第三話 〜魔術師〜
六波羅は目を覚ました。
知らない天井だ……。
嘘です。言ってみたかっただけです。よく見なくてもウチの天井です。
脳内の何かに対して言い訳をしながら六波羅は起き上がろうとした。
起き上がれない。
よく見たら、両手両足が縛られていた。あと、本当に、本当にどうでもいいんだけど、俺の腹の上で件の少女が馬乗りになっていた。なっていた……。
「ファッ⁉︎ なんだこの高度なプレイ! 俺はそんな趣味ないぞ!」
「うるっさいわね! 私だってそんな趣味ないわ!」
「ないならやんな! さっさとほどきやがれこのコソ泥!」
「だからコソ泥じゃない!話を聞け!」
フィリスリーナは怒鳴ると、六波羅の首を締め上げた。
「く、くぇっ。わ、わはった。わはったからへーはなへ」
六波羅が日本語にならない言語で懇願すると、フィリスリーナは手を離してくれた。
「童貞にはこの態勢はキツイんで、できたらどいてもらえます?」
「無理に決まってるでしょう。逃げられても困るわ」
「逃げねーよ。なんで自分の家から逃げにゃならんのだ」
「ごちゃごちゃやかましいわね。童貞は黙ってろ」
「怖い。怖いよこの子……」
俺が抵抗を諦めて力を抜くと、フィリスリーナは話し始めた。
「はあ……。あなたのせいで疲れたわ。いい? 口を挟まないでよく聞きなさい」
「さっきも言ったけど、私の名前はフィリスリーナ・クランエット。イギリスのA級魔術師よ。」
魔術師。こいつ今、魔術師って言った。
「おい、クランエットさん」
「フィリスでいいわよ」
「おい、フィリス」
「口挟むな」
「はい」
六波羅を一瞬で黙らせると、フィリスは話を続けた。
「あなたは、東京都の行政が再編された理由のこと、知ってるわよね?」
「知ってるよ。あれだろ。来たるべき戦いに備えての行政再編。市町村制を無くし、東京都が一括で管理するっていう……」
現在日本は、世界規模の組織である“Cosmos”と敵対関係にある。その組織との戦争に備えて、ということだ。
実際、数年前に長崎が襲撃されているのだ。港は壊滅。周辺の町も被害を受けて民間人も十名以上が死亡。三十名程が重傷を負った。おまけに、敵の上陸直前まで艦の存在に気付けなかったという。
この再編の動きは日本中に広がっており、つい二ヶ月前には京都府が再編された。
「そう。そしてそれの原因であるCosmosなんだけど……」
「ん?」
「東京都を破壊するために、魔術師を一人送り込んで来たらしいのよね」
「はぁ? ちょっと待て。そりゃどういうことだ。ていうか東京都を破壊とか魔術師とかいきなり過ぎて信じられるかっての」
「とぼけないでくれる? 東京都は別として、魔術師に関してはいきなりじゃないでしょう? 驚くことなんてないわ」
「いや驚くから。普通に驚くから。魔術師とかお前イタ過ぎだろ」
「イタくなんてないわよ。だって」
フィリスは一度言葉を切ると、
「あなたも魔術師でしょう?」
爆弾を投下した。




