小久間岬の物語①
小久間岬の愛は重い。
それを本人が自覚していないことが一番難しいところなのかもしれない。自覚していればそれを自分で抑え込むこともできるが、自覚がない以上はそれすらもできない。
彼女の愛が重いことの理由は彼女の生立ちに大きな要因が存在する。幼少期から彼女は愛に飢えていたのだ。母親からの愛も満足に得られず、育った彼女は誰よりも愛に敏感でそれを求める生き物になってきた。
愛されたい。
人よりもその気持ちが強くなった彼女にとって、出会い系で出会った『ユウ』という存在は初めて自分のことを愛してくれるかもしれない存在だった。
その存在が自分の側に居て欲しいと思うのはおかしなことではないだろう。この機会を逃したらもう二度とそのチャンスが来ないかもしれないのだから。男性で女性に理解があり、会うことに対して抵抗感が低い存在など『ユウ』以外に存在しないかもしれない。
愛を愛している彼女からすればどんな手を使ったとしても、手に入れたい存在であり、近くに居て欲しい存在が『ユウ』なのだ。
そして仮想空間の世界で会えるようになり、彼女の『ユウ』への執着はもっと強くなっていく。最初は端末上でやり取りをするだけで満たされていた愛が、言葉で愛を囁いて欲しくなり、態度で愛を示して欲しいと様々に形を変えながらも愛は強くなり、引き返せないところまできていた。
人間は強欲な生き物が故に求めていたものが達成されれば、次の新たなものを求めていく。これは仕方のない事であり、人間であれば誰でも同じようなものであろう。
今の彼女には『ユウ』という存在しか頭にない。一日の大半を彼との妄想で過ごし、どんな時でも彼のことを考えているほど。
先の未来を『ユウ』と共に歩んでいくためにどうすればいいのかってことしか彼女の頭にないのだろう。
それほどまでに彼女にとって『ユウ』という存在は大きいものなのだ。
彼女の未来を握っているのは…『ユウ』次第だ。
これからの彼女がどんな風に変わり、どんな風な未来を辿るのかはまだ誰にも分からない。
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私を愛して欲しい。




