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第三十八話:雪原の迎撃部隊と、氷壁を穿つ破壊撃

第一検問所を抜けた先は、視界ゼロの極寒地帯。

そこで待ち構えていたのは、雪上魔導戦車と重装歩兵の待ち伏せ部隊でした。

直撃すれば蒸発確定の徹甲魔導砲が迫る中、生徒会が止まるはずもなく――?

タクトの反射障壁、セナの撹乱ワイヤー、リサの絶対零度、そしてアイラの飛び蹴り!

息をつく暇もないチームプレイで、敵の包囲網を力づくでこじ開けます。 いざ、お兄様が囚われている地下古代遺跡のダクトへ!


《スレイプニル改》の六脚型キャタピラが深雪を豪快に跳ね上げ、魔導ブースターの轟音とともに疾走。

フロントガラスの外は一面の白銀と横殴りの嵐。だが、車体表面を覆う淡い藍色の光膜が冷気と風圧を滑らかに逃がし、車内は揺れも冷え込みも完全に遮断されている。

「偏向コーティングの魔力循環、安定してます! こっちは雪玉ひとつ通しませんよ!」

「頼もしいわタクト! ノア、お兄様の魔力反応の方向へ最短で突っ切って!」

後部座席でセリアが

「皆様、体温低下や指先の痺れはありませんこと?」と確認し、セナが

「セリア先輩のポーションのおかげで全然へーき!」

と親指を立てる。

ノアのコンソール画面に、不気味な赤い警告マーカーが複数点滅し、アラート音が鋭く鳴り響く。

吹雪の視界不良をものともせず、生体魔力ソナーが前方雪中に埋没待機している金属質量と魔力反応を輪郭ごとスキャン。

立体マップ上に、行く手を塞ぐ扇状の包囲陣形が浮かび上がる。

「前方300メートル、雪中に高密度魔力反応! ……軍部強硬派の雪上魔導戦車2両、および重装魔導歩兵12名の小隊です! アンブッシュ(伏兵)配置、完全にこちらの進路上で待ち構えています!」

「第一検問所のアラートをセナが遮断したとはいえ、この先の防衛ラインには先回りされていたようですね」

「うわ、あのタカ派の連中、待ち伏せとかホント陰湿! 正々堂々お出迎えしなさいっつーの!」

《スレイプニル改》の前方数百メートルの雪原がドォンと爆発するように盛り上がり、分厚い雪煙を突き破って漆黒の雪上魔導戦車2両が姿を現す。

周囲の雪中からは、白銀の迷彩マントを羽織った重装魔導歩兵たちが一斉に銃身を構えて包囲網を形成。

戦車の長大な砲身がキィン……と不気味に唸りを上げ、砲口に集束された紫電混じりの魔力光が膨張。

「目標、公爵家の侵入車両! 撃てェッ!」という敵隊長の号令とともに、極太の徹甲魔導光線が猛吹雪を蒸発させながら直線軌道で撃ち放たれる。

直撃すれば装甲車ごと消し飛びかねない閃光が迫る中、私は少しも怯むことなく助手席を蹴って身を乗り出す。

「ノア、減速禁止! 一歩も止まらずに踏み潰すわよ!」

「了解、スロットル全開のまま維持します!」

真紅のマントを翻し、魔導指揮杖の切っ先をフロントガラス越しに敵戦車へピタリと向ける。

「タクト、前をこじ開けるわよ! 私たちの道を塞ぐ邪魔者は、全員まとめて生徒指導よ――ッ!」

「了解っす! ど真ん中、ぶち抜きましょう!」

タクトが即座に両腕の魔導腕甲を前方に突き出し、魔力を最大励起。


猛吹雪を蒸発させながら、極太の紫電混じりの光線が《スレイプニル改》のフロントめがけて迫る。

タクトが両腕の魔導腕甲を前方に突き出し、瞳を鋭く光らせる。

車体前面数メートルの空間に、超高密度の藍色の光膜『指向性反発偏向面』を角度45度で斜め上方へ展開。

直撃した光線が「バギィィィン!」と凄まじい衝撃音を立てて直角に跳ね上がり、鉛色の吹雪雲を丸ごと吹き飛ばして上空の空を裂く。

「『偏向反発面』、角度45度で固定! 軌道、頭上へ全反射っす!」

「なっ……主砲の直撃を逸らしただと!? 馬鹿な、どんな装甲をしてやがる!」

ノアが端末を操作し叫ぶように言う。

「主砲の再充填まで4秒! 反撃の猶予は今しかありません!」

私は助手席の天井ハッチを勢いよく蹴り開け、真紅のマントを吹雪になびかせて屋根上へと飛び出す。

「タクト、足場! 一気に飛び込むわよ!」

「了解! 三段加速、全部踏み抜いていってください!」

合宿と鷲宮戦で完成させた「トランポリン」の即時構築。

私は装甲車のルーフを強く蹴り、1枚目の空中障壁へ跳躍。

「ドォン!」と反発魔力を受けて初速が跳ね上がり、すぐさま2枚目、3枚目の障壁を連続で蹴り飛ばす。

「バシュゥゥッ!」と衝撃波が雪煙を円形に吹き飛ばし、アイラの身体が音速の壁を突破。

雪上戦車の真上、上空数十メートルまで一瞬で跳び上がり、空中で身体を反転。

足元に『瞬間凝固』の不可視の足場を生成して全力で踏み込み、重力と加速エネルギーを全乗せした急降下ダイブへ移行する。

「お兄様を実験台にしたあげく、生徒会の行く手を阻むなんて――」

「いい度胸じゃない、公務執行妨害よ――ッ!!」

落下速度が臨界に達する中、アイラは指揮杖の先端に超圧縮した真紅の魔力を集中。

慌てて迎撃しようと旋回しかけた雪上戦車の主砲砲身へ向け、脳天から指揮杖を叩き下ろす。

「ドゴォォォォンッ!!」と地響きのような轟音とともに、戦車の重装甲が一瞬で飴細工のようにくの字にへし折れる。

魔導主機がショートして紫の火花を噴き散らし、衝撃波が周囲の雪原を円形に吹き飛ばして巨大なクレーターを形成。

雪上戦車は車体ごと雪中深くに叩き沈められ、一撃で完全沈黙・スクラップ化する。

舞い散る雪煙の中、私は指揮杖を構えて華麗に着地する。

「ば、化け物か……!? たった一撃で魔導戦車を叩き潰しただと……!?」

セナは装甲車の窓から身を乗り出して言う。

「ギャハハ! アイラちゃん相変わらず容赦なさすぎ〜!」

しかしリサは冷静に言う。

「会長、一両片付けたところで油断しないでください。歩兵小隊と二両目が動いています」


アイラの一撃で一両目の戦車がクレーターに沈む光景に敵歩兵たちは戦慄するが、即座に歴戦の軍隊として散開する。

生き残った歩兵隊長が「ひ、怯むな! 相手はたった一人だ! 包囲して魔導小銃で撃ち殺せェッ!」と絶叫。

12名の重装歩兵が一斉に銃身を構え、残る二両目の雪上戦車も砲塔を私の方へ旋回させ始める。

私は着地姿勢のまま指揮杖を軽く構え、不敵に口角を上げる。

「……言ったでしょ? 私たちはちっとも止まらないって!」

歩兵隊長が「包囲射撃、撃ち――」

と言いかけたところでセナが

「はいストーップ! お兄さんたち、よそ見してると足元すくわれちゃうよ〜!」

と吹雪の奥から言う。

猛吹雪と巻き上がる雪煙を隠れ蓑にして、セナが影分身を交えた変則機動で疾走。

敵兵の索敵レーダーを嘲笑うように雪面をすり抜け、重装歩兵小隊のど真ん中へ一瞬で肉薄する。

両手の指先から極細の「高伝導魔導ワイヤー」を八方へ射出。

ワイヤーは吹雪の風に乗って複雑に絡み合い、敵歩兵たちの銃身、引き金、両足首を一網打尽に縛り上げる。

「なっ……!? ワイヤーだと!? 銃が引けん!」

「足が……絡まって動けない!?」

「遅い遅い! アタシらの爆走スピードについてこれてないっつーの! リサ副会長、お膳立て完了〜! 凍らせちゃって!」

《スレイプニル改》が雪煙を上げて横滑りしながら、敵部隊の側道へ滑り込む。

開いた窓からリサが優雅に顔を覗かせ、眼鏡のブリッジを指先で押し上げる。

瞳を冷たい藍色に発光させ、セナが束ねたワイヤーの終端へ向けてパチンと澄んだ指パッチンを鳴らす。

「『氷葬連環アイス・バインド』。……国家反逆の現行犯です。そこで頭を冷やしていなさい」

ワイヤーを伝って絶対零度の冷気が瞬時に駆け抜け、敵兵たちの足元から「ガガガガッ!」と巨大な氷柱とクリスタルの鎖が一斉に噴出。

重装歩兵12名が、武器を構えた姿勢のまま首から下を一瞬で完全凍結・氷柱の檻に拘束される。

「ば、バカな……一瞬で小隊全員が……氷漬けに……!?」

動けない兵士たちのど真ん中へ、装甲車の窓からセリアがフラスコ型の「特製催眠香アンプル」をポイと放り投げる。

パリンと割れたアンプルから甘い紫色の霧が広がり、凍結されて震えていた兵士たちが白目を剥いてスヤスヤと眠りに落ちる。

「ふふ、こんな極寒の中で凍ったままでは風邪を引いてしまいますわ。解凍用の解毒剤と一緒に、安眠薬を置いておきますわね」

「セリア先輩、笑顔でやってることが一番エグいっす……!」

一方、慌てて逃走・後退しようとした二両目の雪上戦車に対し、屋根の上の私が追撃の指揮杖を一閃。

『瞬間凝固・衝撃波』が戦車の無限軌道キャタピラだけを的確に叩き割り、完全に走行不能・雪原に立ち往生させる。

「敵迎撃小隊、戦車2両および歩兵12名、全滅・沈黙を確認。進路クリアです」

私は装甲車のルーフから運転席へ飛び込みながら言う。

「完璧! ノア、このまま旧式冷却ダクトへ突っ込むわよ!」


《スレイプニル改》のキャタピラが雪煙を豪快に巻き上げ、切り立った断崖の岩肌に口を開ける「旧式冷却排気ダクト」の巨大鉄扉前でドリフト気味に急停車する。

「構造図の座標と完全に一致。ここが旧帝国軍の第3冷却排気ダクト坑口です」

何十年も放置されていた排気坑口は分厚い氷と氷柱に覆われ、頑丈な防護シャッターが凍結封鎖されている。

「うっわ、ガチで氷漬けじゃん! さすがに放置されすぎてサビと氷でカチコチだよ〜!」

タクトが

「俺の障壁で扉ごとぶち抜きますか?」

というが、リサが冷静に止める。

「待ちなさい。物理的な破壊音を立てれば、地下の防衛網に察知されます。無音で開けなさい」

ノアが黒革のノートを開き、ダクト側面の凍りついた整備用端子へ魔導ケーブルを直結。

「電磁ロックおよび旧式セキュリティのハッキング完了。警報ラインは切断済みです」

青白い魔導文字が奔流となって凍結したシリンダーへ流れ込み、セリアが即座に「氷解薬(解凍触媒)」を鍵穴へ一滴垂らす。

ジュワッと氷が蒸発し、ノアが構築した指向性破砕コードが内部の電磁ロックをサイレント解除。

「ふふ、解毒ポーションの応用で作った即効性の解氷剤、役に立ちましたわね」

開いた坑口の奥は、地下深くへと垂直に落ち込む底知れぬ巨大竪坑。

坑口から吹き上がってくるのは、単なる冷気ではない。空気をビリビリと震わせる禍々しい古代の魔力圧だ。

ドクン……ドクン……と、心臓の鼓動のように大地を揺らす『極光の巨神機』の起動パルスが、重低音となって直接骨を揺さぶる。

「……っ! なんだこの圧……肌がピリピリしてきやがった……!」

「ヤバい……! 巨神機のコア、マジで本格的に動き出してるよ! 兄様の魔力が吸い尽くされる前に止めないと!」

その禍々しい古代魔力の中に、押し潰されそうになりながらも凛として光を放ち続ける「澄んだ白銀の魔力シグナル」――ギルバートの気配が生々しく伝わってくる。

ガルウィングドアが跳ね上がり、生徒会メンバーが雪上へ降り立つ。

私は真紅の防寒マントを吹雪になびかせ、魔導指揮杖をダクトの入り口へトンと力強く突き立てる。

瞳には迷いも恐れもなく、支配者・生徒会長としての冷徹にして熱い闘志が宿る。

タクトが先行してダクト内に足場用の『偏向障壁』を斜めに展開し、突入準備を整える。

「ここから先は地下潜入戦よ。車はここに残して、一気に最下層の実験プラントまで滑り降りるわよ!」

「生徒会冬季校外特務実習――これより最終査察フェーズへ移行します」

「大事なお兄様を生贄にした落とし前、きっちり耳を揃えて払わせるわ! 古代兵器ごとあのタカ派どもを全員叩きのめすわよ――ッ!!」

「「「了解!!!」」」

アイラを先頭に、暗黒のダクト竪坑へと迷いなく飛び込んでいく6人。

地下300メートルの古代遺跡に蠢く軍部強硬派と『極光の巨神機』、そして囚われのギルバート救出戦が本格開幕する。

こいつら本当に容赦ねえな……まぁ鷲宮とかに比べたらどうってことないんだろうなって鷲宮戦後はずっと思いながら書いてます、多分アイラたちの最大の敵は鷲宮だったと思うよ


お兄様〜〜〜!!待っててね〜〜〜〜!!!!(間違ってもそんな軽いノリではない)

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