第七十一話 侍女としてではなく……
おかえりなさい。実は私が好きな言葉の一つです。
大切な人との再会の言葉だからです。
旦那様の表情は変わらないと他の方は仰るかもしれませんが表情が少し緩んでいるのですっ!
「ちっ! ……これから公爵に報告するのね?」
舌打ちしつつも自分を納得させて矛を納めています。多分、エルシア様も旦那様の表情変化に気づいたからだと思います。
「そのつもりだ……浅いな」
「っ!?」
リッシュちゃんが背丈よりも大きい剣で旦那様に斬りかかっていました。
「り、リッシュちゃん!?」
「魔力を込めるのは結構だが集中しすぎて足の動きと剣を振り下ろす腕の速度が落ちている。また、奇襲している点を踏まえても威力が低い。これでは簡単に防げる」
旦那様の右腕で大剣を止めていました。それから攻撃されたことを怒るのではなく奇襲が甘い事を指摘していました。
「今度奇襲するなら魔術を併用した方がいい。お前なら光属性が良いだろう。私は光属性が効きやすいからな」
指摘する内容がおかしくありませんか?
「リッシュちゃん、お父さんを攻撃してはいけませんよ」
「父親?」
「父親か」
なんで二人とも嫌そうに言うんですか!? ある意味で似ているなぁって思いましたよ!?
「関係性は相変わらずね。フロマージュは参加しなかったけど良かったの?」
「母さんが嫌がるから」
エルシア様の問いかけにマージュちゃんが答えます。マージュちゃんが言うように私としては嫌ですね。
「ま、そうね。個人的な感情よりも周囲を大切にしようとしたのは美徳ね。これからも励むといいわ」
「……」
無言ではありますがマージュちゃんは肯定してるようです。エルシア様の言葉には納得するのはエルシア様のカリスマ性が成せるのかもしれません。
「お前と公爵家の面汚しの為に夜会を開くから必ず参加するように、妹がお祝いを用意しているから」
旦那様とテアトル大将のことを指していますが、公爵家の面汚しは流石に酷い言い方だと思います。ただ言われているテアトル大将は気にしていません。
気にかけていたのは妹……つまりレティシアお嬢様がお祝いを用意していることです。
にこりとお嬢様が笑いかけてお二人を見つめたことで夜会に主賓が参加する事が決定しました。
何故なら旦那様もテアトル大将もレティシアお嬢様を大切になさっているので不参加はあり得ないことだからです。
お嬢様も普段なら旦那様に飛びかかる勢いで迫って行きますが、淑女らしく挨拶するに留めていました。
「レティシア、俺も手伝おう。人手は多い方がいいだろう。……報告は任せた」
「分かった。レティシアまた後で」
「うん。またねー」
大きく手を振るお嬢様、公女の行動としてはしたないと言う方もいるかもしれませんが私としてはお嬢様が元気で楽しそうであれば問題ありません。
「スエレ、悪いけれどこの馬鹿が迷子にならないように公爵のところまで連れていってあげて、それから終わったら私の部屋に来て頂戴」
「あ、はい。お任せください。終わったら部屋に参ります」
「私はモポ姐の手助けするから、リッシュ行くよ」
マージュちゃんはリッシュちゃんを連れてお嬢様に着いて行きました。みんなでノルカさんが運んでくれたお米を研いで炊くのでしょう。
「変わりはあったか?」
「えーと、そうですね。お嬢様はお元気ですしマージュちゃんとリッシュちゃんも普段通りだったので変わりは……リッシュちゃんの背が少し伸びましたよ」
少し前まで僅かにマージュちゃんより背が低かったのですが今は同じ背丈になりました。これからもどんどん伸びていくと思います。いずれは旦那様と同じかそれよりも大きくなるような気がします。その前に私の背を越えてきますね。今から少し楽しみです。
「……それなら良い」
「何か不穏な事があったのですか?」
旦那様の確認が近況を知りたいだけではないと認識しました。恐らく何か嫌な動きがあったのかもしれません。
「皇族の動きが怪しい。追放した先代皇太子派の残党かと思ったが、第四皇子の動きが活発化していた」
第四皇子……以前、話しかけられた事がある皇族の方ですね。少し無理矢理迫られましたが旦那様に助けて貰いました。あの時の旦那様は格好良……
「そ、そうですか。また帝都に行く時は気をつけないといけませんね」
「……帝都に近いうちに行く事になる。私とお前がディエレーズから呼び出しを受けた」
「元帥からですか? 旦那様だけでなく私も?」
旦那様の直属の上司であるから旦那様が呼ばれるのは分かりますが私もなのは不思議でした。
「何かお祝いを戴けるとか?」
「アレがどんな理由で何を渡してくると思っている」
「んー、結婚何周年のお祝い品とかでしょうか」
「あり得ないな」
断じる旦那様です。ですが元帥と私は面識が殆どないので呼ばれる理由が本当に分かりません。
「ディエレーズの動きに連動して不穏な動きをする皇族がいる状況での呼び出しだ。怪しさしかない」
「うーん。お断りはできます?」
「できるならしている。不可能だから警戒に越したことはないな」
相当に旦那様は困っていました。これも私を心配してのことなので少しだけ嬉しく思ってしまいます。
「着いたな。お前はエルシアの部屋に行け、恐らく……まあ、面倒なことだ」
「あの、含みがあるのはなんですか?」
気になるのですが行けば分かるとの事でエルシア様の部屋に向かいます。
「あら、早かったわね。ふふ、さてスエレ戦準備をしましょう」
楽しそうに笑うエルシア様……あ、これは大変な事になります。
「貴女用のドレスを沢山用意したわ」
どうやら今夜のパーティーきは私は侍女として参加するようではないです。
いつも最後まで読んでくださりありがとうございます。
次回は再来週こ水曜日の18時〜20時の更新になります。
また、不定期に過去の話の修正と加筆を行う予定です。
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