第八十四話 旦那様はとてもやります
子供達の姿を確認すると自然と言葉が出てきます。ずっと、ずっと、ずっと貴方達に会いたかったんです。
「入ってきていいよ………わっ!?」
子供達が飛び付いてきました。特にお嬢様の力が強いです。
「お姉ちゃん……大丈夫だった?」
「はい」
久しぶりのお嬢様との邂逅に泣いてしまいそうになります。マージュちゃんとリッシュ君は表情にはあまり出さないようにしてますが、心配をかけてしまいました。
私も思いきり抱きしめます。
「あのね。お姉ちゃんと師匠が居なくなって……ずっと心配だったよ」
「お前の体感では大して時は経っていないだろう」
「旦那様っ!!」
旦那様はリテラシーはあってもデリカシーに欠けています。それに私と旦那様からすれば久しぶりなのですよ。
「旦那様もこの子達に」
「スエレ、この様を見てみろ」
ゆっくりと手を伸ばしてマージュちゃんに触れようとします。旦那様が珍しく頭を撫でてあげようとしてるので少し嬉しく思いました。
「……っ!」
マージュちゃんがものすごい速度で手を払いのけました。
「そして」
今度はリッシュ君に触れようとすると同じく振り払われます。
「予定調和だ」
「……あ、はい」
「師匠、わたしは?」
一方でお嬢様は甘えた声を出します。可愛いです。
「……これでいいのか?」
「うんっ!」
頭を撫でられて嬉しそうです。なんだかんだで旦那様はお嬢様に甘いのです。
「旦那様、折角ですので私にも」
「折角とは?」
そこは疑問を口にせずに寸分入れずに撫でて欲しいです。いえ、撫でてください。
「……そろそろ良いか」
公爵様が少し呆れ気味になっています。
「すみません。撫でてもらうのは後で……ではなく。この子達はお邪魔でしょうか?」
「そいつらはお前を待っていたからな。連れて行って今日は休め」
「おう、じゃあまた」
何故かノルカさんが元気よく答えます。
「お前はそもそも何しにきたんだ……居ても意味が無いから構わん。話も殆ど済んだ」
「じゃあの」
「ノルカ、リロードに会ったら」
「分かってるでござる」
……疑う訳ではありませんがノルカさん、きちんと内容を理解していますか。旦那様の反応が理解していないと認識されてます。
「母さんごめん。私行ってくる」
「マージュちゃん?」
旦那様の言葉から内容を理解したマージュちゃんが私から身体を離します。
「師匠の所に行くのでしょう。私も行くわ」
旦那様に言います。マージュちゃんの魔術の師匠は確か……旦那様の師匠でもあるトーナルさんです。旦那様の伯母様でマージュちゃんから見ると大伯母様ですね。
「公爵」
「分かっているさ。貴様の話から大筋は理解できた。ならば今日は解散だな」
旦那様に公爵様が告げます。細かい所を旦那様と調整するつもりだったのかもしれませんが、優先する事を判断されたのです。
「時間はあまり無いだろうが各自最善を尽くせ、出来る限り協力はしよう」
「分かった。頼りにするでござる」
「お前が答えるのか……」
良くも悪くも元気良く答えるのがノルカさんです。
部屋から退出すると旦那様とマージュちゃんと一旦お別れになります。
「では旦那様、マージュちゃんをお願いします」
「されたくないわ」
「マージュちゃん」
普段はとても良い子なのですが、旦那様に対してだけ態度がよろしくありません。
「明日には戻る。もしリロードに会ったら動かないように伝えて欲しい」
「あれ? 兄者、さっき拙者に」
「お前理解していなかっただろう」
リロ君に会ったら動かないように伝えておく。了承しました。
「……」
「どうした?」
名残惜しさがありました。また、察して欲しいと我儘な事を思っていました。
「こういう時は愛しているの一言を」
「愛している」
「!!?」
そうでした旦那様は言葉を躊躇わないのでした。
くっ……とてもやりますね。
いつも最後まで読んでくださりありがとうございます。
次回の再来週の水曜日の18時〜20時の更新になります。
また、不定期に過去の話の修正と加筆を行う予定です。
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