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異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
1章 旅立ち
76/313

76.とりあえず話しを通す

 倉庫の前に行くと、先日の婦人だけではなく、多くの人がタワーに飾り付けをしたり埃をとったりしている。やっぱり長く続いているだけあって、人気があるのかな。


「あら、あなたはこの前いらっしゃった方?」


 ご婦人はこちらを覚えていたみたい。

 カイは車体から降りると、木版と服を取り出して婦人に見せた。


「前に言っていた歌と踊りが分かった。 当日披露してやろう」


「まぁ、本当ですか。 それなら今から会長に話を通しましょう。 ここで少々待っていてね」


 婦人は驚きながらも大層喜んでいるみたい。急ぎ足で倉庫の隣にある建物に入っていった。



 10分くらい待ったかな。婦人が建物から出てくると、その後を立派な服を着た紳士が付いてきている。丁寧にカイに頭を下げる。


「こちら会長、話したいそうなの」


 じろじろ見ることも無く、柔和な表情を浮かべている。お客と対応する営業職の人がする、裏を隠す営業スマイルだ。これも随分懐かしく感じるなぁ。


「お話をお聞きしました。 なんでも昔の踊りと歌が分かるとか」


「薄れていた木版、あれを読めるように直した所書いてあった」


 取り出した板版には長々と文字と絵が描かれてる。

 ちょこちょこ木版を取り出しては何かを書いていたけど、あれってこういうことだったんだ。


 紳士が手に取ろうとしたとき、触れないよう皮袋にしまいなおしてしまう。

 一瞬不快な表情を浮かべたけれど、すぐに紳士は柔和な表情に戻る。


「しかしですね。 三日後となった今さらパーティーの趣向を変えるのは大変でしてねぇ」


 その表情は笑みを浮かべたままだが困ったような作り笑顔に見える。やっぱり商人の町だけあって、この人も何かしらの利が無ければ許可を出しそうにも無い。


「気に入れば、他の奴にオレが1~2週間教えても構わない。 木板も進呈しよう」


「ふむ……。 まぁいいでしょう」


 少し考えたようなそぶりの後、許可を出す所はやっぱりこの人も商人みたい。利を得られれば許可が下りるのね。


「踊る舞台となる台車はこちらで用意した。 音楽と合わせる打ち合わせをしたい」


「わかりました。 では急ぎ準備を致しましょう」


 音楽とあわせるために担当の人が呼び出されて、少し話をした後カイは車体に飛び乗った。

 やっぱり男が居る場所に長く居るつもりはないみたい。後は当日次第かな。


「当日に準備をしてくる」


 そのまま広場に戻り、ブルーシートで張った幕の裏でカイは再び舞いの練習をしてる。小さく口ずさむように歌う言葉は、前の不思議な音階と違って、理解できるはっきりした歌詞みたい。

 当日は大事にならないよう、男が近寄らないようしっかり自分がみておかなきゃ。

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