海野彩葵の物語③
あおいさんとは良好な関係を築いていたと思う。
普通に雑談したり、たまに通話したり、仮想空間で会ったりと色んなことをしてきた。僕もあおいさんと話すことは楽しいし、これからもこの関係が続いていくと思っていた。
だからあのメッセージを見た時は驚いた。
『私はユウさんのことがこの世界で一番大好きです。どんな時も一緒に居たくて、いつもユウさんのことばかり考えています。これからも一緒に生きていたい!!』
『あなたのために生きさせてください』
『どんな形でもいいので、あなたの側に居させてください』
『あなたの犬にさせてください』
今までのあおいさんからこんなメッセージが送られてきたことはない。だから最初は誰かに乗っ取られたり、あおいさんじゃない人が勝手に送ったりしたのかなぁとか色々と考えた。
すぐに返信することは止めた。もしかしたらすぐに返信を削除することも考えられるので、数時間放置した。
でも、数時間後に見てもそのメッセージが表示されていたのでもう一度思案を巡らせる。
「どうしよう」
これをもし、あおいさんが送ったのだとすれば素直に『ありがとうございます』と返信すればいいのかな。このメッセージから感じるのは、僕のことを好いてくれていること。
今まであおいさんのメッセージで、僕に対して好意的な印象を抱いているのを間接的に伝わる文章はないわけではなかった。だけど、ここまで直接的にメッセージ上でも初めてのこと。
というか、『大好き』という言葉を伝えられたのも初めてのことだと思う。
誰かに『好き』と言われることに慣れていなさ過ぎて、どう返せばいいのか本当に分からない。
しばらく考えた末に僕はやっぱり『ありがとうございます』とだけ返した。
―――――
それから、あおいさんからの返答はしばらくなかったけど、数日経ってやっと返答がきた。
その返答も、僕の予想していたものとは全然違かった。
『ユウさんの犬になりたいです!』
「あおいさんは本当にどうしちゃったんだろう」
こんなことを言うような人ではなかったはず。もしかしたら今までのあおいさんは猫を被っていただけでこれが本当のあおいさんなのかな。
それにしても犬になりたいと言われても…こっちはどうすれば。それに犬になりたいとはどういう意味。
だって、あおいさんは人間だろうし。
どうすればいいんだろうと悩んでいると、あおいさんからメッセージが送られてきた。
『本当に、ユウさんの犬になりたいんです!どうかお願いします』
本当にやり取りをしている相手はあおいさんなんだろうか。誰かがなりすましをしているんじゃないかと疑うほどに。
『ユウさんのために犬になりたいんです!』
支離滅裂ってこのことを言うのかな。本当にあおいさんが何を言いたいのかまるで分からない。
これに対する正しい返信も分からないし、しばらく放置するしかないかなぁと思ったタイミングでまたメッセ―ジがきた。
『犬にさせてください!』
僕は頭を抱えて、これからのあおいさんとの付き合い方を考えることにした。




