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第三十七話:公爵家の秘密兵器と、吹き荒れる白銀の霊峰

囚われのお兄様を救出するため、深夜の生徒会室で作戦会議スタート。

リサの超速書類偽造(公的認可つき)、ノアとセナのルート解析、セリア先輩の極寒対策薬、そしてタクトの障壁で完全武装した装甲車!

軍部の検問所なんて、私たちの即応力の前にはただの通過点です。


寒さに負けず、いざ白銀の霊峰へ爆走します!


デスクの上で凄まじい筆速で羽ペンを走らせるリサ。傍らには魔法省および学園長の公印が並ぶ。

既存の校則・帝国法規の抜け穴を徹底的に突き、今回の無断軍事介入を「冬季校外特務実習令(極秘・特務査察扱い)」として正当化する公文書を一瞬で作成・偽造スレスレで承認印を通す。

「学園長と魔法省双方の承認コードをバイパス処理しました。これで万が一、途中で憲兵隊や軍の正規部隊と遭遇しても『学術実習および緊急査察』の盾で論理的に拘束・排除できます」

私はリサを褒め称える。

「相変わらず仕事が早くてエグい! 書類仕事で軍隊を黙らせられるのはリサくらいだよ」

セナが帝都裏ギルドから持ち帰った、黄ばんだ「旧帝国軍・北方演習場地下構造図」を円卓に広げる。

「演習場を取り囲む外周結界は、表向きは鉄壁だけど……地下水路と旧軍の廃鉱山ダクトに、魔力循環の『死角』がある。ここを通れば、敵の哨戒網を完全にスルーして中央遺跡の真下まで潜り込めるよ」

ノアが黒革の端末から青白い立体魔導ホログラムを展開し、羊皮紙の図面を瞬時にスキャン・デジタル立体マップ化して重ね合わせる。

「解析完了。演習場全域に展開されているジャミング結界の波形パターンを特定しました。指向性破砕コードを組んだので、突入時に僕の端末から干渉すれば、5分間だけ『見えない穴』を開けられます」

タクトはそれを確認して言う。

「よし、侵入ルートはバッチリっすね」

第2理科室の調合室から戻ったセリアが、霜の降りた銀色の頑丈な魔導ケースをテーブルに置く。

中には淡い青色に輝く「極寒耐性アンプル」と、深紅に脈動する「即効性魔力賦活剤」が整然と並んでいる。

「北方の気温はマイナス30度を下回るわ。青いアンプルは体温維持と凍傷防止、赤いアンプルは古代兵器に魔力を吸い取られた際の強制復旧用よ。少し苦いけれど、絶対に命を繋ぎ止めてくれるわ」

全員の防寒ベルトポーチに手際よく薬品を詰め込んでいく。

「ありがとう、セリア先輩。これがあればどんな極寒でも動ける!」

装備の最終確認を終えた6人。それぞれの胸元には生徒会の腕章、そしてアイラの胸には公爵家当主の印璽が鈍く光る。

生徒会室の明かりを落とし、静まり返った夜の学園・中庭へと足音を殺して移動を開始する。

「準備完了ね。これより公爵家の秘匿ガレージへ移動、北方へ向けて抜錨するわよ!」

一同が力強く頷く。


学園を出て帝都地下の秘匿ルートを通り、公爵家が所有する防空・軍用クラスの地下格納庫へ到着。

格納庫の照明が一斉に灯り、暗がりから漆黒と深紅の装甲を纏った大型魔導装甲車が姿を現す。

車輪ではなく、雪上・凍結路面・泥濘地を問わず高速踏破可能な「六脚型魔導無限軌道キャタピラ」と「高出力魔導ブースター」を備えた特別改修機。

セナはそれを見て声を上げる。

「うっひょ〜! 何これガチの軍用戦車じゃん! 公爵家、裏でこんな物騒なオモチャ隠し持ってたの!?」

「お父様が私兵部隊用に隠し持ってた『スレイプニル』を、ノアとタクトに頼んで北方走破用に突貫改修させたのよ。接収した公爵家の資産、フル活用させてもらうわ」

ノアが運転席横の魔導コンソールに黒革の端末を直結し、高出力魔導エンジンのリミッターを解除。

重低音の駆動音とともに、車体後部の排気口から青白い魔導光が噴き出す。

「主機魔導炉、点火完了。全系統オールグリーン。最高時速は平地で180キロ、豪雪地帯でも120キロを維持できます」

タクトが両手を装甲車のフロントグリルにかざし、魔導腕甲から淡い藍色の魔力を車体全体へ流し込む。

車輪周りと装甲表面に、空気抵抗をゼロにしつつ衝撃と冷気を弾く『偏向障壁コーティング』が均一に張り巡らされる。

「車体全周に『三重偏向コーティング』完了っす! どんな吹雪だろうが岩の衝突だろうが、車内は揺れゼロ・こたつ並みに快適に保ちますよ!」

ガルウィング式の重厚なサイドドアが開き、セリア、セナ、リサが後部座席(作戦卓・医務スペース)へ乗り込む。

アイラが防寒用の真紅のマントをバサリと羽織り、胸の生徒会長バッジと当主印璽を冷たく光らせながら、助手席(指揮官席)へ乗り込む。

私は前方の防壁ゲートを鋭い眼差しで見据える。

「北方第一検問所まで約2時間。到着は夜明け前になります」

と、リサが言う。

「ギルバート様、どうかご無事で……」

セリアも心配そうに言う。

「待っててお兄様。私たちの邪魔をするなら、軍部だろうが古代兵器だろうが、全部吹き飛ばして進むわよ!」

赤い警告ランプが回転し、格納庫正面の巨大な耐圧防壁ゲートが重々しい音を立てて上方へ開いていく。

ゲートの先には、深夜の冷たい闇と、北へ続く白銀の街道が一直線に伸びている。

ノアがスロットルレバーを押し込み、魔導ブースターが轟音を上げて点火。

《スレイプニル改》が猛烈な加速でカタパルトを飛び出し、夜の帝都を切り裂いて北方の霊峰へ向けて爆進していく。


雪煙を巻き上げながら《スレイプニル改》が検問所手前で滑らかに停車する。

哨戒兵たちが銃口を車体へ向け、物々しい足音を立てて近寄ってくる。

すると隊長格の兵士が銃身で運転席の防弾窓を乱暴に叩く。

「止まれ! これより先は軍部直轄の特別警戒区域だ! 現在、急激な悪天候により何人たりとも通行は許可されていない! 直ちに車を反転させ、引き返せ!」

「うわ、目つきが完全にガチのやつらっすね……」

私はリサに目配せして言う。

「リサ、お願い。生徒会の“正論の切れ味”、見せてやりなさい」

ウィーンと静かに窓が開き、冷涼な美貌のリサが眼鏡をクイと押し上げる。

魔法省および学園長の正式認可印が紅く光る「冬季校外特務実習令(特務査察扱い令状)」を哨戒兵の目の前へピッと突きつける。

「桐花学園生徒会です。こちらは魔法省治安管理局・学園統括部双方の連名による『冬季校外特務査察令状』です。帝国貴族法および特務査察法第12条に基づき、査察官の通行を正当な理由なく妨害した場合、即時『反逆幇助罪』が適用されます」

「なっ……!? が、学生の査察令状だと!? 馬鹿を言うな、軍部上層部からの封鎖命令が――」

「軍令と魔法省の特務令状が衝突した場合、帝都法規第7条により『魔法省特務令状』の執行が優先されます。貴殿のその発言は、軍規を逸脱した私的封鎖の自白と受け取ってよろしいですか? 識別番号と氏名を記録します」

「ぐっ……!? な、何を……!?」

隙のない冷徹な論理武装に圧倒され、哨戒兵たちの思考と動きが完全にフリーズする。

兵士たちの意識がリサの書類に釘付けになったわずか数秒の隙。

セナが車体の影から影分身を滑り込ませ、夜霧に紛れて監視塔と通信塔へ肉薄する。

通信塔の基盤に魔導短剣を突き立て、魔導攪乱弾をサイレント信管で起爆する。

「監視カメラのループ偽装&通信塔の緊急アラート回線切断、完了〜! これで10分間は本部に警報が鳴らないよ!」

ノアがコンソールを叩いて通信塔の回線を即座にジャックし、監視カメラの映像を「何事もない雪景色のループ映像」へ差し替える。

「外部通信網の掌握完了。……いつでも突入できます」

リサがスッと窓を閉める。

車輪の接地圧を高めた《スレイプニル改》が唸りを上げる。

タクトが魔導腕甲を前方のバリケードへ向け、藍色の魔力を圧縮。

人のいない無人の鉄製バリケードと遮断機だけを狙い、『指向性偏向衝撃波』を豪快に放つ。

ドォォンッ!と轟音が響き、巨大な鉄柵が粉々に跳ね飛ばされて前方の道が一気に開ける。

「バリケード排除完了! 一滴も血は流してないっすよ!」

吹き飛ばされたバリケードの破片をものともせず、《スレイプニル改》がフルスロットルで加速。

哨戒兵たちを一滴の血も流さず置き去りにし、関所をトップスピードで駆け抜ける。

「ナイス! このまま霊峰の結界境界線まで突っ走るわよ!」

突破の余韻も束の間、車のフロントガラスの先で、霊峰を取り囲む吹雪と空間の歪みが急速に牙を剥き始める。


検問所を突破した直後、ゴオオオッ!という轟音とともに猛烈な突風と横殴りの白銀の嵐が車体を包み込む。

視界は完全にホワイトアウトし、わずか数メートル先すら見通せない。

車輪から伝わる振動が激しくなり、外気温計の針が一気に氷点下30度以下まで急降下。装甲車の分厚い強化ガラスの縁から、ピキピキと急速に霜と氷が張り付いていく。

セナが窓に張り付き言う。

「うわっ、何これぇ!? 境界越えた瞬間にいきなり視界ゼロなんだけど!?」

この状況をリサは冷静に分析する。

「自然の天候ではありませんね。気象操作術式を組み込んだ広域結界――軍部が外部からの侵入と脱出を完全に阻むための『疑似吹雪』です」

「皆さん、配った青いアンプルを今すぐ服用なさい。この極寒は魔力伝導を鈍らせて体温を奪いますわ」


全員がセリア特製の「極寒耐性アンプル」を飲み干し、身体の内側から魔力を活性化させて寒気を押し返す。

タクトが魔導腕甲を構え、車体全体に張った『三重偏向コーティング』の出力を引き上げる。

吹き付ける雹や氷塊がフロントガラスに直撃する直前、青い光の膜がガギンッと軌道を逸らし、車内への衝撃を完全に相殺する。

「外は地獄ですけど、車内はこたつ並みに死守しますよ! コーティング出力最大っす!」

一方で、ノアの魔導端末の画面に激しいノイズ(砂嵐)が走り、警告ブザーが鳴り響く。

「くっ……演習場全域に展開されているジャミング結界の干渉波が強すぎます。GPSと広域通信は完全途絶。……ですが、短距離の生体魔力ソナーなら生きています」

ノアが指先を高速で動かし、ジャミングの周波数をフィルタリングして解析コードを走らせる。

暗転した立体モニターの奥深くに、禍々しい赤黒い巨大な魔力反応と、それに押し潰されそうになりながらも消えずに輝く「澄んだ白銀の魔力シグナル」がポツンと浮かび上がる。

「……捉えました! 霊峰の中央地下、深度300メートルの古代遺跡エリア! 『極光の巨神機』と思われる古代魔力炉の強制励起反応です!」

「そして、その中心部……この研ぎ澄まされた純粋魔力シグナル、ギルバート卿です! 間違いありません、まだ生きています!」

地下深くの古代遺跡から、大地を伝ってドクン……ドクン……と心臓のような不気味な古代魔導の脈動が響いてくる。

「ギルバート様……! 吸収に抗って耐えていらっしゃるのね」

助手席のアイラが防寒マントを翻し、魔導通信機をぎゅっと力強く握りしめる。

瞳の奥に、かつてないほどの鋭い闘志の炎が宿る。

白銀の嵐の彼方、禍々しい古代の光を放つ霊峰アイゼンベルクの山影をフロントガラス越しに真っ直ぐ睨みつける。

「――待ってて、お兄様。軍部の卑怯者どもも古代兵器も、全部まとめて叩き割って、今すぐ引きずり出してあげるから……!」

「ノア、最短突入ルートへスロットル全開! 生徒会北方遠征隊、突撃ーーッ!!」

「「了解!!」」

《スレイプニル改》のブースターが白煙を切り裂いて青白い火花を噴き上げ、猛吹雪の雪原を古代遺跡へ向けて爆走していく。

吹雪の奥に待ち受ける軍部部隊との激突を予感させる。


冬とかそういう問題じゃない極寒()

そしてリサの理詰め、ノアの操縦、タクトの障壁、怖いものなんて何もない


果たしてお兄様は無事なのか……

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