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異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
1章 旅立ち
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91.事情 涙

 カイが手早く傷の手当をし、夜も暗くなってきたので子供は車内に入れ毛布をかけておく。

 車内に寝かせて居る間にカイは食事を済ませ、子供の様子を見ている。


 夜も遅くなった頃、目が覚めると周囲を見回している。不安そうにしているけど、目が覚めたらいきなり鉄の塊の中にいたらそりゃそうだよね。

 年齢は10歳前後かな。赤茶色の髪と少し幼い顔にそばかすの印象的な女の子。

 ちょっと農家とかこの世界のごく一般的服装だとおもう。


「あの、ここは」


「小船で気絶していただろう。 怪我をしていたから治療はしたが、何があった」


「……」


 女の子は毛布を強く握ったままうつむいている。これはちょっと大変な事になりそうな予感。


「とりあえず食べろ。 何も食べてないのだろ」


 町でカイが買っていた干しにくと干しパン、皮袋の水筒を取り出すと女の子に渡す。


「気にせず食べろ。 食料に困ってないからな」


 そりゃまぁ、出そうと思えば食料くらいSPで幾らでも出せるわけで。


「あの……」


 女の子は涙を流し始める。


「私を町に連れて行ってください! 村を助けたいんです!!」


「いいから、まずは食って落ち着け。 空腹では頭が纏まりを持たずよく判らない」


「でも!」


「ちゃんと聞いてやるから、まずは食べろ」


 女の子は涙を拭きながら食べ始める。

 うーん、本当は優先すべき事案ではないんだけど、放っておくわけにはいかなそう。何よりもカイが話を聞いてあげるというか、気を向けてしまっているし。


 結局大人の一人前くらい食べた後、ようやく人心地したらしく、顔色も幾分か良くなったように見える。


「落ち着いたか? ゆっくりと説明してくれ」


「村に、白い服を着た人たちが来て。 家族の皆連れて行かれたの……。 それでお姉ちゃんが小船に逃がせてくれて、他の村に助けを」


 女の子は再び涙を流し始める。

 カイは剣を握り締めかなり怒りを抑えているようだけれど、やはり女性が関わる案件だと


「ほぅ、そんな奴らがいるのか」


 白い服と聞くと、某教団の一員と思うんだけど、まさか村を占拠までしているとは思わなかった。


「リョウ! 全速力で川沿いをさかのぼれ!!」


「えっえっ!?」


 突然の変わりように女の子は驚いている。

 こういうカイが強く感情を露にしている場合は、あんまり良い事態になってない可能性が高い気がする。もしかして、急がないとこの子のお姉さんとかが、まぁあの支部であったことを考えるとろくでもないめにあっているとしか思えない。

 とにかくほぼ全速力で川沿いを登っていく。

 

「安心しろ。 すぐにでも助けに行く」


 川をさかのぼっていくと、橋が壊れていた。

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