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聖女に愛された侯爵令嬢は愛を貫く決意をする  作者: 樋口 涼
城下町へ

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11/25

1

しかし、この世界の過去や勇の帰還方法を調べると決まった所で、三人は少し頭を悩ませた。


「…どこから調べよう…」


何だが勢いよくは言った物の、セピアは思いつかない。

それは二人とも同じな様で、特に勇は異世界から来たばかりだ、無理は無かった。


「邪神について知ってそうなのは王とブランと聖女?」


ロホが指折り挙げてみたが、この中で話が聞けそうなのはブランだけの様な気がした。


「聖女…様は…?」


勇が名を挙げてみたが、セピアもロホも難しい顔をした。


「セピアが…犠牲になるならイケるかも」

「!!」


ロホの言葉にセピアは身を固くする。

勇の視線はセピアに注がれるが、それから目を反らし…と言うよりも目を閉じて彼女は唸る。


「ぎ…犠牲にはなりたくない…なぁ…」


セピアの脳裏には、聖女に抱きしめられたままの自分が浮かぶ。

そして多分、聞きたい事を聞く暇は無いだろう。

全ては聖女の手の上で、物理的にも精神的にも転がされるのがオチだ。


「話を聞きに行っても…はぐらかされそう…」


三人はため息を吐いた。


(やっぱり、ブランさん一択だよ…)


セピアはロホをちらっと見る。


「…そうね…ブランに聞くしか今は手が無さそう」


ロホはセピアの言いたい事を汲み取る。


「あの、本とかってないんですか?」


勇は少し好奇心を覗かせた顔をしている。

こちらの本が読めなくとも、見ては見たい様だ。


「歴史書的な過去の本は王族が管理しているの。物語としてもそんなには残っていないわ。…あっても私達が知って居る程度の事よ」


お手上げの様子のロホに、セピアが付け足す。


「昔、プリシカ王国とノワール国が戦争していたって事くらいなの」


どう、終結したのかさえも「プリシカ王国が勝利し」としか無く、邪神の邪の字も出て来ない。


「その、王族が管理している本は見れないのですか?」

「そうね、王息か王娘か…公爵家の当主くらいかしら…」

「私はまだオール様と結婚していないから、例え婚約者でも見れないし…保管場所にさえ踏み入れた事も無いわ」


また、三人はため息を吐く。


「では…やっぱりブラン様に…?」

「そうね。…そうなると会いに行くのは明日以降ね」

「王城にはいらっしゃらないのですか?」

「えぇ、私は妃になる為の授業が有るから部屋を用意されているけれど、ロホもこの後帰ると思う」


勇はロホを見る。


「えぇ、私を含め聖人は各々王城…城下町外に家が有るわ。そこから魔法で飛んでくるの。一瞬で飛べる範囲だけど…」


ロホはセピアと勇を順番に見る。


「二人を連れていくにはちょっと準備が必要ね…」


自身のみならば簡単だが、複数になると逸れる可能性や少々事情が変わるらしい。


「それに、行くならついでに城下町を通ってみても良いんじゃない?」


ブランの家は城下町を通り過ぎ、隣国との街道の途中に位置している。

来たばかりの勇にも良い気分転換になるのではないか、とロホは言う。


「勇さんが嫌でなければ案内するわ」


セピアがどう?と聞くと「是非」と勇が目を輝かせた。


「じゃあ、決まりね。私は先にブランの家に行くわ。現地集合しましょう?」

「ロホ、護衛はどうするの?」

「マホンに頼むわ。王息にも一応報告もする」


ロホはそう言って、自分のカップに残っていた紅茶を飲み干し、チョコレートを一つ口に入れると立ち上がった。


「じゃ、また明日。行けなくなったら…その時は代わりか伝達するわ」


微笑み手を挙げると、一瞬炎が立ち上りロホの周りを囲む。

辺りが照らされたが、熱くはない。

そして、炎が消えるとロホの姿は見えなくなった。


「こんな…移動なんですね…」

「属性が火だから…熱かったり危なくはないんだけど…ね」


一番安全な移動は多分ブランの風属性か、マホンの土属性だろうな。とセピアは思う。


「さてと…明日の為にもうそろそろ休む準備をしましょうか」


セピアが自分の右腕に嵌められた腕輪を撫でる。

すると何も無かった空中に突如、可愛らしい装飾がされた鈴が出現した。


「魔法が使えないから…補助道具なの」


セピアは鈴を鳴らすと、メイド達が瞬時に部屋に訪れ、勇の風呂の準備をし始めた。


「準備の間に私の部屋の場所を教えておくわ」


そう言うと立ち上がり室外へ出た。

セピアの部屋はすぐ隣だった。


「ここが私の部屋。叫んでも防音が凄いから聞こえないの、だから何かあったらノックして」


笑顔のセピアは冗談を言うが、勇は「叫ぶ様な事が起こらない方が良い」と思うのだった。

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