97.お話
74式戦車に変化し、遠隔操作の牽引状態にあった87式自走高射砲を3 1/2tトラック(現行型)に変える。
「無事な奴は辛い奴に手を貸して後ろに乗れ。 ここを出るぞ」
ぼろぼろの服だけど、まだ手を付けられる前だったみたい。
でも、村の人達の前に捕らえられていた人達は、目も虚ろでやっぱりそれなりの事をされていた感じがする。
3 1/2tトラックの荷台に乗ってもらい、車内から食べ物や毛皮を取り出し、そのまま荷台に置く。
ゆっくりと走りながら村に向っていくけど、本当に村でいいのだろうか。自分たちの身の安全の為に、見捨てられたのに。
何かしらの方法で、違う場所に連れて行ったほうが、でもこの世界生きていくにはお金も力も必要だし、女性達だけでやっていけるだろうか。
これからどうするべきか、非常に悩ましい。
「カイ、あの子の父親は?」
砲塔の上に座っているカイに尋ねる。
「酷い怪我だが、まぁ 数ヶ月で治る程度だ」
酷い怪我でも生きていて良かった。それにしても、村の人達では教団員相手に敵わないのは確実だけど、これくらいの気概があればいいのに。
それにしても、怪我が酷いなら早く治った方が良いし、一覧に傷薬とかがあるか後で見ておこう。
「お父さん! お母さん! お姉ちゃん!」
目が覚めたのか、女の子の声が聞こえてくる。意識を輸送車に向けると、家族で抱き締めあっているのがみえた。
うーん。感動的状況なのに、心が揺れても涙が出ない悲しみ。なんとなく泣ける気がして力を入れてみると、74式60mm発煙弾発射機によって周囲が煙に包まれる。
涙の変わりが発煙弾かぁ。本当に自分の体、どういう関係で繋がりがあるんだろう。
ゆっくりと走り続けていたので、村まで半分くらいのところで夜になってしまった。
今回は野営とまでは行かないけれど、このまま荷台で眠ってもらう。出入り口近くに自分がいれば、獣も寄ってこないから安全だからね。
うーん それにしても服がない人やぼろぼろの人には、品物の中にシャツとかパンツはあるけれど、この世界基準的にどうなのだろう。
それでも目のやり場にちょっと困るから、服を着ていない人たちの為にシャツとパンツとズボンを出しておこう。
カイは砲塔から降りると服を持って3 1/2tトラックの荷台に上がった。
「それで、お前達はこれからどうする。 村に帰ってもまた何かあれば売られるだけだぞ」
「それでも……他に行くお金もありませんし、私達は戻るしかないんです」
「私は……」
黙ってしまう女性も居るけれど、カイのいうとおり村から離れるなり、男達を殴り倒すなりしないと、何かあるたびに売られることになると思う。
平和がない世界じゃ、男だろうと女だろうと強くないと身を守れない。
「そうか。 だが出来る事を考えておくんだな。 今回はたまたまオレが別件もあったので助けたが、こんな事はもう二度とない」
トラックの荷台から降りると、カイは車内に入る。
「リョウ、朝まで眠るから夜が明けたら起こしてくれ」
静かな夜。
風に揺れる木々の音と、夜の鳥の鳴き声。
「いやぁぁぁ!」
突如上がる女性の声に何事かと意識を向けるけれど、頭を抱えながら蹲っている。
トラウマだ。でも、この世界には心理カウンセラーなんて居ないから、自己消化できるまで一生引き摺っていくのだろうか。
本当に……、自分ってなんなんだろう。この世界で何が出来るんだろう。




