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王太子から冷遇され、婚約破棄をしたら記憶を失い、君の記憶に彼は存在するのだろうか?  作者: 猫又 マロ
最終章

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鐘の音色

華やかな、夜会を楽しむマリエットとロキシー。そんな中、鐘の根が響き渡ると一瞬にして闇が広がるのだった。


卒業式を無事に終えた翌日。

王城では、卒業生たちを祝う大規模な夜会が開かれる予定となっていた。


「今朝はあんなに晴れていたのに…」


屋敷の窓辺に立つマリエットは、不安そうに空を見上げた。

昼を過ぎた頃から、空は急速に色を失っていった。青空は厚い灰色の雲に覆われ、まるで夜が早く訪れたかのように。その夜から空を裂くような稲光が幾度も走り、音が遠くから響きわたっていた。窓を打つ雨音や雨粒は激しさを増し、風は邸の窓を揺らすほど強く吹き 荒れていた。言いようのない不吉な胸騒ぎに、マリエットはなかなか眠ることができなかった。


♢♢♢


間に包まれた城の一室に、手にした赤ワインが入ったグラスを口につけ、フィオーレが飲み干した。 空になったグラスを指先から離す。 甲高い音と共に床へ落ちたグラスは、無数の欠片となって散った。 それでも彼女は気にも留めない。 窓の外は荒れ狂う嵐を見つめると、その唇をゆがめた。


「ふふふっ……」


フィオーレの笑い声だけが、間の中へと溶けていくのだった。


♢♢♢


翌朝になっても嵐は収まらなかった。

厚く重たい雲は空を覆いつくし、誰かを待ち構えているように動かない。

支度を終えたマリエットは、鏡の前で小さく息を吐いた。


その時、コンコンと部屋の扉が叩かれる。侍女が扉を開くと、そこには正装の騎士服に身を包んだロキシーが立っていた。

部屋の中に通されると、ロキシーがマリエットの前で胸に手を当て、優雅に一礼する。


「今宵、貴女の騎士(ナイト)として全力で、私がお守りいたします」


その言葉に、マリエットは思わず微笑んだ。ロキシーが視線をあげると彼女が身にまとっているのは、深い海の色を思わせる青と淡い水色の布が幾重にも重なったシルクのドレス。歩くたびに裾が揺れ、海の波のような輝きを放っていた。思わずロキシーは見入ってしまう。


「ロキシー?変かしら??」


自分の姿を確認していると、ロキシーが慌てて首を振った。


「いや…マリーはいつも、綺麗なんだけど、今夜の君の姿に…その、見惚れてしまっただけなんだ」


視線を横にして頬を指でかいてるロキシーの顔が耳まで真っ赤になっているのを、見たマリエットの頬も淡く染まる。呼びに来た後輩騎士が二人の姿を交互に見つめると、わざとらしく数回咳払いをして見せた。


「ロキシー様、馬車の準備が整いました」


「ああ…。すまない」


気まずそうに顔を見合わせた二人は、そろって視線を下げると、ロキシーがソッとマリエットに手を差し出す。


「マリー、行こうか」

「ええ」


マリエットは、ロキシーの手を取り、馬車へと向かった。 玄関先では両親が揃って、マリエットの美しいドレス姿に、頬を緩ませみていた。


「お母様、お父様、行ってまいります」


「ああ。楽しんできなさい」

「マリエット、あまりはしゃぎ過ぎないようにね」


短い別れを終え、馬車へと乗り込む。 ロキシーが左手で御者が座っている窓を軽く。鞭の音が聞こえ、馬のいななきが聞こえた。 そして馬車は王城へ向けて、ゆっくりと走り出した。


♢♢♢


「マリエット・キーズ・フラン嬢、ご入場!」


パドラーの声が高らかに響く。目の前の巨大な扉がギギっと音を立て開いた。 ロキシーの腕に手を添えたマリエントは、一歩ずつ会場へ 足を踏み入れる。 その瞬間、会場中から感嘆の声が上がった。 あまりの視線の多さに、マリエツトは思わず俯いてしまう。


「マリーが、一番に綺麗だからだよ」


耳元で、囁くような言葉に、マリエットの胸が熱くなる。 二人は王族の席へ向かい、レオハート国王陛下、王妃様に、拝礼し恭しく礼をした。


「レオハート国王陛下、王妃様。本日の夜会ご招待いただきありがとうございます」


「面を上げよ」


レオハート国王陛下の穏やかな声が響く。顔を上げたマリエットの方ヘ陛下が静かに歩み寄った。


「妹君が、未だに行方知れずとなり、その心痛は計り知れぬだろう…」


陛下の優しい眼差しが、マリエットに向けられる。


「総力を挙げて捜索している。案ずることはない」


「レオハート国王陛下の、フラン家を代表し、ご配慮感謝申し上げます。」


♢♢♢


その後、レオハート国王陛下の挨拶が終わり夜会は華やかに始まった。音楽が流れ、人々は語らい、笑い合う。

大規模な夜会は、穏やかに過ぎていくように思われた。


「フラン嬢」


ロキシーがマリエットの目の前に立つと、スっと片膝をつく。 そして、胸に手を置いて、右手を差し伸べた。


「私と一曲、お相手を願えますか?」


「よろこんで──」


照れながらも、ロキシーの手を取ると、 二人はワルツを踊り始めた。


─その時だった。

ゴーン…ゴーン… 王城に深夜、零時を告げるこが鳴り響く。 同時に、会場中の蝋燭の火が一斉に消えた。光は失われ、深い間が広がる。 ざわめきと悲鳴が交わり会場内がパニックが起こる中、重厚な扉がゆっくりと開いた。 静かな足音。 ひとつ。 またひとつ。 やがて小さな炎が灯る。 その淡い光の中に立っていたのは─。


「ご機嫌よう、皆様。私だけご招待されてなく寂しゅうございましたわ。レオハート国王陛下…」


行方不明となっていた、フィオーレの姿だった。黒と紫で彩られた妖艶なドレス。血のように赤い瞳が月光を浴び、まるで夜そのものが人の形を得たかのようだった。


♢♢♢


「全員、避難を!!」


ロキシーの鋭い声が会場へ響くが、揺れる光の中で、フィオーレがくすりと笑う。


「開かない!」


「どうなってるんだ!」


「開けて!」


扉はぴくりとも動かなかった。その光景を見た生徒たちの悲鳴が広がる。 恐怖が一気に会場を包み込んだ。 フィオーレは両腕をゆっくりと広げた。


「さあ、皆様」


赤い瞳が妖しく細められる。


「これより、闇の舞踏会を始めましょう」


足元の影がゆらりと揺れた。その中から次々と男たちが姿を現す。黒い騎士服を纏った闇の騎士たちが何体も現れると、会場内に居る生徒たちや、王族へ向ける冷たい視線。殺気をまとった者たちが、生徒や王族に向かって歩き出す。会場は恐怖に染まった。そんな光景を見渡しながら、フィオーレは満足そうに微笑むと唇がゆっくりと開く。


「さぁ、皆様の美しい断末魔(メロディー)を、どうぞ聞かせてくださいな」


両手を広げたまま、高い声で笑うフィオーレの声ともに、最後の戦が始まろうとしていた。


こんばんは( ॑꒳ ॑ )ノ⋆⟡.·最終話に差し掛かりましたが、まだもう少し小説として書きたいこともあるので、もう少し続きますが、高評価、ブックマーク登録、スタンプ評価よろしくお願いいたします。作者の力となりますので皆様の応援お待ちしております!

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