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11話 就活は情報集めから

10話に寝ている二人への治療の描写を追加しました。

「え~っと、その・・・・・四職ギルドってのは・・・・・?」

「ああ、うん、やっぱり其の辺からわかってない訳だね。」

シングはため息をつきながらも説明してくれた。


四職ギルドとは 傭兵、狩人、探索者、魔法使いという四つの職業のギルドで

大雑把に言うと仕事の斡旋を中心とした組合みたいなものらしい。

護衛や警備、魔物討伐といった仕事が中心の傭兵、肉や毛皮といった素材を狩るのが主体の狩人

薬草の採取、鉱脈の調査、果ては迷宮などから遺物を持ち帰るのが仕事の探索者。

そして傭兵、狩人、探索者のいずれとも関わることの多い魔法使い、

その四職はお互いに仕事が関係することが多く、初期にはそれぞれのギルドが個別に

活動していたらしいが、いつの間にか四職を纏めてひとつのギルドとして成立していたらしい。


え~、そこは冒険者ギルドとかいうのがお約束なんじゃないんすか?

と言う心の中のつぶやきはキッチリカッチリしまっておいた。

ソレを言ったらスッゲェ低い位置から見下ろされる視線で

 「冒険者ねぇ・・・・・・・。」ニヤニヤされながら言われる気がしたから。


「これがあたしのギルド証、これがあれば入街税が免除されたり

 身分証として使えたりするんだけどね、本来なら・・・・・・だけど。」

「本来ならって事は、今は使えない訳か。」


ドッグタグみたいに首に下げていたカード状の金属片をシングは投げてよこした。

結構、重い。鉄製か? 表面には何やら文字と数字らしきもの、

それに盾と剣、杖のマークみたいなものが彫り込まれている。


「あたしは傭兵で盾と剣、魔法使いで杖って事さ。」

「つまり、・・・・・・あれか、狩人って言うにはこいつに・・・・・。」

「そう、弓の意匠がなきゃモグリっていうことになる。まぁ、そこいらの小さな村くらいなら

 いちいち確認しないかもしれないし、そもそも自分の住んでる村の周りでなら

 ギルドに入ってなくても狩りをするのは問題にならないんだけど・・・・・・・。」

「余所者が狩人を自称するには少しばかり問題になる、と。」

「ギルド証がないのはその分の税を払ってないってことだから村の人間からも

 良くは思われない、というかバレたら袋叩きにされるかもね。」


うーむ、まいったなぁ、商人も狩人も無理っぽいとなると何者なんだって聞かれた時に

答えようがない、まさか現状無職で道に迷ってますとは本当の事でも怪しすぎるしなぁ。


「ま、狩人なんて言うよりもあんたなら亡命貴族、いや 世間知らずの学者さんとかの方が

 それらしく見えるんじゃないかねぇ。」

「世間知らずの学者かぁ、じゃあシングは雇われの護衛とか?」

「いい線じゃないかい? なんでこんな辺境にってのはあるけども

 旅の途中に街道で盗賊か魔物にでも襲われて逃げてるうちに迷っちまった、とかね。」

「ペンタもいるし最初から護衛というよりは、盗賊から一緒に逃げてるうちに

 護衛を頼んだとかの方がそれらしいな。」

流石に子連れの女性が一人で護衛ってのはないだろうし。

「ふむ・・・・・、それで手荷物もなしでも不審には思われないか・・・・・な?」

「じゃあ、俺は世間知らずの学者、旅の途中の街道で盗賊に襲われて

 逃げてるうちに道に迷った。偶然シングに助けられて護衛を頼んで街に向かう途中。」

「いいんじゃないかい、あたしは巡礼修行中の神官て事でいいだろ、半分は本当だしね。」

「半分ねぇ、・・・・・・そろそろそっちの事情も聞かせて貰っといた方が良いのかな?」

「・・・・・・事情か・・・・・、そうだね、ある程度の事は話しておいた方がいいんだろうね。」


ガリガリと頭をかいて、ため息をつくと困った様に苦笑いして

ペンタを膝の上に乗せて抱いて撫でながら話しだした。

「あたしは・・・・・王都で神官戦士をやっててね、まぁ傭兵が生業だったんだけどこの子が出来てね、

 しばらく働けなくなって。そん時に旦那が無理しちまってねぇ。」

「無理な仕事を受けて死んじまって、おまけにその仕事がギルドを通してない商人からの依頼でさ。」

「前払い金があったせいで違約金も法外な額でさ、はっきり言えば騙されたんだと思うけど

 あとで言ってもどうにもなりゃしない、借金奴隷にされる処を相手を殴り倒して逃げたのよ。」

「旦那の借金であんたが奴隷にまでされるのか、きっついなぁ。」

「家族のした事の責任は基本的には家族が負う事になるよ、どの国でもね。」

連座制にしたってきびしすぎないか、それは。まぁそういう文化なんだろうけど。

「はぁ~、その事で追われてる訳か?」

「逃げる時に殴り倒したからねぇ、犯罪者として手配されてるだろうし、

 賞金もたいした額じゃないけどかけられてるらしいね。」

「それでまぁ、王都から辺境に流れてきたんだけど、

 街に入るのにはギルド証見せなきゃ入街税をはらわないといけないし、

 正式なチェックをされると手配されてるのがバレてそこで捕まっちまうから

 街の外壁のスラムで治療術師の真似事しながら

 頭を低くしてしばらくやり過ごすつもりだったのがなかなか上手くいかなくてね。」

「追っ手に見つかっちゃったのか?」

「いや、密告されて賞金目当てのゴロツキに追っかけられちまって逃げ出すはめになったのさ。」

「低位の治療魔法でも商売敵がうっとおしかったんだろうね、

 安い薬を売ってる連中に目をつけられてたみたいで、もう少し目立たないようにしてれば・・・・・。」


なるほどねぇ、目をつけられない様に稼いでたら密告はなかったかもしれないけど

ペンタに今以上に食わせられていない事になってたんだろうな。


「それで、村や街に行って追っ手とかは平気なのか?」

「小さな村までには手配書は来ていないはずだし、ギルド証を見るだけなら犯罪者とは解らないよ。」


最初にステータスを「見た」時に気になってた赤字表記の[逃亡者]ってのはそのせいか。


「街の方は、・・・・・安全に行くなら入街税を払って入ればギルド証の確認はないから・・・・・

 ・・・・・・タダはいくらかは金は持ってるのかい? ないのなら

 街に行くまでに村で金を作るか、あたしが貸すしかないわね。」

「入街税を払えば俺もチェックされずに入れるわけ?」

「ああ、1鉄貨のはずだよ、それでタダは王国の金持ってるのかい?」

「いや、それなりに価値のあるものはあるかもしらんがここの国の貨幣は持ってない。」

「まぁ、そうだろうね、あたしも持ってるのはとっておきの大鉄貨一枚と鉄貨が六枚ぽっち、

 街に入って二日もすればなくなるね。」

「街に入れれば手持ちの素材を売るなりして、借りた入街税と当座の金は作れるか・・・・・。」

「そうだね、あとは街でギルドに登録すれは仕事を受けられるし

 タダなら金を作るのはそんなに難しくはないと思うよ、あの魔法の腕ならね。」


どうやら 睡眠(スリープ) I とか 蘇生(リザレクション)系の魔法を見たせいでか

相当に高LVの魔法使いだと思われてるみたいだな、其の辺も聞いておかないと

不用意に普通は使えないような魔法を使っちまいそうで怖いなぁ。


「シングは神官戦士? なんだよな普通にシングや魔法使いが使ってもおかしくないってか

 不自然に見えない魔法ってどんなもんなの?」

「そうねぇ、あたしが使えるのは[治癒(ヒーリング)I・II] [再生(リジェネーション)]

 あとは軽い解毒、綻び、力の加護、魔の加護 って所かね、あんた・・・・タダは魔法使い

 なんだよね?」

「あ~、まぁそんなもんだと思ってくれて間違いでは、ない。」

「・・・・・・・・あんな睡眠魔法とか蘇生に高位治癒、聞いたこともないとは言わないけど

 ほとんど、おとぎ話みたいなもんだと思うよ、簡単に人に見せていいもんじゃないね」

「やっぱり、そうなのか・・・・・ そうするとどう誤魔化すか、いや、そもそも使わないのが一番か。」

「ギルドに登録したばかりの初心者っていうんなら、治療系はあたしと同程度、

 魔法使いなら属性にもよるけどI・II系くらいまでじゃないかい?」

「I系とか、よくわからんのだが・・・・・?」

「単純に威力の大きさによる区別って事だけど。」

ふ~む、小火球がI系、中火球がII系って感じなのかな、そこくらいまでは使用してもおかしくないと。

あとは、アレだな このあとの移動でも使いたいし・・・・・・・・。


「職種というか技能なのか、どう言えばいいのかよくわからんのだけど

 獣を使役したりするのは普通なのか?」

「魔獣使い(テイマー)の事を言ってるんなら、そんなに多いって訳じゃあないけど

 それなりに、特に魔獣の多い辺境なら珍しいもんでもないね。」

ふむふむ、それなら見た目であんまりなのでなければ誤魔化せるかなぁ。


「これから俺がやる事は秘密にしといてくれよな、詳しい事も聞かないって事でよろしく。」

「へっ? これからやるって・・・・・・・?」


マクロを起動して狼妃召喚を発動すると、魔法陣が地面に自動的に描かれ

数秒後には黒いエフェクトに包まれて体長2メートルちょっとの

ふさふさシッポの青白い様な紫の狼が顕現した。


「ワォンッ♪」

お~、よしよしと顎下を撫でてやると目を細めてグルルルルルッと機嫌良さそうにしている。

ん? シング達が固まってる、召喚魔法は初見だと驚くか、やっぱり。


「あ~、シング? こいつは俺の言う事聞くから怖がらなくても大丈夫だぞ。」

後ろに手をついてカクカク震えてるシング、ペンタを背にして狼妃から庇う様にしているのは

流石に母親であるなぁ、感心感心。


「い、色々と聞きたい事はあるけど、そ、その魔獣は危険じゃないのね?」

「ああ、敵対しない限りこいつから手を出すことはないよ。」

片手棍に手を伸ばしかけたシングは慌てて両手を開いて武器を持っていない事をアピールしながら

「こ、腰が抜けたわよ、なによこれ、魔獣を呼び出したの? まさか召喚魔法?」

「魔獣じゃなくて神獣なんだけどね~。狼妃(ろうき)って呼んでやって。

 召喚魔法なのはその通り、やっぱり珍しいのかな?」

「珍しい、どころか失伝してて使い手なんていないわよ、バレたら魔法ギルドに監禁されるわよっ」

あ~、そういうレベルで見つかると問題ありなのかぁ、使いづらくなるなぁ。


「んじゃ、狼妃(こいつ)は俺がテイムした魔獣って扱いでよろしく~。」

しばらくは出しっぱなしになるけど維持してても魔力は自然回復で問題ないからOKっと。

「ほら、ペンタ怖くないから撫でてやりな、引っ張っちゃ駄目だぞ。」

「ん、んん~、犬しゃん 噛まない?」

「ああっ、ペンタ 危ないからゆっくりにしなさいっ。」

「ああ、平気平気、ほれシングも挨拶しておけよ、これから乗せてもらうんだから。」

「えっ、乗せてもらうって・・・・・・、これ、この・・・・・魔獣に?」

狼妃(ろうき)な、ペンタの足裏とか治してはおいたけど、まだ自力で移動は厳しいだろ?」

「あたしが背負って行くつもりだったけど・・・・・・。」

「それでシングが消耗してもな、怖いんだろうけど慣れれば平気さ。」

「う・・・・・・、わかった、乗せてもらうよ、すまないね、狼妃?」

「ウォンッ♪」

「犬しゃん、おっきいね、ふかふかだねぇ♪」

首筋の長い毛に埋もれるようにして撫でているペンタはもう怖がってはいない様だ。

シングも恐る恐るではあるが背のあたりを撫でている、狼妃も嫌がってはいないみたいで安心した。


出していたもろもろの敷物やら机代わりの台を(アイテムリスト)に片付けて、

「さて、じゃあそろそろ出発するか、村への案内は頼めるんだよな?」

「ああ、大体の位置は聞いて知ってるし、川沿いらしいから迷う事もないと思うよ。」

狼妃にペンタを抱え上げて乗せてやり、シングは自分の武器と盾を背負う。

流石に一人では厳しそうなので狼妃の脇に行き、片膝をつくようにして

「ほら、膝を踏んでいいから足をかけて乗りな。」乗りやすいようにしてやる。

「・・・・・・・すまないね、ありがとう。」

ペンタの後ろで抱え込むようにしてシングが狼妃にまたがり、準備完了である。


「さ~て、ジョギング程度に軽く走って行くか。」

「じょぎんぐ ? 駆け足ってことかい? っとうわっ ペンタしっかり捕まってなよっ」


村の事とかは移動しながら聞けばいいか、幸い 俺の体力はしばらく走るくらいは

全然問題ない感じだしなぁ。


「まずはあっちの、南の森に向かうよ、それでしばらく進んだら森の際に沿って

 東に行くと小さい村があるはずさ。」

「了解、まずは南か。」


タッタカ タッタカ 気持ちいい速度で進む、狼妃も問題なさそうだ。


「しっかしタダは寝てないんだろうに平気なのかい? 

 そういえば前の仕事柄、徹夜に慣れてるとか言ってたけど

 魔法の研究者だったりしたのかね、ああいうのは夜昼関係ないって聞くけどさ。

 それなら世間知らずの学者ってのもまんざら嘘でもないねぇ。」

「・・・・・・・机仕事ってのは同じかもな。」

まさか異世界で成人向けマンガ描いてました、とは言えないし言っても理解出来ないだろーなー。


そうして、三人と一匹は草原を進み、南の方向に見える森へと入っていくのでありました。














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