36.男だけど女?
カルト教団の噂は聞かないけれど、コフルの町に行く前に、蒼転の剣の依頼で盗賊団を討伐する事になった。
旅路にはお金がいるのもあるけど、良い意味で名がある程度売れていた方が、町や村に入るとき都合がいいらしい。
今回は沢山の冒険者が集まって一網打尽にする作戦。部隊も別れていて、自分達は戦うのではなくて、荷物を運ぶのがお仕事。
食べ物が詰まれたギルドの荷馬車も引っ張ってるんだけど、交代で休んでいる冒険者も乗っている。
「そろそろ日が落ちてきた。 今日はここまでにしよう」
今日はここまでにして野営するみたい。トイレとか貸したい気がするけど、ほとんど男だらけだしその辺ですればいいと思う。今は戦車な自分が言うのもなんだけど、男ってトイレに関しては便利だからね。大小問わず短時間で済む。
それでも少なからず女性冒険者も居るわけで、外見の良いカイの近くに集まってくるのは仕方ない。そう、トイレを貸すのも仕方ない。
「リョウ、油断せずに見張れ」
テントの前で見張りとして止まる。カイが気にするだけあって覗こうとする男が来るのもお約束。
「ふぉのぅれぇぇぇ」
手早く縛り上げると口輪をかませておく。未遂だし覗きなので着替えが終るまではこのまま、一応盗賊団を相手にする戦力の一人だし、どうもこの世界では自己責任の話で犯罪じゃないっぽいし。
着替えが終るのを待っていると、また一人男の冒険者が近付いてきたんだけど、なんか、動きが変。
「私もトイレを貸してもらえないかしら」
女っぽい男の冒険者、この人オカマさんかな。でも男だしカイはだめっていうんじゃ。
「まぁ、いいだろう。 使い方は大体わかるか?」
知らなかった。心が女性な男の冒険者にもそれなりに優しいとは、これは新たな発見。優しいのは相手が女性だからではなく、女性の心を持っているのが対象に含まれる。例えそれが髭面のガチムチ戦士体系の男であったとしても。
「知ってるわ。 最近アプルの町のギルドに置いてあったの使ったから」
まだ一ヶ月もたってないけど、仮設簡易トイレもう売り出されているなんて、どれだけ突貫作業で量産しているのだろう。それともそれだけ受注がきているのかな。
女冒険者やオカマさんからいくらかの小銭を受け取り、使い終わったテントとトイレを持参したリヤカーに積み込む。
SPに戻してしまってもいいのだけれど、人前でやると面倒な事になりそうな感じが。盗もうと試みた旅商人みたいに、便利だからと今度は冒険者に襲われたくない。
夜も遅くなると皆それぞれの場所で眠り始め、補給班だけが交代で見回りをする。本隊は盗賊討伐にあわせて、体調を万全にするためらしい。
その為にずいぶん補給班に無理させている気がするんだけど、うっつらうっつらしながら警戒している人もいるし、これいま攻められたら危ないんじゃ。
「リョウ、森のほう、見えるか」
カイに言われて視線を向けると、隠れるように数人の人影が見える。
「ライトアップするよ」
74式の砲身にならんで付けられている74式照準用暗視装置投光器部、フィルターを外してサーチライトを付けると目も眩む強烈な光が森を照らし出した。
「くそっ!」
「なんだこりゃ!!」
目を眩まされた盗賊の人達が逃げようとしているけど、目を完全にやられてしまったのか、木にぶつかったりしている。
照らしている自分も目がちょっと眩しい。どれだけ強いんだろこの光。
「リョウ、撃っていいぞ」
非致死性ゴム弾の同軸機銃でなぎ払うように撃つと次々倒れていく。
一人、撃たれたのにこちらに向って走ってくる男がいる。凄い根性、7.62mmといっても大口径、ゴム弾だって激痛なんてものじゃないはずなのに。
12.7mm重機銃の狙いを定め、一発受けると弾き飛ばされ昏倒した。
「対人用としては強過ぎるな。 リョウ、普段はそいつを使うな」
様子を見ていたカイはそういうと、ロープ片手に盗賊達を縛り上げていく。
「どうした! 何があった!」
全員縛り上げ終わった頃、ようやく目を覚ました討伐隊のリーダーが駆け寄ってきた。
捕らえた盗賊は尋問の後、数人の冒険者が連れて戻る事になり、朝になり移動を始めた。
ざっくりとした説明
74式照準用暗視装置投光器部:
とても強烈なライト。程度によっては近距離では余りの光で焦げるらしい




