第七十九話 甘い公女と幼い魔女
※三人称視点です。
スエレ達が去った後、残ったレティシア、アイリッシュ、ノルカは茶を楽しんでいた。仔犬のキューブもアイリッシュの足元でのんびりと休んでいる。
ゆったりとした空気が流れていたが、そこにフロマージュがやって来る。
「母さんは?」
「あ、マージュちゃん!?」
「母さんなら準備に戻ったよ」
溜め息を吐くがレティシアの隣に座るフロマージュだ。駆け足で来たからか少しだけ息が上がっていた。普段はあまり激しく動かないのだが急いできた理由があった。
「祖母もいた?」
「「いたよ(でござる)」」
今はいないと言われて安堵する。
「でも兄者と臨戦状態だったよ。レティちゃんが止めてくれたけど」
「……あぁ、納得」
空いているティーカップに紅茶を淹れて飲む。普段から飲み慣れているから自分で淹れたのは大して美味くないと感じた。
「結局、モポ姐のお陰なのね。あんたは何していたのよ?」
フロマージュは呆れる。年上であるがノルカの事を出来の悪い妹、或いはペットのような生物だった。
だが高い戦闘能力とスエレへの忠誠心だけは信頼に値していた。
「なんか頑張ってた気がする」
「そう……リッシュ、祖父がいたのに気づいた? ……それとその茶色いのは?」
キューブの存在に気づいた。ただフロマージュは猫派である。ついでに色は白が好きである。
「母さんが飼うことになった犬で名前はキューブ、爺さんがいたのは知らない。でも母さんが婆さんが来たと知った時に夫婦で来たのかみたいなこと言ってたから来てたんじゃないかと思ってた」
「そう。その犬は祖父が連れてきて母さんに押し付けたんだと思うわ。迷惑な話ね」
再び呆れるフロマージュ、それを見てレティシアがニコリと笑う。
「次は会えるよ」
「べ、別に会いたかったわけじゃないわよ。ただ文句を言いたかっただけ」
「ふむふむ、おフロちゃんは素直じゃないでござるなぁ」
「何がよ!? それからおフロちゃんって言うなぁ!!」
騒ぐ事でキューブがびくりと起き上がる。フロマージュを怖い存在と密かに認定した。
「キューブが怖がってるよ」
「マージュちゃんは怒りっぽいのが玉に瑕でござる。兄者とママのお子なのにそこら辺は似てないでござるな」
「うっさい!!」
吠えるように叫ぶ。この場で唯一慣れていないキューブは更にフロマージュを怖がった。
「よしよし怖かったね。でも母さんは怒ると怖いよ。あとあれはなんか違う」
「確かにママは怒ると怖いでござる。そんで兄者は辺に寛容な癖に妙に狭量なところがある気がする」
付き合いがそこそこ長いがノルカにとって未だに理解が遠い存在、恐らく将来においても理解出来ないと判断していた。
「まあでもママに対してだけは誠意あるからギリ許容できる感じでござる」
「んー? 師匠は私にも誠実だと思うよ」
「モポ姐は甘いわ」
他者の悪いところよりも良いところを見る傾向にある事は美点であるが同時に愚か者でもある。レティシアの場合は立場もありあまり褒められはしない。
「駄目かな?」
「……そんな目で見ないで」
純真な瞳に弱かった。でもそんな彼女の事を誰よりも尊敬している。
レティシアは公女であるのに純真過ぎ善性が強い。
だから幼い魔女は心の中で誓う。
光であるレティシアを影として支えていこう。
まだフロマージュは気づいていない。それは己の父と同じ道を進もうとしていることに……
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