海野彩葵の物語⑦
仮想空間でのあの時間は思い出すだけで…涎が出てしまうぐらいに素晴らしい時間だった。
ユウさんが私のことを犬として扱ってくれたのはとても嬉しかったし、色々と考えながら私は何を望んでいるだろうって顔もよかった。叩いて欲しいってお願いした時のユウさんの顔はやっぱり忘れられない。
あのユウさんが本当に嫌そうな顔をしてた。たぶん優しいから誰かのことを叩いたりするのが嫌だったり、私みたいな人種に出会ったことがなかったから余計に嫌悪感を抱いたのかもしれない。
普段のユウさんはとても優しい。どんな時でも絶対に肯定的な言葉を口にしてくれる。たぶん、世間一般から私が悪いと言われるようなことであっても、ユウさんは少しでもポジティブに捉えようとしてくれる。ユウさんはそういう人だ。
あの感じだと次もやってくれるかは分からない。
もしかしたら今回が最初で最後だったかもしれないと思うと残念だけど、一回だけでも私に付き合ってくれたことに感謝。
そして最後に『犬、次までお預けな』って言ってくれた。
ノリノリな感じではなかったけど。
―――
ユウさんと仮想空間であった日から、私は仕事もいつもより集中力を増して取り組めている。私生活の影響がここまで仕事に出るとは思っていなかった。
もちろん、ユウさんという存在を出会い系アプリで見つけた辺りも仕事に対するモチベーションは高かった気がする。やっぱり仕事も心の持ちよう一つで変わるんだ。
これでも全てユウさんのお陰だ。
仕事の休み時間に勇気を出して、ユウさんに連絡してみることにした。
『ユウさん、またお願いできますか?』
この返事がいつ帰って来るのかは分からない。もしかしたらしばらくはユウさんも私とやり取りをしたくないと思っている可能性だって全然あり得る。
返って来たのは遅れて数日後だった。
これはもうしばらく返ってこないかなって、覚悟はしていたんだけど、返って来た。
『あんまりあおいさんのことを罵ったりしたくはないですけど、あおいさんがそれを望むであれば頑張ります。なるべく手加減してくださるとありがたいです』
ユウさんの返って来たメッセージをみて、私は飛び跳ねそうになるぐらい喜んだ。これでまだこれから先もユウさんに罵倒して貰える。
いつかはユウさんもノリノリになって、自分の意思で私に対して色々とやってくれるかもしれない。そんな日になったら、私はもう涙を流して喜んじゃうかもしれない。
現実だったら色んなグッズを使って、もっと色々なことができる。でも、さすがに仮想空間の世界だと限界がある。R18禁に値するような行動やグッズはもちろん、あの世界の中にはない。
だからそういうグッズで遊ぶのは、いつか直接会えた時の楽しみに取っておくとしようかな。それ以外に方法もないし。
神様、本当にユウさんに出会わせてくれてありがとうございます。
ユウさんに出会えたことで、私の人生はとても色鮮やかなものになった。今まで体験できなかったことや気持ちをたくさん知れた。
これからも色んな初めてのことを知って行きたい。




