の勇を褒めた。
「ここでもズボンの事パンツって言うんですね」
「そうよ。言わないのは…この子だけ」
ふふふ。と、ロホは笑う。
「下着のパンツの事を言ってるって勘違いしてから頑なに…ね」
そう笑うロホを見るセピアは、何か凄く言いたげな顔をしていた。




