9話 きっと泥船
インフルB型きつかったです。タミフル飲んでる間って本当に何にも思考がまとまりませんでした。明日から仕事復帰です。
さて、目の前には ガクブル状態で震えながらも
気絶したドワーフの女性をかかえて、
俺から守ろうとしているドワーフの幼児(人間で言うと推定6歳くらいか?)がいます。
えーっ 俺って悪役?
それはともかく気絶してんの、どうしよう? こんなに怯えられてたら近づけねぇし。
とりあえず状態確認だな、失礼しますよっと、タゲって「調べる」を実行。
「シングドゥング・ドゥラスターフ (亜人・ドワーフミックス) LV16
24歳、神官戦士・・・・・・っと細かいスキルとかはいいや、マナー違反だしな。
ちらっと赤字の嫌な称号らしきものも見えたが今は無視しとこう。
状態の方はっと、HPは残り二割もないな、MPもほぼ使い切ってるが、毒とかはなし。
衰弱状態に近いって感じか、疲れきってダウンしたとすると
無理に起こすより寝かしたまま休ませておく方がいいかな?
しかし、二人共えっらい痩せてるなぁ、ガリガリじゃねぇか。
特に幼児の方、筋肉がやせ衰えて骨と皮状態に近いぞ。
これは話するとか悠長な事言ってる場合じゃないと判断する。
「対象に保護の必要性を認める、という訳で、だ。」
声に出して自分に言い訳しつつ(こういうとこがオタらしいんだろーな)
ドサドサッとアイテムリストから敷物に使う毛皮を出し、机を出し
ランプを置いて灯りをつけ、シチューとパン、ミルクといった食料を出して並べる。
情報収集も食料の節約も後回しで良かろう、このさい感情に従うのがきっと間違いでも正解だ。
「坊主、お前だ、お前。そう、コレ、をとりあえず食え。」
坊主、と言いながら幼児を指差し コレ、と言いつつ、パンとシチューを指差し
食え、と言いながら、口に持っていく様に身振り手振りで勧めてみる。
「◇●▽・・・・・・?(***・・・・・・?)」
何か俺の言ってるのを真似して繰り返しながら自分を指差してる。
「そうそう、坊主、がお前さんで、コレを食う、食べるだ、ほら。」
たどたどしいがなんとなく通じたっぽいか?
「ぼ●▽・・・・?」
んんっ? なんか幼児の喋ってる言葉に音が重なって聞こえてるような・・・・・・?
あ、そうかコンフィグだ、ゲームの設定のっ、えーっと確か・・・・・、あ、あった。
言語の設定のところの自動翻訳&二重音声のとこ、日本語/その他(現地共用語) これだ。
IN (現地共用語)>(日本語)
OUT (日本語)>(現地共用語)にして・・・・・
スライダーでボリュームをそれぞれINの方は日本語の方を大きく入力(聞こえる様)にして
OUTの方は現地共用語の方が大きく相手に聞こえる様に(出力)してっと
「・・・・・・・・これで言ってる事 わかるかな? おーい聞こえてる?」
「・・・・・・・・おじしゃん、だあれ・・・・?」
ふむふむ、これで会話可能みたいだな。
「あー、俺は・・・・・そうだなー、ただのおっさんだ。」
「タダ・・・・・の おじしゃん?」
「ああ、別にお前らになんか悪い事したりしないから、安心しろ」
「おかあしゃん、・・・・・・・。」
あー、泣きそうだな、気絶したままじゃ安心しろっても無理か、休ませておいてやりたいが
疲労回復を考えると起こして食事させたほうがいいのかなあ?
「おーい、ドワーフの姉ちゃん、すまんが起きれるかー?」
「う・・・・・・っ、ん・・・・・・・。」
かけた声に反応があったので少し離れる、こういう時はアレだ野良猫に食べ物やる時の距離感だ。
「おかしゃん、おかしゃん、だいちょうぶ? いたいの?」
「あっ・・・・・・・ペン、ペンタ? 怪我は? さっきのアレは・・・・・・っ。」
と、言いながら少し離れたとこに座り込む俺に気づき、
起き上がると素早く幼児を自分の後ろにかばう。
俺は両手を軽く上げ掌を見せながらなるべく軽い調子を心がけて言う。
「あー、俺はあんたらに敵意はない、言ってる事は通じてるかい?
おせっかいだったかもしれんが、危なく見えたんで手を出しちまった。」
油断なく幼児を背にしつつ自分の武器を確認しているドワーフの女性。
何も喋らずこちらを警戒しているようだ、まぁ当然なんだろう。
「まぁ、警戒するのはわかる、そっちはそのまま武器をかまえてていい。
話を聞いてもらえるか? 取引がしたいんだ。」
ぴくり、とドワーフの女性が反応した、いけるかなー?
「・・・・・・・取引?」
「ああ、まずは手を下ろしてもいいかい? 武器は持っていないからさ。」
「・・・・・・・いいだろう、ただし先に聞きたいことがある、取引とやらはその後だね。」
聞きたいこと? なんだろ。俺がわかってないだけで相当異質なのかもしれないな、俺。
「さっき・・・・・・ステップハウンドを片付けたのはアンタで間違いないかい?」
「ああ、殺すまでしなくても良かったんだが、あわてちゃってね。」
「その・・・・・・・、生き返らせていたように見えたけど・・・・・・?」
周りに睡眠をかけられて寝ているソレらに気づいたんだろう、
チラチラと視線を走らせながら恐る恐るといった感じで聞いてくる。
「血の匂いが続いてるよりは寝かしておく方がいいかと思ってね。」
本当は意味なく殺すのが嫌だったんだけど、言う事でもないだろう。
「・・・・・・・・・そうか、私達を助けてもらったのは間違いないようだ。」
そう言いつつ、視線を外さずに軽く頭を下げるドワーフの女性。
「だが、もうひとつ聞きたいことがある、貴方は私達を追って来た訳ではないんだな?」
「ふむ、追われているのか? それで助けたのは身柄を確保する為か心配してるのか。」
グッと片手棍を握り直すと、こちらを睨みつける。
「・・・・・・・安心しろって言っても難しいだろうが、今のとこ、俺はあんた達の敵じゃぁないよ。」
「さっきの見てたらわかるだろうが、その気なら二人共睡眠かけて好きに出来る。
それをせずに話をしてるあたりで信用してもらえんかな?」
フッと息を吐いて緊張を緩めたドワーフの女性は座り直すと武器を横に置き深く頭を下げた。
「失礼した、シングドゥングだ、息子のペンタルディム共々 命を救われた事に感謝する。」
「ああ、俺は・・・・・」なんと名乗ればいいんだろう? そう考えた時、
「タダのおじしゃん?」
ペンタルディムが母親の後ろから顔を出して言った。
「・・・・・・・ああ、タダと言う、よろしくな。」
どうやらゆっくりと話ができる状態になったようだが、目の前の机に並べてある食物に
幼児、ペンタルディムの目は固定されている。
シングドゥングも同様で、まずは食って落ち着いてもらうのが先になるな。
「まぁ、何はともあれ食ってくれ、いくらなんでもあんたら痩せすぎだろう。
詳しい事情はしらんが子供や母親が痩せてて良い事なんてありゃせんぞ。」
ここまで来て わざわざ毒とかの心配をするのもおかしな事だと思ったのだろう、
母親がうなづいて
許可を出すとペンタルディムは恐る恐るパンを手にするとかじりついた。
「!!っ これすごいおいしいよ、おかあしゃん。」
母親にパンを渡して早く食べろと急かす、シングドゥングも指で千切れるパンに驚きつつ
それを口にした途端、目を見開く。
「こんな・・・・・・高級品 いいのかい? 恥ずかしい話だけどほぼ文無しなんだよ、私等は。」
「ああ、気にすんな、俺にも事情があってな。この辺りの事を何にも知らんのよ。
そのパンが高級品ってのも、今聞いて始めて知ったくらいでね。
で、色々と常識に近いことから教えて貰いたい。その対価だと思ってくれ。」
「どういう事なのか、こっちが聞いても・・・・・・?」
「うまく説明できるとも信じてもらえるとも思えないがそれでも良ければね。」
嘘をつくこともないだろうけどそのまま本当の事を言ってもなぁ、MMOとか説明できる気がしない。
省略&適当な変換するしかなかろうなぁ。
「まず、この辺の地理、地名、国名すべてわからない。あっちの山の向こう側の
深い森の方から来たんだが・・・・・・・。」
「あっちの山の向こうって[果ての森]しかないよ、方向が違うんじゃないのかい?」
首をかしげながらシングドゥングが言う。
「ふーむ、いや間違ってない[果ての森]っていうのか、あそこ。」
「ええっ 本気で言ってんのかい、アンタ。あんなとこに人が居れる訳ないじゃないか。」
「いや、別に住んでた訳じゃなくて通ってきただけだけど。」
「通ってきたって、そんな・・・・・・、ああ麓の森で方向感覚が狂って迷ってたのかい?
それならわかんないでもないけどさ。」
うーむどうも信用されてないっぽい、言い張っても意味ないか、どうしたもんだか。
「地名っていうか国の名前も知らないなんてどこの田舎から・・・・・、
いや、田舎モンの出せる食い物でもないし、魔法も使えるってのは
貴族か騎士くずれ・・・・そんなのとは匂いが違うねぇ。
東の大陸から流れてきたとか? 私略船に攫われてから逃げ出したとか
まぁ、この辺にあたりがないってのは判ったよ。」
「其の辺は追求しないでもらえるとありがたいね、で、ここはなんていう所になる?」
「ああ、ここはテストロム王国の西の端、果ての森に一番近い辺境、スルーウェの街から
神竜山脈に向かって進んだあたりの草原っとこかね、細かい地名なんてないとこさ。」
「・・・・・・・・全然わかんねぇ。」
ぐるりと周りを見渡してみても街の灯りらしきものはまるで見当たらない。
「細かい地名がないってことは街やら街道みたいなのもないってことか?」
「そうさねぇ、ここが少しばかり高台になってるのもあるけど
スルーウェの街までは二日ばかりかかる距離だし、こっち側に道らしい道ってのはないね。」
「一番近い街はそのスルーウェってところ?」
「大きいのは、そうだね。小さい村程度なら南東の川沿いにいくつかあるはずさ。」
「シングドゥング達はこのあとどうする予定なんだい? できれば街まで案内を頼みたいんだが。」
「悪いがスルーウェには行けない、薄々わかってるんだろうけど追われる身でね。
南東の村か、その先のフェリオって街なら案内してもいい。」
「ふむ、条件は?」
「案内する間の食事と敵の対応、あんたなら問題ないんだろう?」
「それは・・・・・・・・シングドゥング達を追ってくるのも含めて、かい?」
「正直に言うとこの辺の獣の方がよっぽど怖いね、あたしを追いかけて来るような
下っぱはこんなあたりまでは無理しては来ないはずさ。」
蓮っ葉な喋り方をしている、がペンタルディムを見ていれば母親としてまともであるのはわかる。
ここで離れれば情報収集も余計な手間がかかりそうだし
ここらの獣に襲われる可能性を考えるとほっとけないしなぁ。
ま、袖すりあうも多少の縁、しばらくは同じ船に乗るとしますか。




