第16話
今日も授業のために早めに起きてくる
すると、すでに娘も居て、四人で朝食をとる
「君は琴ができるのかい?」
古文で教養を決めるものは和歌や基本的な社会知識だけではない
「申し訳ありませんが私は音楽の才能については全くなくて…」
和樹は昔から音楽はてんでだめで、いつも平均以下どころかクラスの中で一番下のこともあった
「そうか…」
「あ…あの…私少しなら教えられると思います…」
智彼が声を出す
「本当か?!」
中納言は驚いて大きな声を出してしまう
智彼は驚くが、娘が落ち着かせてくれている
「じゃあ頼めるか?」
「は…はひ…」
まだ驚きは止まらないようではっきりと受け答えはできていない
しかし、中納言が出て行けば少しずつ落ち着いてきて、持ってこられた琴に手をかける
うちの高校の音楽の先生はかなり優秀な人らしく、智彼は見事に琴を弾いてみせる
どうすればきれいな音が出るのか、どうしたら弾き続けられるのか熱心に教えている
夕方になる頃には娘の琴も十分に成長しており、中納言には大いに喜ばれた
夜には夜で、和樹の和歌の授業をする
「“秋の夜も名のみなりけり逢ふといへばことぞともなく明けぬるものを”という和歌がありますがどうして名ばかりかわかりますか?」
和歌の純粋な訳ではなく、その裏にあるものを読み取るための練習をする
「まず秋と言えば何月ですか?」
「文月、葉月、長月です」
娘が答える
「そうです、ここで長月の由来は夜が長くなることから来ています…秋は夏至が過ぎて夜が長くなりますね?」
ちょうどいいので外にある月を見せる
「当時の人たちが会うのは夜なんです、夜が明けてしまえば家を出て行かなければなりません…でもこの和歌では愛する人との夜があっという間に明けてしまった、だから夜が長いと名のつく長月なのに短く感じるから“名ばかり”と言ったのです」
月を見ている間、智彼は自分の隣に来るが怯えていない
少し気を紛らわせるものがあるからなのか、自分に慣れてきたからなのかはまだわからない
「和歌裏の意味を読み取るにはたくさんの知識と和歌を詠むことに対する慣れが必要です…どちらにせよ和歌がわかるようになるにはたくさんの和歌を詠まないといけないんです」
自分がこちらに気を向け、智彼の目の前に自分がいるが驚かない
満月になっていた月は少しずつ欠けてきていた
それでも、現代の月よりも美しく感じる




