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10話 おっさんはお針子

日が落ちてだいぶ経つ、まずは落ち着くまでゆっくりと食事をしてもらった方が良いかと

話は後回しにして好きなだけ食うように勧めた。

ガツガツとひたすら食べ物を口に運んでいた二人だが

ようやく落ち着いてきたようで、ミルクを鍋で温めたものを飲みながら

眠そうにしている。

ペンタルディムはすでにお腹いっぱいらしいが

まだ両手にパンを持ったままでコックリ、コックリと半分寝ている状態だ。

「とりあえずは、落ち着いたか? 腹が減ったらまた出すから

 そのくらいにしときな、いきなり食べ過ぎても腹を壊す。」

「う、うん、お腹いっぱいなの、ありがと、おじしゃん。」

「・・・・・・・すまないね、まともな食事が久しぶりだったもんで

 みっともないとこ見せてしまって。」

シングドゥングが恥ずかしそうに言う。

親としちゃ子供に食わせられないのは悔しいんだろう、辛そうな表情だ。


「色々と聞きたいところだけど、まずは体を休めたほうがいいだろうな。

 追われているとは言ってもさっきの話だと

 ここあたりでは心配するのは周りの獣ぐらいでいいんだろう?」

「そうだね、ここらに来れるような腕利きがあたしらを追ってるとは思えないし

 スルーウェの街に近づかなきゃ追っ手の心配はいらないと思う。」

「そうか、・・・・・・なら、まずは俺が火の番をしてるから

 アンタ達はしばらく寝て休みな、そのままじゃ夜が明けても移動出来そうに見えないぞ。」

「それは・・・・・・、確かにそうだね、ペンタの足も限界だし、背負っていくにしても

 すぐには無理か・・・・・。」


 俺はアイテムリストから毛織物と毛布を出すとシングドゥングに投げ渡した。

「ほら、これでも被って暖かくして添い寝してやればいい。」

突然に俺の手の中へ出現して、投げ渡された毛織物と毛布に驚いた表情で固まるシングドゥング。

ああ、アイテムリストからものを出す所を見るのは始めてか、さっきは気絶してたしな。


「あんた・・・・・、マジックアイテムでも持ってるのかい?

 この毛織物とかどっから出したんだい? それらしいものは見えないけど?」

んー、鞄か袋っぽいのから出すフリでもしておいた方が良かったのかな?

そういう魔法のアイテムは存在してるという事か、それなら・・・・・・。


「こっちでどう言われてるものかはわからないけど色々と便利なものは、あるよ。」

ふぅ~っと、なぜか呆れたようなため息をつかれ、こめかみを抑えるシングドゥング。

「・・・・・・・色々と、ねぇ。どうにも常識知らず、と言うか 常識はずれと言った方がいいのか。」

「その辺の常識も後で詳しく、聞かせてもらえると有難い訳なんだが・・・・・。」

「・・・・・・・・・・。」

胡散臭そうな眼つきで俺を見ながらしばらく毛布を触っていたが

膝に寄りかかってきたペンタルディムが気になったのだろう。

「じゃあ、色々と、は後回しにしとくかね、アタシ達は先に休ませてもらっていいんだね?」

 ペンタルディムを抱え込むようにして毛布にくるまっていく。

「ああ、ゆっくり寝て体調を少しでも戻してくれ、あとここいらのまわりの獣なんだが

 ステップハウンドよりやばいのはいるのか?」

「いや、ここいらは他には危ないのはいないはずだよ、だからアタシもこっちに

 逃げてきたんだしね。山の麓と森の間の草原は穴場なのさ、ステップハウンドさえ

 やり過ごせれば、だけどね。」

「わかった、夜が明ける前に起こすと思うが、それまでは休んでくれ。」

「すまないね、助かるよ。・・・・・・ああ、アタシのことはシングでいい、この子も

 ペンタと呼んでやっておくれ、あんたは・・・・・。」

「タダでいい。早く寝ときな、シング。」

「わかった、先に寝かせてもらうよ、タダ。」

「・・・・・おやすみなあい、タダおじしゃん。」

ふにゃふにゃと、たどたどしいペンタのお休みに和ませてもらい

俺もようやく一息をついた。


小さなテーブル替わりの台の上に残ったパンをかじりつつMAPで周りを確認する。

確かにこれといってヤバそうな(敵対表示の対象)のは表示されていない。

が、寝かしたステップハウンドがいつ睡眠が切れて起きるのかが気になる。


ここまでの魔法を試した結果からの推測だと、

ゲーム時は現実での一時間でゲーム内で一日が過ぎていく仕様だった、

その割合で言うとほぼ24倍になってるのかなぁ。

単体睡眠(スリープ) I」だと効果時間が現実時間で60秒だっけかな?

ということは、ココでは24分くらいで切れるはずなんだが・・・・・。

もう、一時間以上は確実に経ってるよな、寝かしてから。

これもステータス値の差で効果時間が伸びてるんだろうか?

要、経過観察って事か。魔法のリキャストやスキルの再使用時間も24倍になってるっぽいなぁ。


しばらく、ぼーっとしていたがようやく二人分の寝息が聞こえてきた。

ペンタはすぐに寝てしまっていたようだけど、流石にシングはしばらく

こちらに意識を向けたままでいたようだ、それもようやく眠気に負けたか、

それともこの状況で出来る事もないと諦めたのか、ペンタを抱え込んだまま

眠りについたようだ。


さてと寝ている今のうちに・・・・・・。

二人の状態を[見る]とやはり消耗は激しいが大きなケガはなさそうだ。

基本的には清潔にして食って休む、でなんとかなるかな。

ただ、二人共に足の裏とか脛とかに細かい切り傷や、

走ってる途中で石にでもぶつけたのか内出血してるっぽい

ところがいくつもあるので治癒(ヒーリング) Iと

再生(リジェネーション)をかけておく。

破傷風とか大丈夫なんかなぁ? 今の魔法の仕様なら

症状が出てからでも解毒(デリートポイズン)病気回復(デリートウィルス)

でなんとかあるかもしれないが・・・・・。うーむ不安だ。


しかし・・・・・・、追われているってのはやっかいだな。

シングの言う通りなら大きい街であるスルーウェにはすぐには行けないか。

追っ手が来ないようならフェリオって街まで行くのが良さそうだけど

出来れば早めに武器の鞘を含めて装備をまとも、かつ 目立たない様にしたいなぁ。

で、どういう風なのが普通で目立たないのかをシングに教えて貰わないといかん。

南東にあるって村で少しの間でも落ち着ければいいんだけど・・・・・・。


これからのことを考えながら明日に必要になりそうなモノをアイテムリストから出し

ついでに樽をだして水を貯めておく、起きたら焚き火の中に入れてある石を放り込めば

湯で身体が洗えるだろう、この二人共、言っちゃ悪いがかなり汚れてる。

病気にでもなられたらこのあとの移動にも差し障るしなー。

そんな風にしていたら、夜は何という事もなく過ぎていき東の空が明るくなってきた。


途中、夜明け近くにステップハウンドがようやく睡眠から起きたけど

すぐさま「範囲睡眠(スリープス) II」をかけ直しておいた。

大体8時間くらいは効果が持続してたようだ、このぶんならレジストはまずなさそうかな。


「おーい、シング そろそろ起きれそうか?」

よっぽど疲れていたんだろう、ピクリともせずに寝ていたと思ったシングだが

声をかけると直ぐに目を開き周りを確認するように見回して、

さらにモゾモゾとまとわりつくペンタを見てようやくこちらに視線を移して

「おはよう、随分長く寝かせて貰った様だけど、いいのかい?」

「ん、まぁ以前の仕事柄徹夜には慣れててね、気にしなくていい。」

「徹夜って、あんたは寝ないのかい? このあとは移動するんだろ?」

「移動に関してはちょっと考えてることがあってね、

 それに関しても聞きたいことがあるんだが・・・・・・、その前に、ほらっ。」

タオル代わりに用意しておいた木綿布を二人に渡して湯の入った樽を指差し、


「朝飯前にさっぱりしてこい、服はこっちで用意したのがある。

 多少は大きいかもしれんが裾を折ればなんとかなるだろ。」

なるべく装飾の少ない木綿布中心で作ったフード付き上着とシンプルなズボンとサンダルを渡す。

こんなところで裁縫スキル上げてたのが役に立つとはねぇ。

素材も完成品も倉庫用キャラで保管してたんだけど全部まとめて

(アイテムリスト)」に入っちゃってるからなぁ。

ま、サイズが全部、俺様になってるからシング達には大きいんだが。


「ちょっ、ちょっとこんな新品の服なんて着れないよ。」

「服も変えておいたほうが、追われてるんなら都合がいいんじゃないか?」

「うっ・・・・・・・・。」


なんとか納得したようで、湯の入った樽の横でシングがペンタの身体を拭き始めた。

「あったかぁい、気持ちいいね、おかぁしゃん。」

「ふふっ、ほら腕上げて、じっとしてなさい、ペンタ。」

「あい♪」


その間、背中を向けた俺は朝飯の用意である、とはいっても晩飯に出したシチューが

ポトフっぽいのにかわったくらいで後は同じパンとミルクである。

流石にここでおにぎりとか出す訳にもいかんだろうしなぁ。


湯がたっぷりあったので髪も洗えた様で、煤けた赤銅色の髪に見えていたシングも

綺麗な赤味の強いオレンジの髪をタオル代わりの木綿布で拭いていた。

流石に定番というか、お約束どうりというべきか、

ドワーフの血のせいなんだろうか、身長の割に髪の量が多い、髭はないようでなぜか安心した。


シングで身長が140cmくらいか、ペンタにいたってはまだ100cmくらいなんだろう。

二人共に袖と裾をグルグルと巻いてなんとか引きずらないようにしている。

これは、時間ができたら身体に合わせてやらないといかんかなぁ。


食事を済ませる頃にはすっかり明るくなってきている、移動しなきゃいかんのだが


「で、だ。移動前に色々と聞いておきたいんだがいいか?」

「ああ、あたしでわかることなら、出来るだけ答えるよ。」

「ああ、まずは常識的な事なんだが、俺のこの服とかシング達に渡した服で

 近くの村や街に行ったとして、変に思われたりしないか?」

「ふむ・・・・・・、正直、街ならともかく村程度だと木綿とはいえ新品の服ってのは目立つかもね。」

うーん、やっぱそうかー、シング達の着てたのボロボロでわかりづらいけど

おそらく、麻と革と草を編んだのを組み合わせてたと思うんだよな。

あれが一般的なものだとすると、確かにこの服は目立つかもしれない。

「ああ、でも羽振りの良い商人とかなら変でもないよ、街になら普通にいるしね

 ただ、なんでそんな商人が其の辺の村に居るのかってのはあるだろうけど。」

「ほう、街の方でならそんなに目立つわけじゃないのか。」

「んー、アタシらの着てたのを見て言ってるんだろうけど、アタシらはスラムにいたんでね。

 自由民で畑持ちの農民なら新品とは言わないけど木綿の服くらいは持ってるんじゃないかな。」

「他にこの辺の村を通って不自然でないっていうと狩人とかになるのかな?」

「狩人ねぇ、麓の森ならいてもおかしくはないけど・・・・・。」

「・・・・・・けど?」

「タダ、あんたそもそも四職ギルドに登録してないんじゃないの?」


・・・・・・・なにそれ?









 






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