77.本番
元祭壇のタワーの町の中心の広場に設置され、パーティーも本番になるとテーブルには昼間から多くの人々が、食べ物や酒を持ち寄って飲み食いを楽しんでいた。まるで本で見たことのある大規模な収穫祭みたい。
陽気な雰囲気にいつもの商売優先の気配は全くなく、誰しもが今日を楽しんでいる。
中央広場から少し離れた場所で眺めているけど、ここまで陽気な騒ぎを見ているとこちらも楽しくなってくる気がする。
夕暮れになり、ランプがつき始めた頃には音楽を奏でる人達も増え始め、パーティーもどんどん盛り上がりを増してる。
「リョウ、そろそろ始めるが準備は良いか」
着替えを終えたカイは車内から出てくる。
両手に小さな短剣を握ってるけど、正直レオタードに羽衣を付けただけで体操選手みたい。
「任せて。 きっちりやるよ」
台車の四方に懐中電灯を備えたし、これで夜でもかなり目立つと思う。後は音楽に合わせてカイが歌いながら奉納の舞いをするだけで、かなり眼を引きつけるはず。
「そろそろお時間ですよ」
広場の隅で待機していたところ、ご婦人が時間が来たと迎えに来てくれた。
「よし、リョウいくぞ」
カイは戦車の上に木材で組んだ舞台に上がる。
舞台を揺らし過ぎないようにゆっくりとタワーの近くまで進んで止まる。
「本日は忘れ去れていた歌と踊りを発表いたします!!!」
会長さんだったかな。その人がタワーの前に立つと、周りの人々の注目を集めようと大声を上げてる。なんか魔法でするのかと思ったけど、意外と力技なことにちょっと驚き。
「さぁ 皆さん少々お静かにして頂ければと思います! 今一度、お静かにお願い致します!!」
相変わらず騒がしいけど、それでも少しだけ静かになって、楽団の音楽が流れ始める。
「過ぎ去りし時思い 流れゆく日々を思う
いま集え 流浪の民
深く願いて 伴にあるものたちと
・・・・」
カイが木楽器の音楽に合わせて歌い始め、そしてゆっくりと舞うように短剣を振るう。
透き通るような歌、ゆっくりと動く短剣の動きが、タワーについている紋様に似てる気がする。それにしても蟲惑的だった踊りが、服装と歌と音楽が重なると不思議と神秘的に見えてくる。
もしかして、歌と舞い、音楽と服装が揃って、神への奉納になる舞いとして完成するのかな。
最初はパーティーの余興みたいな感じで煩かった観衆も徐々に静かになり、ただじっと歌と奉納の舞いを見ている。酔っ払いが多いから騒ぎになるかと思ったけれど、皆静かに奉納の舞いを聞いていた。
「願わくば 良き導きと
加護が得られん事を
我ら流浪の歌を捧げる」
5分ほど舞いと歌が続いた後、奉納の舞いと音楽が収まったので、懐中電灯のライトを消して静かに広場の隅に引っ込む。




