42.別れ
それから順調に山羊っぽい魔物を機銃で撃ち倒しながら進んでいくと、すぐに8階層行きの階段までたどり着いた。ミノタウロスに出会うことは無かったけど、もしかして10階層だけに居る魔物なのかな。尋ねてみたいけど、ここでもやっぱり喋れないというか。
「それでですね~♪ 私達は主にこのダンジョンで活動してるんです~♪」
絶賛色仕掛け中の三人の冒険者、相手にしているカイに話しかける気が起きない。
カイは時折リヤカーに載せられている人を気にかけているんだけど、もしかしたらあまり状態が良くないのかもしれない。
「リョウ、そろそろ目を覚ますから止まれ」
状態が悪いんじゃなくて、目を覚ますから注意してたのね。
停車するとカイはリヤカーの方に移動し、軽く剣の鞘で小突くと目を覚ました。上半身を起すと周囲を見回し、何が起きているのか考えているみたい。
「ここは……」
リヤカーから降り、立った姿を見ると男から見て結構良い、美声で顔も良いし、元からそういうパーティだったわけね。
美形の男一人に対して、それを奪い合う女性グループ。
何故だろう、寒さが感じない車体なのに妙な寒気がしてきた。
「もう大丈夫のようだな」
カイは不快な表情だけど、もしかして人命優先で男なのに助けたのかな。そうだとしたら人間が出来てるなぁ。自分なら嫌いな奴はたぶん危機的状況じゃない限り助けないぞ。
「これは、危険なところを助けて頂いたようで、感謝の言いようがありません」
男はリヤカーから降りると丁寧に頭を下げている。
身嗜みも整っているし、性格まで中々の美形、物腰も低いしこれは間違いなく、性格と外見ともに美形だ。
「もうお前達だけで大丈夫だろう」
「「「えぇ~」」」
カイと天秤に掛けるつもりですかこの人達。しかし残念ですが、カイは女性であって本来天秤に掛ける対象では御座いません。カイは男性に厳しく、女性に優しいけど、女性好きってわけではありませんので。
「元々安全の為に協力していただけだ。 リョウ、リヤカーを片付けて階段に向うぞ。 毛皮はくれてやれ」
毛皮を美形冒険者に渡すと、リヤカーを消してしまう。そういえば、戦車の種類を変更しても中の荷物はそれなりに勝手に移動されて、消えてしまうことはないみたい。某艦みたいに見えないだけで妖精さんでも居るのかな。
「オレには用がある。 お前達の相手をいつまでもしている暇はない」
縋り付くまでは行かないまでも、カイは名残惜しそうに手を握る女冒険者達から手を離し、通路を進んでいく後を追いかける。いくつか通路を曲った後、車体に上がり砲塔に腰掛けた。
「ようやく静かになった」
ほっと一息を吐くカイを見ていると、さすがにあの三人組の相手は疲れたみたい。
「リョウ、すまないが何かあるまで中で休ませてくれ」
ハッチを開くとカイは車長席に座り、寝息を立てて眠り始めた。
よく喋っていたもんね。出来る限り一人で頑張るから、今はゆっくり休んでね。




