表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
2章 歪み
278/313

278.護衛?

 屋台を開きながら三日、募集をかけていた護衛の話を聞きに来た人がいた。

 革の武具を身に纏うちょっと細身で背の高い男の人、なんだけどなんか少し動きと言うか雰囲気が普通とは違う。


「あらぁ、久しぶりじゃない」


 少し癖のある言葉使いと共にカイを見て少し驚いている。


「誰だったか?」


 カイが疑問を持っているように、自分もはっきりとは思い出せない。だけど見た覚えは確実にある。


「あたしよあたし。 前に一緒に護衛の仕事したじゃない。 トイレも借りたこともあるし」


 トイレを貸したとなるとずっと前の事だし、一緒に護衛の仕事となるとまだカイと二人の時かな。そこまで言われてようやく、ずっと前に同じ護衛の仕事をしたお姉系おかまの冒険者の人だと思い出せた。


「あぁ、あの時の奴か。 王都に来ていたのだな」


 カイも思い出したらしい。随分遠い場所で一緒に仕事をしたのだけれど、まさかここで出会うなんて驚き。


「募集を見てきたのだけれど、女だけじゃ無理ねぇ。 ほらこんなんだけどあたしは男でしょ。 心配でしょうから諦めるわ」


 すごく理解力があるというか、屋台に居るみんなをみて無理だと辞退の意思を見せた。

 なんていうか理解できるだけにちょっとだけ雇えないのが惜しい気がする。


「あれ、ハスタル姉さん!?」


 声を出して驚いているのは、いつもお茶を作っている赤茶色の短い髪を後ろに纏めた姿が特徴なダリエルさん。


「ダリエルじゃない! 村に居るはずなのにどうしてここにいるのよ!?」


 ハスタルと呼ばれた人もダリエルさんを見ると驚きの表情を浮かべている。どうやら二人は知り合いらしい。

 ダリエルさんが中心となってハスタルさんと話が行われ、大体の事情とかが分かってきた。


「あたしはこんなんでしょ? だから村でも居場所がなくってね。 8年前に追い出されてから旅をしながら護衛の仕事とかしてたのよ」


「村長の息子さんに告白なんてするからですよ。 さすがにあれはだめですって。 ハスタル姉さんが出ていったあと大変だったんですよ」


「若かったんだから仕方ないでしょ。 もう、8年も前の事言わないでよ。 ……それにしても懐かしいわね。 あたしを姉さんなんて言ってくれるのは、昔も今もダリエルだけだわ」


 姉と妹?のような親しい友人みたい。ダリエルさんが一応男であるハスタルさんと笑顔で話しているし。

 本当に男じゃなくて女性としてダリエルさんは思っているっぽい。

 そしてダリエルさんがここにいる理由を聞いて、ハスタルさんは悲しそうな表情を浮かべる。


「まさかそんなことになっているなんて、一度戻るべきだったわね」


「……たぶん生きているのはハスタルさんとわたしだけです。 ハスタル姉さんが居ても、何も変わらなかったと思います」


 諸事情は知らないけれど、どうやらダリエルさんが暮らしていた村はもうないらしい。

 もしかしたら村が襲われるかして、ダリエルさんはアルスト教団に攫われていたのだろうか。

 なんていうか知らなかった事も、ダリエルさんの事情も皆もわかったようで皆頷いている。


「ハスタル姉さんは男ですけど、中身は女なので一緒に居ても大丈夫だと思います」


 ハスタルさんは本当に体は男、中身は女の人らしいので着用している防具とかもなんとなく女性っぽいデザインと言うか、茶色の髪も長く後ろに纏めて小さな飾りをつけているし、顔も無精ひげもないし丁寧かつ身綺麗にしている。

 他のよく見かける男の冒険者や旅人とは大違い。


 カイは賛成も反対もしないようだけど、イルレさん達がどう思うか。やっぱりだめなんだろうか。

 ダリエルさんの話を信じるとして、ハスタルさんを含めて皆で話し合いが行われ、まずは王都にいる間居てもらってそれで判断しようと言う事にまとまった。


「それじゃあ、寝るときは火の番も兼ねて外で眠るとして、後は屋台をやっている間は護衛しているから。 それ以外の時で寝ているときも起こしてね」


 仕事内容は、屋台を開いて居る時の面倒な相手への対処と移動時の護衛、夜は基本的に外で火の番かもしくは眠りつつの護衛。

 夜は眠る必要のない自分と、ほぼ徹夜のステアーの一台と一匹の護衛から、もう一人増える事になるから少しは安全が増すかもしれない。




 ハスタルさんが護衛に入って二日、特に問題が起きる事もなく、むしろ手斧を武器に持つ男の人が居る事で調理をしている屋台の裏に回ろうとする人は出てこない。

 やはり女性だけと言うことで、大して力はないだろうと甘く見られていたのだろうか。


「料理は店の前で受け取りな。 御代と交換で後払いはなしだよ」


 ハスタルさんが武器の斧を片手て軽く回しながらそう言うだけで、狼のステアーやクラブのトーラスが警備巡回せずに休んでいる事が出来ていた。


「ねぇ。 またアレだよ。 リョウに何となく似てるよね」


 デュロの言葉に皆が視線を向けた先にあるのは立派なゴーレムが牽引する馬車。

 時折広場の前を通る豪華な馬車、そんな中ゴーレムと思われるモノを初めて見つけたときは驚いたけど、ゴーレムの牽引馬車がいま最新の流行らしい。

 といっても石の車輪を動かして馬の代わりに牽くだけの代物らしいんだけど、馬よりも非常に高い代わりに魔法が少し使える人が居るだけで休まずに動かせるらしい。

 馬の餌もトイレも休憩もいらない上に、4頭分の力があるのでとても便利なものと言う事。


「ミソナベを3杯くれ! 急ぎでな!!」


「はいはい。 大声を出さなくてもちゃんと出すから、旦那も落ち着いて待ちな」


 ハスタルさんが宥めるとまではいかないけれど、大きく出ていた人もとりあえず少し落ち着いて出される料理を待つ。

 いままではイルレさんが剣を抜くまでして抑えなきゃいけない事があったけれど、やはり男手が一つあるだけで結構変わるみたいだ。


 列ができる程度の人気の中、一日ごとに人が増えていき忙しくなってきた頃、整った服を着た男の人が兵士の人を連れて訪ねてきた。


「ソミールレイル侯爵夫人がお呼びである。 明日の昼、迎えを寄こす故に参るように」


 ソミールレイル侯爵夫人からの呼び出し、前に王都に来たら訪ねるようにと言っていたけれど、まさか使用人の人達まで使ってまで呼びに来るなんて、何かあったのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ