第253話 同じ顔の者達
子連れのハルピュイアを追いかけ回す人間を目の当たりにし、白亜が絶叫した。そして、全身から光を放射し、叫んだ。
「グングニル。」
空中に出現した無数の光の槍が子連れのハルピュイアを追う人間へと降下し、串刺しにした。同様に、残りの二名の人間に向けて光の槍を降ろした。それにより一名は倒れ、残りの一名は咄嗟に身を投げて躱したが、そこに上空からやって来たハルピュイアが魔法を放った。
大きく歪な形をした鉤状の硝子が耳をつんざくような金切り音を立てながら空間を走り、人間を切り刻んだ。
ハルピュイアは再び空高く舞って、上空から白亜達を凝視した。白亜は子連れのハルピュイアを保護していた。
「おおぉぉい。ローレライじゃないか?久し振りだね。」
両腕を羽ばたかせながらハルピュイアのローレライは声を上げた赤の女王を見た。そして、地上へと降りて、叫んだ。
「赤の女王。貴様は私達の敵か?」
赤の女王が即答した。
「まさか。敵じゃないよ。いったい誰と戦っているのさ?」
「糞ろくでもねぇ連中だ。あいつらは突然やって来て、火口を占拠しやがった。何か企んでるに違ぇねぇ。」
「手伝おうか?」
「邪魔するなこの糞ザル野郎。あたいは全て知ってるんだ。絶対に許さねぇ。あいつらを片付けた後で貴様を血祭りにしてやるからな。ぐちゃぐちゃにしてやる。大人しく待ってろ。」
ローレライは火口へと向かうために、羽根を羽ばたかせた。赤の女王は蒼白となった顔をゆっくりと蓮華の方へと向けて言った。
「え?何で俺が血祭りにあげられるの?」
蓮華は目を細め、冷たい視線で返答した。
「知らないよ。あなた、あのヒトによっぽど酷いことをしたんじゃないの?」
「そんなことはしていない、と思う。」
「それよりも、倒れた人間の顔をよく見て。」
「ん?どうかしたの?」
「見た顔だよ。」
赤の女王はローレライの硝子の魔法によって切り刻まれた人間の死体に近付いて、顔をよく見た。途端に、赤の女王の表情が険しくなった。
その者は、魔法都市メレリンクアティスの郊外で赤の女王が殺害した人物と同じ顔をしていた。
「オスカー・ニールセン。」
赤の女王は白亜のグングニルによって串刺しにされた人間に走り寄った。その顔を見て、赤の女王は絶句した。
「このヒトもそうだ。」
赤の女王の驚いた様子を見た白亜が質問した。
「この者達をご存知なのですか?」
「うん。このヒトと全く同じ顔のヒトに、少し前に出会って、次に会った時に殺すと脅迫されたので、自分の身を守るためにそのヒトを殺害したんだ。」
「四つ子、ということでしょうか?」
赤の女王は首を横に振った。
「分からない。でも、嫌な予感がする。」
その時、大きな地響きが発生し、轟音と共に火口から八本の炎柱が立ち昇った。それはまるで胴体の長い龍なような様相を呈していて、途方もない量の末那を内包していた。




