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聖女に愛された侯爵令嬢は愛を貫く決意をする  作者: 樋口 涼
城下町へ

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12/25

2

飛翔魔法しか使えないセピアは、勇を連れて飛ぶ事が出来る程魔力が無い為、王城から城下町には馬車を乗り向かう。

メイドや執事に見送られ、勇はその者達に頭を下げながら城を後にした。


「やっぱり…異世界って凄いんですね」


勇はメイドの身支度の魔法や、執事の馬車を出現させる魔法に感嘆の意を示す。

皆の様に使えないセピアは少し居心地が悪くなるが、勇が楽しそうで良かったとも思えた。


「帰りたい」と思う気持ちが無い訳じゃない彼女は、自分を悲観して泣いているのではないかと不安だった。


(もしかしたら我慢してるだけかも…)


馬車から外を眺める勇の横顔を見る。

光を受けた勇の目と髪が、茶色に見えた。


(こうしてみると、異世界から来ただなんて思えないわね)


土魔法でも習得しそうだとも思う。もしくはロホと同じ火を。

魔法が使える者は髪や目の色が、自分の持つ魔法の属性と連動している事が多い。


王族は金髪で目も金色に近い。

なので、光の魔法だ。


(なら私は…)


持っていたとしたら『闇』だったのだろうか?とセピアは思う。

闇は強く、騎士になりやすい。

火も強く、騎士や護衛に向いているが、それ以上に攻撃魔法に特化して居る。


(…オール様の側に居る人間として、これ以上ない力なのに…)


セピアは力を出そうとしたが、出ない。


「何してるんですか?」


手を見つめるセピアに、覗き込む様な姿勢で勇が聞く。


「力が出たらなぁ…って」

「手から出るんですか?」

「そうとも言えるし、そうとも限らないわ。皆意識してないみたいなの」


攻撃したり、防御したり、動かしたり、出したり…。

考えればそれは起こっている。


「難しそうですね」


手を顎に当て考え込む勇に、セピアは珍しい物を見た気になる。

貴族相手なら嘲笑され、平民相手なら目を背けられる。


オールや聖人達は気にもしないし、聖女は「使えなくても良い」と言う。

こんな風に、真剣に向き合ってくれる相手は初めてだった。


「私も使えないんでしょうか?」

「どうでしょうね。貴女は『勇者』らしいから…」


(使える様に成るかも知れない)


そう思うと、チクリと胸が痛む。


「使えたら、セピア様に伝授できるかもしれないですね」

「え?」

「だって、始めから使える人は勘でするのかも知れないですけど、途中から…しかも説明できない子供でもないですし、使える様になったらセピア様に伝えられるかも知れません」


明るく笑う無邪気な彼女を見て、セピアも微笑んだ。


「じゃあ、使える様になった時は…よろしくね」

「はい!」


勇はにへにへと笑う。

照れ笑いの様だった。


一人異世界に飛ばされ、不安な筈で…孤独な少女が、その姿を見せない。

それよりも、自分に寄り添ってくれようとしている姿に、セピアは自信が無く傷付いて来た心が癒された気がした。


「そうね。…諦めずに」


ぽそっと呟く。

そして、勇が眺める先を見る。

城下町の入り口が丁度、見え始めていた。


「あれが城下町ですか?」


勇は立ち上がりそうにうずうずしている。


「あれが入り口よ」


門とその上に何かがぷかぷかと浮いている場所を、指さす。

街の上にも色とりどりの丸い何かや、妙な形をした物が浮かんでいる。


「わぁ…面白そう…」


目を輝かせる勇に、セピアは笑みを浮かべた。


(なんだか、妹と居る気分になるわね…)


いつもなら、自分が妹の様に接されるのに、勇と居ると少し自分がしっかりしている様に思えた。

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