75.準備
「素晴らしい生地ですね。 これなら良い服が作れますよ」
町に戻って大きな仕立て屋さんで発注。生地は沢山のタオルを使って、カイが木の板に描いたモノを参考にお店の人があれこれ絵になおしている。
自分も見るために店の前でのやり取りになっているけど、やっぱりプロは違うというかそんな場所でも手際がとってもいい。
「5日で作って欲しい」
「それくらいでしたらできますよ。 御代ですが11万ビタとなります」
皮袋に入ったお金を支払うと、店員はタオルをじっくりと撫でている。
「それにしても素晴らしい生地ですね。 どこで購入されたのでしょうか?」
「さてな。 だが余った生地は好きにして構わない。 ただし期日には何があろうと間に合わせるように頼む」
「えぇ、お任せください。 ちゃんとご依頼どおり間に合わせますよ」
笑顔で店員が見送る中、車体にのった次にカイと共に町の外れにある広場に行く。
「リョウ これを作るんだが、すまないが台車になってくれるか」
カイが地面に書いたものは台車付きの舞台だった。
自分が台車の代わりなのは分かったけど、これは目立つものになりそう。
「わかったよ。 でもこれだと目立たない?」
「奉納の舞いと歌になる。 目立たなくては意味が無い」
「奉納ってそういうものなんだ……。 それじゃがんばって作るよ」
余り人に見られないようブルーシートで幕を作り、ひたすら大きめの石で丸太を削る。といっても念動力に関わる馬力を生かして、丸太の一部を削って木を組合わせるだけなんだけど、朝から晩まで時間と馬鹿力を掛ければ道具が無くても案外作れる。
その間、カイは誰にも見られないように幕と車体の影で踊りの練習をしてる。
本では動きを切り取って描かれていただけなんだけど、実際に踊っているところを見ると神秘的っていうより蠱惑的、これであの服を着たらどうなるだろう。
また男が群がってきて騒ぎになるんじゃ。血の雨が降らなきゃいいけど、心配だなぁ。
即席の動く舞台も出来上がって、後は車体に乗せるだけになるには、結局パーティーの三日前までかかってしまったけれど、結構な力で叩いても揺れたりしないように作れた。会心の出来、時間さえ掛ければ意外とやれるものなんだ。
それと舞い服も出来上がったんだけど、完成した服は水着っぽい踊り子の服に、天女の羽衣のようなフサがついている。ビキニっぽくなくてよかったけど、これはこれで過激な服にみえなくもないような。
「これでいい。 依頼どおりのものだ」
「本当に残りの生地は頂いてよいのでしょうか。 相応に残っていますが」
お店の人の手にはタオル5枚分くらいは残っていた。この世界では高価で手に入らない代物だけど、たったそれだけではコピーもできないし、悪用できるものじゃないから別にいいかなぁ。
「好きにすれば良い」
そっけなくそう伝えるとカイが車体に乗ったのでその場を離れる。これで準備が出来たけど、後はパーティーの時に踊れるかどうかなんだよなぁ。




