小久間岬の物語⑧
ユウさんとの時間は言葉で言い表せないぐらい幸せなものだった。今までの人生でここまで高揚感に包まれたのは初めての経験。
ユウさんは私のことを意識していないと思う。だからユウさんの言葉を全て真に受けていたら勘違い女になってしまう。
そんなことは分かっている。
でも、あんな風に『美しい』とか『離れないでください』とか言われたら意識するなという方が無理だ。
初めて男性を本当の意味で好きになって、直接会って、容姿も可愛いし、優しい。あんな御伽噺から出てきたような人がこの世にいるなんて、未だに信じられない。会って確信した。
ユウさんは神様が遣わした人間だ。
そうじゃなければこんなに完璧な男性が存在するわけない。そう思っちゃうぐらいに素晴らしい人。
もし、あんな人と一緒に生活ができたら私は世界で一番幸せな女だ。ユウさんだったら本気で愛してくれているし、私のことを見てくれる。
でも、自分が少し怖いと感じた。
このままユウさんといれば、たぶん私はもっとユウさんの事を好きになる。今でも後戻りできないレベルでユウさんのことが好きなのに、もっと好きになると思う。
そうなった時に私はもうユウさんしか考えられない。
もし、結ばれなかった時に私はどうなるんだろう。ユウさんのことだけしか考え荒れないような人間が、それを奪われたら何か残るのかな。もう抜け殻のようになる、それとも前の生活に戻れる、自暴自棄になっちゃうのか。
今はまだ分からない。
だけどやっぱり怖い。結ばれない前提で考えるなんてネガティブ思考だとは思うけど、考えるもの。今までの人生で良いことなんてほとんどなかった人間にやっと来た幸運。それを掴み取ろうと必死に頑張る。でも、こんな幸運の後には最悪なことが待っているんじゃないかと。
そんなことを考えても意味がない事は分かっているんだけど…考えちゃうもの。
いや、今はそんなネガティブなことを考えないようにしよう。
それより今日のこと。
何よりユウさんは別れる時に「また会いましょう」と言ってくれた。これはまた次に会うことも確定したと思っていいよね。私としてはユウさんに変な印象を与えてしまったんじゃないかと不安だったので、別れる時の言葉は本当に嬉しかった。ユウさんが私のことを気に入ってくれたかは分からない。
でも、話していて楽しいと思えない相手だったら、もう一回会いたいなんて言わないと思うし。
これから先もユウさんとの時間を大事にして、ユウさんの心を少しずつ私に振り向かせていけばいずれは、結婚という可能性もある。
いつかユウくんと結婚できて、幸せな日常が来るといいな。
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「ユウくんは私のこと好き?」
「大好きだよ」
「ほんとに?」
「うん。世界で一番、岬のことが大好きに決まってるよ」
「…私もユウくんのことが大好きです」
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