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王の部屋へ着いた後、セピアはオンブル伯爵が側付の男を死後も操っていた事、アーテル子爵が前当主の心を操っていた事、そして、ノワールで見た奴隷商や街の事を話した。
「闇意外の精霊は、恐らく環境によって力を制御されているのだろう。…それに、オンブルと言う者は死後の体を…アーテル子爵は心を…か」
「はい。そしてアスールさんは…状況からして…」
「死後の…と言う訳か?」
セピアは王の言葉に頷くしかなかった。
「…何か魔法の仕組み等の事は聞いていないかね?」
「アスールさんからは強い人間には掛けられず、持続性もない。と…後は『媒体が必要な魔法』としか」
「そうか。しかし…死後の体を操る魔法と、心を操る魔法…二つも厄介な魔法が存在するとは…」
王も頭を抱えた。
アスールの時とアーテル子爵の部屋の状態から、二人とも死んだのだと考えられた。
そして、ブランは操られている。
「ブランはどちらだと思う?」
王は側付の男の時も、アスールの時も側に居たセピアから、見解を得ようとしていた。
「あ…あの…」
(分からない…けれど…)
セピアはコクリと唾を飲み込んだ。
「おそらく…ですが。死後、操られていた人は『その人ならする』行動をしていました。ブランさんは魔法陣を描き、敵を招き入れました。それは彼の意志に反しています。ですので、心を操られているだけだと思います。」
「そして…」とセピアは言葉を続けた。
オンブル伯爵のアスールとアーテル子爵に対しての言葉。
『そしてこの体にも』
『最期に役割』
「憶測ですが…オンブル伯爵は死者の体を操る魔法も、生者の心を操る魔法も使えるのだと思います」
セピアの声が震えた。
本当はそうであって欲しくない。と言う願望と、現実はそうなのだ。と言う思いがせめぎ合う。
「オンブル伯爵は…アスールさんの体を媒体…いえ、彼の血を使って…ブランさんを操っているのだと思います」
「アスールを操り、あまつさえその身体を生贄にブランを…か」
「はい。残された血が…一人分にしては少ないのと…」
セピアは自分で説明しながら、とんでもない事を口にしていると思った。
(一人を操る為に、一人の命を犠牲にするなんて)
「アスールはブランより魔力が強い…か」
言い淀んでいたセピアの代わりに、オールが言葉を繋げた。
「それって…もしかして、教会も同じ様に操られてる奴がいるんじゃない?」
聖女がオールの言葉に続いた。
「アーテル子爵もアスールと同じ状況だった筈だわ。もしかすると子爵より弱い者を…弱くとも権力が有る者を操っているのかも…」
「ありえん話ではない」
「父上、教会の者達を調べましょう」
「その前に、解く手立てだ。ブランを早急に調べるのだ」
グリ王の言葉に、オールは室外で待機している兵へ伝令を飛ばす。
「教会の誰かが操られていたのなら…お母様の遺体を盗るのも楽だったでしょうね…」
聖女の顔には苦々しい思いが浮かんでいた。
「本物であったら…だ。シェリラ…安心せよ。今回盗られた者はお前の母ではない」
「何ですって?」
「埋葬された場所は荒らされたであろう。だが、昨日オールよりシャインの事を聞かされた私は、誰にも知らせず入れ替えた」
王のそばに金色の生き物がゆっくりと姿を現した。
立派な体躯の雄ライオンだった。
金色の鬣を悠々と揺らし現れたソレは、四肢の逞しさも力強さを誇示している。
「私以外シャインがそこに居るとは知らぬ。安全な場所だ」
王の使いに相応しく、堂々たる風貌で現れたライオンは、王が撫でると子猫の様に王にすり寄った。
「無事なのね…?」
「その眼で確かめるか?」
「…出来るなら」
聖女の言葉に一瞬、王は考えた。
それに気が付いた聖女は言葉を足す。
「頭が無いのは分かってるわ」
「そうか」




