第15話
次の日に応接間に行くと、ある女の子がいた
「その子は私の娘だ、女の子が居なくてお互い寂しそうだったからな、お互い仲良くしてやってくれ」
少女は智彼に駆け寄ってくるが、智彼が驚くことはない
智彼と比べれば何歳も幼いが、智彼には妹が居るので年下との関わり方は慣れているだろう
「君はこちらに来てくれ」
当時は本名を呼ぶことがないため、指示語で呼ばれる
部屋から出て行くと初めて御簾越しではない状態で対面する
儀式がある日ではないため、正装の束帯ではなく冠もつけていない
普段着の直衣を着て隣の部屋に行く
「こちらなら君と直接話すことができるな」
男はくつろいだ姿勢になる
「何かあったんですか?」
「いや?今紹介した私の娘の話だ」
先ほどの娘は裳も小袿も単も着ていないため、まだ成人もしていないのだろう
「あの子の成人はもうすぐなんだが、教養がまだ足りなくてね、未来の知識というのを貸してくれないか?」
「なるほど…そういうことですか…」
あの子もきっと裳着という成人式を介して天皇家に行くのだろう
天皇家での寵愛も教養に偏る部分があるために自分たちがこちらに来ることを許したのだろう
「わかりました、せっかくここに住まわせていただいているのですから喜んでさせていただきます」
「頼んだよ」
和樹は部屋に戻される
女の子二人はすぐに打ち解けて、人形遊びをしている
(何をやればいいんだか…とりあえず結婚に関する話はしないとな…)
しばらく二人の遊びが落ち着くまで待つ
「恋の始まりというのは“垣間見る”というのぞき見からその姿を見ることでも始まります、そしてそこから恋文となる懸想文を送ります…その恋文も直接渡すのではなく、文使いという従者に持って行ってもらっていたのです」
まずは恋の始まりから話す
「結婚するとなるなら、一緒に夜を過ごした後に後朝の文という朝の後に送る文を渡さなければなりません、それを三回繰り返すと三日夜の餅というものを食べます…これをもって結婚が成立します、だからこの文を忘れるとすごく怒られるのです」
未来で整理された知識を使って端的に話す
ここでこの時代と現代で違うところになるであろうことを質問する
「二人とも、結婚するとなったら男の人が女の人の家に行く?女の人が男の人の家に行く?」
「女の人が行くんじゃないんですか?」
智彼が言う
すると娘の方は驚く
「そう、僕らの時代なら女の人が男の人の家に行くけど、この時代の人は男の人が女の人の家に行くんだ…それこそ女の人はそんな頻繁に出て顔和さらすわけにはいかないからね」
お互いがお互いの結婚観の違いに驚く
「それこそ当時は女の人は男の人とか名前に隠れないといけないほど裏にいたからね」
古文常識の授業をしていればあっという間に夜は更けてしまった




