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Dear World  作者: 山波 孝麻
第3章 熾天使とドラーゲンドルフの魔王
252/253

第252話 白亜の戦い

 赤の女王達がヌーフォリアの南部に位置する村に到着すると、三名の人間がいて、その内、二名の人間は地上から上空にいるハルピュイアを魔法で攻撃しており、残りの一名の人間は子連れで逃げ遅れたハルピュイアを地上で追いかけ回していた。


白亜(はくあ)がその状況を()の当たりにした瞬間、脳裏(のうり)にヨミ大陸での任務で体験した記憶が鮮明に(よみがえ)った。それは、同胞の天使達が正義の御旗(みはた)の下でヨミ大陸の者達を粛清(しゅくせい)し、鮮血(せんけつ)の雨を降らせている光景だった。



 白亜(はくあ)使徒(しと)になったばかりの時に、集団で訓練を積んでいると、あることに気付いたことがあった。それは、他者と比較して、自分には、信じる、という心の所作(しょさ)(いちじる)しく(とぼ)しいと感じたことであった。


白亜(はくあ)は、物事を判断する際の材料として、正しさの論理を最重要に位置付けていた。


感情は、目標達成への努力の燃料として必要なものであり、物事の判断基準には組み込んでいなかった。


しかし、エル大陸の、特に使徒(しと)になった者達は、感情を判断の基準としているように感じた。あるいは、判断することを()め、教義(ドグマ)を信じることを優先しているように感じた。


信じるという言葉の意味においては多くの場合、理屈が含まれていない。しかし、白亜(はくあ)は理屈を必要とした。理屈があれば、判断できる。判断できれば、信じる必要がないのだ。


ヨミ大陸の者達を粛清(しゅくせい)することについて、白亜(はくあ)は理屈を求めた。他者の発言を注意深く聴き、新旧の図書を読み(あさ)り、ヨミ大陸の生物を観察して絵を描いて理解に(つと)めた。だが、一向に四本(あし)の生き物を卑下(ひげ)する理屈が見当たらなかった。


使徒(しと)として、教義(ドグマ)に反し、天使の()り方に深刻な疑念を抱いていることを自覚したまま、熾天使(してんし)にまで登りきった。白亜(はくあ)は、その代償(だいしょう)をいつか払わなくてはならない日がくることを予見していた。


そんな中で、使徒(しと)達が、老若男女(ろうにゃくなんにょ)を問わず、ヨミ大陸の者達を虐殺している光景を何度も()の当たりにし、白亜(はくあ)は先延ばしにしていた疑問に結論をつけた。


(あし)の数の違いは、生命の尊さに影響を及ぼすものではないと。


それでは、何故(なぜ)、自分はヨミ大陸の者達と(いくさ)をしているのか、という命題(めいだい)白亜(はくあ)は直面した。


答えの出ぬまま熾天使(してんし)として任務に()いた後、黄泉(よみ)の命を誇らしげに(ほふ)る同胞の姿を見て、虐殺を()めるように何度も命令を下した。しかし、無視され続けた。ある日、使徒(しと)が小さな子どもを手にかけようとしているのを見て、(くすぶ)っていた火が一気に爆発した。その結果、同胞殺しに(いた)ったのであった。


その結果、白亜(はくあ)は、信仰の厚い天使から軽蔑(けいべつ)され、中傷(ちゅうしょう)され、否定された。


それに対し、白亜(はくあ)はそういった者達の言動と真摯(しんし)に向き合い、エル大陸における常識と戦うことを決意した。自分に言葉を投げかけてくる者達に命の等価値(とうかち)について論理的な言葉で反論した。


同胞殺しに関する査問会では、停戦を命じた部下の命令不遵守(ふじゅんしゅ)を堂々と主張し、天使の本来あるべき高潔(こうけつ)さを(うった)えた。(あし)の数、種族、土地、社会体制、外観、そういった属性で一括(ひとくく)りにしてしまうことによって、偏見(へんけん)を助長し、真理が遠く離れていくことを()いた。


その結果、白亜(はくあ)はエル大陸中央議会、オリジニスより、ドラーゲンドルフの魔王単騎討伐(たんきとうばつ)を命じられたのであった。


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