魔人 ①
「土の精霊の声が消えて行く・・・。」
マリウスは、まるで痛みを受けているかの様に顔をしかめた。
俺には精霊の声は聞こえないが、目の前にいるポレーから感じる悪意と殺意は全身にビリビリと感じられる。
俺は顔を動かさずにチラリと周りを見る。
「マリウス。ラーリ上官とアーデ達の護りを固めろ。クリアとリリは援護だ。」
「任せて。」
マリウスが答え、クリアとリリが頷く。
「さぁて、相手は大魔導士だ。しかも、相当キレちまってる。不安定な今しかない。一気に行くぞ!グリム!俺に合わせろ!」
「りょーかい!」
返事を合図に、俺とグリムは一気にスピードに上げ間合いを詰める。
「だぁぁらぁぁぁ!」
ポレーの眼前。
俺は、体を右に大きく捻り、左足を思い切り踏み込む。
「せぇぇぇぇい!」
全身の筋肉が張る。
走るスピードを大剣に乗せ、水平にポレーの胴体へ向けて振り―。
「ぐっ!なにぃぃ!」
抜けられなかった。
大剣は、いつの間にかポレーの周りを覆う泥の壁に阻まれる。
力もスピードもその壁に飲み込まれてしまった。
「くっそ!」
俺は一旦バックステップで離れる。
同時に、俺の横をすり抜け、グリムがワンステップでポレーの左横へ並ぶと、勢いを回転に変え、ナイフをポレーの眉間へ突き立てる。
「ダメ!届かない!」
グリムはそう言いながら左側へすり抜け、手を床に付け急停止する。
言うとおりナイフはポレーの眉間スレスレで、またもや泥の壁に阻まれている。
攻撃が通らない。
泥の壁が邪魔だ。
だからと言っ―。
「てぇぇぇぇい!」
大剣を大きく振りかぶり、ポレー目掛け力いっぱい振り下ろす。
だが、やはり泥の壁にめり込み、力を殺されてしまった。
「だったら!」
左手のみで大剣を泥の壁から引き抜く。
剣先が床を擦り火花を散らし、勢いでちぎれそうになる左手を筋肉で引き戻す。
そのままえぐり込むように大剣を振り上げた。
ザシュ!
「だりゃああ!」
大剣が泥の壁を切り裂く。
「っしゃあ!」
だが、ポレーには届かない。
そこで、いつの間にか空中へ飛び上がっていたグリムが、弓を構える。
「そぉ~りゃりゃりゃぁ!」
3本の矢を連続で放つ。
一本目の矢は、すぐに泥の壁に阻まれる。
だが、例のごとく矢先に付いた爆薬が、当たった瞬間に泥の壁ごと弾けた。
その中を突っ切り、2本目の矢がポレーの眼前に迫る。
「いっけぇぇ!」
思わず俺は叫ぶ。
しかし、ギリギリで2本目の矢が止まる。
「くっそ!」
俺が肩を落とすより早く、3本目の矢が2本目の矢をピンポイントで押し込んだ。
「ぎゃああああ!」
ポレーの左目に深々と刺さる。
「この小娘がァァァ!ガァァァァァ!」
痛みに勝る怒りでポレーは歯を剥き吼える。
空気が震え、床が歪んだかと思うと、泥の槍が床からニョキニョキ生えてきた。
これは、ヤバイ。
「グリム!避けろ!」
言い終わる前に、俺とグリムへ向け、泥の槍が降り注ぐ。
「くぅ!」
大剣を振り回し、泥の槍を弾き飛ばす。
なんとかしのぎ切ったが、いくつか体を掠った様で血が流れ落ちる。
「大丈夫?」
いつの間にか俺の横にグリムが居て傷をつつく。
「った!やめろ!」
グリムは掠り傷すらない。
こいつならあのくらい目を瞑っても避けられるか。
アーデ達もマリウスの風の壁で無傷のようだ。
しかも、マリウスはアーデ達を守りながら、本を読んでいる。
本・・・どっから出した!
余裕かよ!この魔法バカが!
「ったく・・・グリム!連撃で押し切る!」
「りょ~・・・っかい!」
読んでいただき有難うございます。
次回、ついに戦いの火蓋は切って落とされた!勝敗の行方は・・・。
次話も読んでいただけたら幸いです。




