78.これからの舞い
広場の隅に引っ込み、カイは手早く車内に入ると着替えはじめる。その間に舞台の骨組みを車体から降ろし、懐中電灯を回収してSPに還元する。
舞台の重さなんて大して感じないんだけど、やっぱり動きにくいし見辛いし、何よりも耐荷重量を超えては居ないけど、やっぱり良い気がしないんだよね。
大丈夫だけど足回りの不安が、なんか大分人間の体の価値観から、車両の価値観に変わってきている気がする。
「よし、着替え終わったぞ」
着替え終わりいつもの服装に戻った。あぁ言う蟲惑的格好も良いけれど、やっぱりカイは武装化している姿が一番似合ってる。
「お疲れ様です。 とても素晴らしい歌と舞でしたよ。 また見れるといいのですけれど」
手ぬぐいを持って婦人がこちらに歩いてきた。見ていて感動したのか、すごく機嫌が良さそうな表情をしてる。
「あぁ、会長とやらが許せば教えてやろう」
「えぇえぇ、ぜひとも教えて頂きたいです」
眼を輝かせているけど、40代にしかみえないご婦人が、レオタードみたいな服装であれを踊るのかぁ。
うん、悪いけどちょっとご遠慮願いたいな。あの奉納の舞いは若い子が踊るものだと思う。
「それではあとでお食事でもお持ちいたしますね」
そう言うと手ぬぐいを渡して婦人はパーティーに戻っていった。これでひと段落になってくれればいいかな。
「リョウ、奴が来るか朝になったら起こしてくれ。 それまでオレは眠る」
「わかったけど、奴って」
聞く前にカイは車内に入ると毛皮に包まって横になってしまった。やっぱり人前で踊るのは気持ちが疲れるみたい。今はゆっくり休ませてあげよう。
出来ればゆっくり浸かれるお風呂も用意したいけど、さすがにそこまで大型の戦車はないしなぁ。もっと広い車内でゆっくり休ませてあげたい。
会長だったかな。その男がこちらに歩いてくるのが見えた。
「カイ、来たよ」
起こすとすぐに車外にでる。なんていうかやっぱり戦場なれというか、寝ながらも精神を張ってるんだろうなぁ。
「パーティーの中でも、とても好評でした。 もう一度と見たいと意見が多く出ていますよ」
「何度もやっては楽しみが薄れるだろう」
「ふむ 確かにその通りですね」
「気に入ったなら、約束どおり明日から選別した女達に教えてやろう。 明日までに集めておくんだな」
そう言うと再びカイは車内に戻ってしまった。
翌日から二週間ほど数名の女性に歌と踊りを教え、奉納する歌と踊りを中心に神様を祈る事を残しておくみたい。
奉納の歌と舞が残るだけの、ちょっと変わった信仰の形になるけど、これも信仰かな。日本人なんてクリスマスにお正月に神頼みのお参りにお払いと、信仰はあるけどないような雰囲気だし。
それにしても一つ一つ時間が掛かるなぁ。




