第25話
病院で再度縫ってもらう
数本外れただけなので、回復にはそう時間がかからないそうだ
次の日には杖を持つように言われたが、学校に行くことはできるようになった
もうすぐ秋休みが始まり、旅行先を決めるのだから同好会も休んではいられない
扉を開けると玲子以外の全員がいた
「玲子は剣道大会か…」
剣道の地区大会に出るため、今日は来られない
「じゃあ、旅行先を決めよっか」
「待ってよ!」
日向が止める
「今日は玲子ちゃんがいないからできないし、何よりちゃんと説明してよ!」
自分がごまかそうとしたのにわざわざ突いてくる
「…」
沈黙が流れる
「わかったよ…」
和樹も観念する
皆を椅子に座らせて話し出す
「僕は元々剣道を習ってたんだ、隣の宮道市でね」
和樹の剣道場では実際に戦える刀の使い方を教えられていた
「でも先生はこっちのかすみ市に住んでますよね?」
智彼が聞く
かすみ市とはこの高校がある市の名前だ
「そうだよ、実力のある先生がいたからわざわざ隣まで行ってたんだ」
「…それで?」
表情を変えない珠兎が続ける
「小学生の時だよ、いつものように剣道場で練習しようとしていたときに、ある女に襲われたんだ」
少し嫌そうな顔をしながら言う
「同じ道場で習っていた女でね、自分に斬りかかってきたんだ…避けようと思ったけどその前に足を丸々斬られた」
グロテスクな話に全員が息を呑む
「女も逃げていたみたいで自分が倒れたらすぐさま居なくなっていたよ」
自分の息も一旦落ち着く
「その後救急搬送されてね、足が骨も絶たれずにきれいに残っていたから義足にならずに済んだんだ」
愛莉が部屋から出て行く
男をいじめていた割にグロテスクな話は苦手らしい
「足がつながったのは良かったけど切られた神経は完全には修復されなかった…だから時々足から力が抜けるんだ」
自分の体の弱さの正体を教える
「これでわかったかい?桂さんみたいに体調悪くしちゃうから大分要旨だけにしたけど…」
「あの…いいですか?」
智彼が手を挙げる
「その…先生を斬った女の人はどうなったんですか?」
「…行方不明だそうだ、道場の人間のほとんどを殺したままね」
「そう…なの…」
珠兎は少し表情を変えたのか哀しそうな顔をする
「今日は旅行先を決めるのは無理だろうから、明日決めよう」
そう言って和樹は部屋の外に出る
すぐ壁の裏には佑一がいた
「聞いていたのか?」
「一応同僚だからね」
和樹は佑一を置いて離れていく
佑一は自分にも気づかず走って出て行った愛莉を想起する
「きっと君限定でグロテスクなのが苦手なんだろうね」
玲子は竹刀を落とす
そして、地面に崩れ落ちる
手は震えている
そして、感覚は全くない




