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飛翔魔法しか使えないセピアは、勇を連れて飛ぶ事が出来る程魔力が無い為、王城から城下町には馬車を乗り向かう。
メイドや執事に見送られ、勇はその者達に頭を下げながら城を後にした。
「やっぱり…異世界って凄いんですね」
勇はメイドの身支度の魔法や、執事の馬車を出現させる魔法に感嘆の意を示す。
皆の様に使えないセピアは少し居心地が悪くなるが、勇が楽しそうで良かったとも思えた。
「帰りたい」と思う気持ちが無い訳じゃない彼女は、自分を悲観して泣いているのではないかと不安だった。
(もしかしたら我慢してるだけかも…)
馬車から外を眺める勇の横顔を見る。
光を受けた勇の目と髪が、茶色に見えた。
(こうしてみると、異世界から来ただなんて思えないわね)
土魔法でも習得しそうだとも思う。もしくはロホと同じ火を。
魔法が使える者は髪や目の色が、自分の持つ魔法の属性と連動している事が多い。
王族は金髪で目も金色に近い。
なので、光の魔法だ。
(なら私は…)
持っていたとしたら『闇』だったのだろうか?とセピアは思う。
闇は強く、騎士になりやすい。
火も強く、騎士や護衛に向いているが、それ以上に攻撃魔法に特化して居る。
(…オール様の側に居る人間として、これ以上ない力なのに…)
セピアは力を出そうとしたが、出ない。
「何してるんですか?」
手を見つめるセピアに、覗き込む様な姿勢で勇が聞く。
「力が出たらなぁ…って」
「手から出るんですか?」
「そうとも言えるし、そうとも限らないわ。皆意識してないみたいなの」
攻撃したり、防御したり、動かしたり、出したり…。
考えればそれは起こっている。
「難しそうですね」
手を顎に当て考え込む勇に、セピアは珍しい物を見た気になる。
貴族相手なら嘲笑され、平民相手なら目を背けられる。
オールや聖人達は気にもしないし、聖女は「使えなくても良い」と言う。
こんな風に、真剣に向き合ってくれる相手は初めてだった。
「私も使えないんでしょうか?」
「どうでしょうね。貴女は『勇者』らしいから…」
(使える様に成るかも知れない)
そう思うと、チクリと胸が痛む。
「使えたら、セピア様に伝授できるかもしれないですね」
「え?」
「だって、始めから使える人は勘でするのかも知れないですけど、途中から…しかも説明できない子供でもないですし、使える様になったらセピア様に伝えられるかも知れません」
明るく笑う無邪気な彼女を見て、セピアも微笑んだ。
「じゃあ、使える様になった時は…よろしくね」
「はい!」
勇はにへにへと笑う。
照れ笑いの様だった。
一人異世界に飛ばされ、不安な筈で…孤独な少女が、その姿を見せない。
それよりも、自分に寄り添ってくれようとしている姿に、セピアは自信が無く傷付いて来た心が癒された気がした。
「そうね。…諦めずに」
ぽそっと呟く。
そして、勇が眺める先を見る。
城下町の入り口が丁度、見え始めていた。
「あれが城下町ですか?」
勇は立ち上がりそうにうずうずしている。
「あれが入り口よ」
門とその上に何かがぷかぷかと浮いている場所を、指さす。
街の上にも色とりどりの丸い何かや、妙な形をした物が浮かんでいる。
「わぁ…面白そう…」
目を輝かせる勇に、セピアは笑みを浮かべた。
(なんだか、妹と居る気分になるわね…)
いつもなら、自分が妹の様に接されるのに、勇と居ると少し自分がしっかりしている様に思えた。




