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街に近付くと土の道が終わり、レンガの道が始まる。
その道を辿り城下町の門をくぐると、真ん中と左右に分かれる道が広がっていた。
道なりに店が並び、店舗の前に商品を置いている所やテーブルや椅子を並べている所もあった。
中には薄暗い店内で、入り口の前には何も置いていない所も。
それでも営業はしているらしいのは、建物の上に浮かぶ『open』の風船の様な文字で分かる。
「城下町では風船文字を飛ばせるの」
口を半開きに上空を見る勇に、セピアが微笑む。
「風船文字?」
「えぇ。魔法道具で出しているわ。文字数に規定はあるけれど…好きな言葉が飛ばせるの」
「家と繋がって無いみたいですけど…飛んで行ったりしないんですか?」
「しないわ。大抵家の中に装置が置いてあるから、そこの範囲外には上にも横にも行かないの」
「へぇ…」と勇は関心を寄せる。
早く馬車から降りて、街を散策したい様だった。
(ブランさんの所に行く目的を忘れていそう…)
暗い話を聞く事になりそうだと考えていたセピアは、朝は暗い気持ちになっていたが、勇と居ると何とな
く明るい気持ちになる事に気付き始めていた。
「降りる前に手続きを待っててね」
セピアが勇にそう告げると、馬車は右の道に少し行った所で止まった。
セピアに付けられている従者が、外で何か話しているのが微かに聞こえた。
外のドアが開閉する音がして、馬車のドアがノックされる。
「着きました」
「はい!」
セピアの代わりに勇が反射的に答える。
「降りましょう」
セピアが腰を上げると、待っていたかのようにドアが開かれ、従者が手を差し出す。
「ありがとう」
セピアは従者の手を取ると、階段を降りる。
それを真似して勇も降りた。
「従者の方って…女性なんですね」
勇が驚いた様に言う。
「強い方よ」
セピアは驚く勇に、何も心配ないわと笑って見せた。
「普通男の人じゃないんですか?」
「勇の世界ではそうなの?」
「私の国では従者は付きませんが、物語では大抵そうですね」
「そう言えば隣国の物語でもそうね。でもこの国は違うの」
女性の従者が付くのは、王息の婚約者だからと言う訳ではない。
女性が対象者なのであれば従者は女性。男性が対象であれば男性が付くのだと、セピアは説明した。
「その方が何かと都合が良いでしょう?」
体調の事や精神的な物のやり取りも、通じる事が多い。と、セピアは言う。
「男性か女性かで何か変わるとしたら、その辺りだから」
強い男性も居れば強い女性も居て、弱い男性も居れば弱い女性もいる。
「男だからダメ、女だからダメという職種は無い」と、セピアの言葉を聞いて勇は昨日の『王を何と呼ぶか』の話を思い出す。
「本当に職業とかに男女差が無いんですね…」
「あるのが私の世界でした」と勇が悲し気に呟いた。
「ここは聖女と教皇…後はメイドさんが性別の括りに順じているんですね」
「メイドは男性もいるわよ?」
「え?…お城では…」
「城内のメイドは女性が多いわね。私の為でもあるし、王妻や王娘の為に」
「そうなんですか?男性の場合『ボーイ』ってこっちの世界では言うんです」
「ボーイ…聞いたこと無いわね」
ふむ。とセピアは考えを巡らせた。
しかし、彼女が読む本にも出て来た事が無い。
「隣国の小説にも、出てなかったと思うわ」
セピアの答えに勇は『隣国の小説』も呼んでみたい。と思う。
「ブランさんの家に行けば、男性のメイドにも会えるはずよ」
「女性の執事にも」と、セピアは付け加えた。
王城で見送りの中に居た執事が男性だったので、勇がもしかすると執事に女性が居ないと思っているかも知れないと考えていた。
「こっちの執事も女性は居ました。でも男性が多いですけど…」と、言葉を返していると「あっ」と言って立ち止まった。
「どうかした?」
「…話に夢中で街を眺めるの…忘れました」
眉をハの字に下げる。
「ブランさんの家までまだ少しあるわ。通り過ぎた所は…帰りに回りましょう」
セピアは「ロホも待って居るかも知れない」と言う。
その言葉に「そうですね」と勇は同意して、歩き出す彼女の足取りは軽かった。




