表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dear World  作者: 山波 孝麻
第2章 赤の女王と漆黒の魔女
138/253

第138話 初めての戦場

 蓮華(れんげ)は兵に入隊してからわずか半年後に遠征(えんせい)を命じられた。メレリンクアティスから遥か西方に位置する黄泉平坂(よもつひらさか)に近い森林地帯が目的地であった。


この地にヨミ大陸から来た者達が跋扈(ばっこ)し、周辺の治安が悪化していた。蓮華(れんげ)は入隊から間もないこともあり、前線には(おもむ)かず、後方支援に()いていた。


ここで求められた強さは組織としての強さであり、蓮華(れんげ)の思い描いていたものとは異なっていた。この時の任務はメレリンクアティスを含む十を超える国々が参加する共同作戦だった。


他国の兵士は皆眼光が(するど)く、眉間(みけん)(しわ)を寄せており、一見すると不機嫌な表情をしていた。ほとんどの者が剣か槍を(たずさ)えており、体格が良かった。


蓮華(れんげ)はこの者達が敵になった時を想定し、勝利できるかどうかを想像してみた。距離をおけば魔法で蹴散(けち)らせる。しかし、間合いを()められると、魔法を発動する前に攻撃を受ける危険があった。それにどう対処するかを蓮華(れんげ)が思案していると、どこか遠くの方で太鼓(たいこ)(たた)いたような大きな音が何十発も響いた。



 後方支援隊は本隊の南側に位置する森林地帯の外側に(じん)()いており、音は北西の方角から聞こえてきた。誰かが、空を見ろ、と叫んだ。蓮華(れんげ)が北西の上空を見上げると、団子虫(だんごむし)のように丸くなった黒い玉が何十個もこちらに向かって飛んできていた。


蓮華(れんげ)はいつでも火の魔法、鬼火(おにび)を発動できるように、杖に魔力を()めた。黒い玉は地上に衝突する前に体を大の字にした。腕と足の側面にムササビのような(まく)があって、地面に垂直に滑空(かっくう)し、着地と同時に走り、高速で後方支援隊に向かってきた。その動作から、この者達が何度も訓練を受けてきたことが蓮華(れんげ)には一目で理解できた。


鬼火(おにび)発動。弐個壱(にこいち)各個撃破(かっこげきは)


メレリンクアティスの後方支援隊隊長が叫んだ。しかし、蓮華(れんげ)の前方には他国の戦士団がいたため、敵に向けて魔法を放つことは出来なかった。鬼火(おにび)とはヒトの頭程の大きさの火の玉を発現させる魔法であり、修練を積めば敵を狙い撃ちすることが出来る魔法である。隊長の命令は二人一組になって一人の標的を攻撃せよという内容であった。



 蓮華(れんげ)は敵の行動に違和感(いわかん)を感じた。後方支援隊を攻め落とし、本体を後ろから攻撃するなら、隠密(おんみつ)に行動するべきだ。大きな音を立て、目視(もくし)しやすい上空から攻めて来たことで、本隊に気付かれているだろうし、また、(きょ)()いているとはいえ奇襲(きしゅう)としては成立していない。


蓮華(れんげ)は向かってくる敵は陽動(ようどう)かと思い、周囲を警戒(けいかい)しながら、戦士団の隙間(すきま)から標的目掛けて鬼火(おにび)を放った。蓮華(れんげ)と同じ標的となる魔法使いが放った鬼火(おにび)は敵を()れていた。


鬼火(おにび)は動いている敵に命中させることが難しく、自分の前方に味方が布陣(ふじん)している状況ではなおさら困難であった。しかし、蓮華(れんげ)が放った鬼火(おにび)は、風の魔力に乗って、通常では考えられない速度で標的まで飛び、まるで突き刺さるかのように敵の肩に命中し、燃え上がった。


この光景には戦士団のみならず、メレリンクアティスの他の魔法使い達も驚愕(きょうがく)した。魔法で倒せた敵はこの一人のみで、残りの敵は戦士団と正面から衝突(しょうとつ)しようとしていた。


その時、後方支援隊に動揺(どうよう)が走った。太鼓(たいこ)のような音は断続的に続いていたが、後半に打ち出されていた黒い玉は明らかに飛距離が伸びており、後方支援隊を通り過ぎる角度にあったからだ。敵は長短(ちょうたん)の距離をとることで、(はさ)み撃ちを狙っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ