第13話
智彼も慣れない言葉に少しずつ慣れて、多少の会話は継続できるようになった頃、家の周りが騒がしくなる
「どうしたんですか?」
「ここの近くに別荘を持っている貴族の方が来るらしいんだ、君たちは会いに行った方がいいんじゃないか?」
「いいんですか?」
「もちろんだよ、君たちのおかげで畑仕事は早く終わったし、貴族の生活もよく知っているんだろ?」
「ありがとうございます」
昼頃になると、近くの少し広めの道に牛車が現れる
「すみません、ちょっとお話ししてもよろしいですか?」
「何者だ!」
おそらく随身であろうものに止められる
見た目はこの時代に即したものになったとはいえ、わざわざ貴族に話しかける男女などまともではない
「私たちは未来から来たものです、未来の話をする代わりに貴族様のお話を聞いてみたいのですが…」
「なんだと!そんなこと信じられるか!」
相手の表情が険しくなる
「まぁ待ちなさい」
中から声がする
「中納言様…」
随身があきれる
「一つ和歌を詠っていただけるかな」
この時代は家で聞いたところ、まだ西暦千年前後のようだ
「では、“わが恋は虚しき空に満ちぬらし思ひやれども行くかたもなし”」
和樹はまだ編纂されていないはずの新古今和歌集の和歌を言う
「…なるほど、教養はあるようだね」
この時代の文化は貴族の文化であるのだから平民が和歌についての教養があるはずがない
「ただ者ではないようだ、いいでしょう、あと少しでつきますからついて行きなさい」
中にいた貴族に別荘に行くことを認められる
確かに30分ほどで大きな建物に到着した
しばらく建物の外で待っていると
先ほどの随身に建物の中に入れられる
「ようこそ私の屋敷に、さて私にいろいろなことを教えてくれるのだろう?」
一室には先ほど話した貴族が御簾という簾越しに話しかけてくる
「もちろんです…中納言様」
この時代は本名よりも階級名で呼ぶことが多い
先ほど聞いた階級をそのまま言う
「そなたたちがいた未来というのはどのような様子か」
「星は消え、秋はなくなってしまいました」
当時の人々が美しいと思っていたことを中心に答える
「そうかそうか…」
中納言が少し黙る
「そちらの者は?」
智彼のことを聞いてくる
どうやら距離が離れているのが気になるようだ
こちらについてくるときも、男の人に近づけないため、僕らの三歩後ろを歩いていた
「これは私の教え子です、この時代のことはまだあまり知らないものですから大目に見ていただけるとありがたいです」
「なるほど、君のように当意即妙のできる人ではないということだな」
当意即妙、気の利いたことをすぐに言えることだ
「まぁ、構わない、ではしばらくはここに泊まっていってくれ…まだ知りたいことがたくさんある」
中納言は応接間からいなくなる
二人は同じ部屋に連れて行かれて、まだ何も話さずに夜を明かす




