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聖女に愛された侯爵令嬢は愛を貫く決意をする  作者: 樋口 涼
城下町へ

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4

ブランの家までの道にも、不思議な店は多かった。

美味しそうな匂いに魅かれては店を覗き、魔法道具の店の前に来ては、あれは何かと質問攻めにする。

セピアはその都度説明し、勇の反応を楽しんだ。


「そうだわ。ブランさんの家に行く前にあの店に寄りましょう!」


良い考えを思い付いた様に、手を叩く。

従者に「ロホに伝言を飛ばして」と言うと、指さした店へ勇を引っ張って行った。

向かった先は服屋だ。


「勇さんの服も確かに不思議で似合っているけれど…」


セピアが服屋に入ると女性の店主が出迎えた。


「ここの服も着てみない?」


にっこりと勇に振り向く。

王城での着替えも必要だから、と何着か手に取る。

裾の長いドレスには、可愛らしい装飾がされている。


「え…っと…」


勇は困った顔をしたが、王城では気にならなかった『珍しい者を見る視線』が、街に入ってから気にはなっていた。


「この服って…目立ちます?」

「そうね、見た事ない形だから…それに、素肌…足を見せるのは…既婚者でも未婚でも居ないの。男性も女性も…ね」


言い辛そうにするセピアを見て、勇はここまで見て来た王城の人間と街の人間を思い浮かべる。


「確かに…皆、ズボンか長いスカートだった…」


勇は腕を組み唸る。

正直に言うと、ドレスを着る気はなかった。

自分には似合わないと思う上に、着慣れていないドレスで転ぶのが怖かった。


「ズボンは…駄目ですか?」


勇は制服のスカートですら、動きにくいと思っていた。

私服は祖母から貰った物以外は、全てズボン。

動きやすいトレーナーやシャツで、目の前に掲げられたリボンやフリルが付いている服などは無い。


「ズボンね」


ドレスを店主の手に戻し、ズボンのかけられたコーナーへ行く。


「シックな色しかないわね…」


カチャカチャと眺めるセピアに、勇はシックで良いのだと言う。


「そう?」

「はい」


後は安ければ…と勇が言おうとして値札を見たが、数字は分かってもこの世界の物価が分からない。

どこまでが安く、どこまでが高いのか。

この自分の服を買うのは誰なのか、不安になる。


「お金は気にしないで」


セピアが、値札を見て固まっている勇に声をかけた。


「王様からの支度金を、オール様から預かっているから」


セピアの言葉に店主も頷き、勇に「お好きな物を」と案内した。


「でも、高すぎる物は…教えてください…」


自信なく言葉を発する勇に、セピアと店主の目がキラリと光った。

「そうね」と相槌を打つ声に、嘘の色が付いている。


結局、普段着のリボンやフリルが少なめのドレス数着、ズボンタイプを何本かと、それに合わせたシャツを数枚購入し、従者に馬車へ運ばせた。


「すごく多いんですが…大丈夫ですか?」


勇は金額もさる事ながら、従者の運ぶ量として多すぎないか不安になった。


「大丈夫よ、彼女からしたら本一冊程度よ」


魔法が使えるとは便利なモノだなと、勇は心底感心した。


「後、今着ている物は着て行きましょう。制服?は一緒に馬車に置いておきましょう」

「あ、はい」


勇は制服を手の届かない所に、置かれる事に少し不安を感じる。

自分の世界と自分を繋ぐ物が、今は制服しかないのだから無理もないが、それを口に出す事が出来なかった。

しかし、セピアは勇の不安を感じ取る。


「大丈夫。無くなったりしないわ。もし不安なら…」


店主に何かを伝えると、彼女は奥のカーテンに入り、何か小箱を抱えて戻って来た。

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