第23話
期末試験の日になる
後期は現代文の授業しか行われないため、古文はこのテストが集大成になる
後期にしか現代文をしないのは、社会の風潮から情報と数学の授業が増加し、その分国語の授業の時間が減ってしまったからだ
テストが終わり、採点作業に移る
やはり読解中心になるとできない生徒が増えるようで、国語の授業時間が減ったことによる問題が発生している
ただ、皆中間テストで高得点をとっているので卒業できないということはない
「これは凄いな」
だが一人だけ目を見張るほどの成績を収めた生徒がいる
それは智彼だ
前期ではむしろ解けていなかった読解問題でほぼ満点の成績を出し、文法のミスもないので90点を越える
特に“世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし”の訳出は満点以上の点数を与えたい
智彼の回答は“桜があるが故に私の心は桜が咲くのを待つ気持ちと、桜が散る悲しみに乱されてしまうのだ”
これはもし~だったら○○だったのにという用法を、さらにそうではないことを中心に置いて解釈している
まさに、夏休みに教えた言外の意味を理解できているが、これには相当努力したのだろうと思えるほどには訳が自然だ
もちろん他の生徒も“ば○○まし”の反実仮想の意味はとれているが、ここまで詳細に桜によって乱れている理由を描かれた物はない
智彼の努力に感心していると、悩んでいる由衣奈先生の声が聞こえる
「どうしたんですか?」
「あぁ…熱海先生…この子、同好会の子ですよね?」
玲子の採点結果を見る
「あらま…これは酷い…」
点数が30点を切ってしまっている
「剣道の練習を頑張ってるみたいなんだけど、授業中もいつも眠そうで…」
「中間テストの成績はどうでした?」
「そっちも50点だったからちょっと後期が不安になってくるかも…」
「そうですか…」
熱中しているからしょうがないと思いながら、和樹は採点が終わったプリントを机に戻して職員室を出る
「期末テストが終わったから後は秋休みまで体育祭だけだね!」
「そうだねぇ…」
愛莉と智彼が話している
「先生は何か出ないんですかぁ?」
日向が後ろから飛びかかろうとしてくるが避ける
「教員対抗リレーに呼び出されてしまいました…」
自分としても嫌だったが、国語の教科主任に頼まれてしまったため逆らえない
「へぇ~、いが~い」
日向が不思議そうに言うが、智彼は特に驚いていない
一方で珠兎はこちらの方を見つめていた




