第251話 火山島ヌーフォリア
堕天という言葉を浴びせられた白亜は落ち着きを取り戻し、白色のスラックスの膝頭に付着した土を払った。
何事もなかったように表情は真顔に戻り、赤の女王に尋ねた。
「赤の女王様はどこにお住いなのでしょうか?」
「様なんて付けなくて良いよ。俺の家はマドリーナ王国にあるよ。旅をしてるからほとんど家にはいないんだけどね。」
「マドリーナ王国?」
「ヨミ大陸の最南東にある国だよ。少し前まではタケトラ領と呼ばれていた土地なんだ。とても素敵な国だよ。王様がね、最高なのさ。」
「ヨミ大陸の最南東と言えば、グラングランがあるかと存じます。」
「あれ?グラングランを知っているの?グラングランはね、マドリーナ王国の一部なんだよ。そう言えば、クラングランには天使の市長のリアさんがいるよ。」
白亜は驚いて赤の女王を見た。
「リア様をご存知なのですか?」
「うん。数箇月の間、リアさんを警護する仕事をしたことがあるんだ。」
白亜は切実な表情となって、濃い碧眼で赤の女王を見つめた。
「リア様に私を紹介していただけないでしょうか?」
赤の女王は少し考え込んだ後、静かに返答した。
「白亜とは出会ったばかりだからさ、君がどんな人物なのかよく分からない。一緒に旅して、良いヒトだと感じたら、紹介してもいいよ。」
「もちろん、それで結構です。よろしくお願いいたします。」
マドリーナ王国最大の都市で、テチス海に面するグラングランの南には、鮫の形質を有した千家の海坊主が縄張りとする諸島がある。
そこからさらに南側にあって、ヨミ大陸とパンゲア大陸の中間付近には東西に長いヌーフォリアと呼ばれる火山島があった。その島は羽根を有した両腕に、鱗状の両足を持つハルピュイアが支配する土地であった。
赤の女王、蓮華、白亜がパンゲア大陸から帆船に乗ってヌーフォリアの本島にやって来た時、島では大規模な戦闘が繰り広げられていた。
帆船の船長はその光景を見て絶句し、入港することを拒否したことから、赤の女王は全の鳴動で、蓮華は風の魔法で、白亜は翼を羽ばたかせてそれぞれ空を飛び、島へと降りた。
大勢のハルピュイアが火山の上空を飛んで、何者かと戦闘していた。
「蓮華、白亜。ハルピュイア達が誰と戦っているか分かる?」
遠くて私は見えない、と蓮華が返答したのに対し、白亜が目を凝らして言った。
「人間、でしょうか。空中戦ではハルピュイアの方が上手ですね。」
「この先に集落があるんだよ。心配だから急ごう。」
赤の女王は走り出した。その速度は非常に速く、一足で長い距離を駆けた。蓮華と白亜も同じ速度で大地を疾走した。しゃもじは蓮華の夜の羽衣の内側にある衣嚢の中で丸くなっていた。




