海野彩葵の物語⑤
ユウさんと話して、まさかまさかの仮想空間で会うことが決まった。
そして何より、ユウさんは『犬になること』も受け入れてくれた。多少強引な形だったけど、勢いでいったらどうにかなった。
元々、私はM気質はあった。でもこんな風に誰かに対して『犬になりたい』ということを言ったことは今までなかった。
だけど、仮想空間でユウさんと会うようになってからそのM気質がどんどん高まっていくのを感じていた。普段のユウさんはとっても可愛くて、カッコいいけど、そんな彼から怒号をあびたら一体どんな気持ちになるんだろうと思ったりもする。
ユウさんが心温かい人だというのは分かってきてからは余計に罵って欲しいと思ってしまった。
男の人に罵られる。そんな体験をできる『M』もほとんどいない。少し自分でもズルい気持ちはあるけど、優しいユウさんならかなりの可能性で私のことを受け入れてくれると思っていた。
酔ってあんなことを送ってしまったと理解してからは色々と考えた。これでユウさんとの関係も終わりだとか、最悪な方法の考えばかり。
しばらく考えた末にもう押し通そうと思った。ユウさんに酔った勢いで送ってしまったと言えば、ユウさんは優しいからある程度は受けれてくれるはず。言った程度でユウさんの私を見る目が元に戻るかは分からない。
だったらもう貫くしかない。元々、Mの気質はあったし、いつかはユウさんに罵って欲しいとも思っていた。それを達成するには今しかないし、ここを逃せば一生回ってこないかもしれない。
ちょっと懸念点は仮想空間は不適切な行為を確認され次第、当該違反者を追放みたいに書かれていたはず。ただ罵るだけであれば別に問題ないけど、私が犬みたいに四つん這いになったりして『わんわん』とか鳴いていたらそれはさすがに違反かも。
そういうこともたくさんしたいけど、それをするならやっぱりリアルの方がいいかも。仮想空間も五感を全て共有する世界だから現実とそこまで変わりはない。ただそこは作られた世界というだけで、感覚としては現実と変わらない。
でも、やっぱり現実でいつかは会いたい。
ユウさんに現実で触れてみたい。
男の人にもちろん触れたことはないから、どんな触り心地なのか全く予想が付かない。それを妄想するだけでご飯何杯いけるかな。
もしかしたら、現実で会えて彼を近くで見た瞬間に意識を失うかもしれない。泡を吹きだして、倒れてもおかしくないぐらいに。
もし、触れられたらその場で気絶は確定かな。
はぁ…いつかそんな日が来たらいいなと考えない日はない。
ユウさんのためだったらどんなことでもする。犬としてどんな命令でも絶対にやるし、もし法に触れることだったとしてもやっちゃうと思う。
だからユウさんの犬にさせて欲しい。
それぐらいユウさんのことが大好きだから。




