273.一時休息
AAV7に車体を戻し、数日かけて村に戻った頃には、昼を過ぎているのになのにまだ食事を買っている人がいる。相変わらず料理は人気みたいだし、奏でられているハープの音を聞きながらゆったりとしている人もいて、とても落ち着いた雰囲気が出来上がっていた。
「注文は鍋だね 二人前少し待ちな」
「その籠は……、一つ銅貨30枚です」
雇っている女冒険者の人達が護衛している中、もうみんなは男が大嫌いなだけで精神的に安定してる、後に加わった3人の姿は見えないけれど裏で見えないように皿を洗ったり料理の手伝いをしているはず。
まだ興味を持ち感情を整理できるようなものを見つけられていない。もしくはまだそこまでの余裕もないのかも。
「あ、おかえり」
「おかえりなさ~い」
「カイさんの分も料理を用意するからね」
みんなが迎えに出てくれる。それはもちろんカイに対してだけれど、それでも少し心が安らぐ。命を奪ったり壊したりするのはなく、守りながら何かを作るという生産的な事が出来る。
自分自身が戦車なのに物凄く矛盾しているようだけど、アタッチメントを付けて地雷処理とかドーザーをつけてちょっとした作業をしたりとか、わりと戦車も生産的活動もしている。それよりは度が過ぎているけれど。
「すまない。 今回は数日かけてしっかりと休みたい。 皆には悪いがもう少しの間留まりたいがいいだろうか」
同じく数日はゆっくりしたい、今回は今まで以上に精神的に疲れた。
「そうかい? 今回は大変だったみたいだけど、やっぱり誰も助からなかったんだね。 やっぱりあたい達みたいなのは運がいいだけで」
「あたしたちは、まだ運がよかったんだろうね。 生きて今こうやって生活できるなんて」
「……助からなかった人達は、きっと私たち以上に酷い目に」
「しっかり休んで。 カイさんが」
そうじゃない。もしかしたら助かった人もいた可能性があったけれど、その人達も自分と同じ外部の者のせいで、本当に、人間は狂気的になってしまえば底がないのだろうか。
自分は大丈夫だろうか、どこか狂ってしまって今やっている行為の中にも、この世界を壊してしまうような事をしているんじゃないだろうか、なんとも言えないほど良くない考えばかりが浮かぶ。
やっぱり自分も一度しっかり休んだ方が良いかもしれない。
「食事の時は出てくるが、それ以外は中で休む。 すまないな」
車内に入るとカイは鎧を脱いで敷かれているに入って眠りについた。
自分は眠る事は出来ないけれど、周囲を警戒してくれているイルレさん達や、車体の上にいるステアーに任せて気持ちを少しだけ緩めよう。
翌日から朝と昼は皆の片づけや料理を眺め、夜は虫と遠くの獣の声がするなか意味もなく夜空を見上げる。
星座に詳しくはないけれど、ここは地球とは違う、大小異なる月みたいなものが三つ、それによって満月の夜は非常に明るい。
地球ではない全く異なるこの星、外来生物?である自分は何かをすれば色々変えてしまう。味噌も医療も、自力で開発し発展していくはず可能性を、潰してしまっているかもしれない。
余り広がらないようにしないと、自分も方向性が違うだけで、あの肉塊の化け物を作り出した存在と同じ行為、害にならないように、可能性を奪ってしまわないように、もっと注意深く行動して行かないと。
五日目の日が昇り朝になると毎朝一番に起きてくるのはデュロ。
「もう起きたの? 毎日早いね」
今も雇っているままの冒険者の人、女性しかいないけれどこの村に居る間は、安全を兼ねて開店中と夜の間はいてもらっている。
「おはよ~。 今日もおつかれさまです!」
挨拶をするとデュロは広場にある井戸まで桶をもって走っていく。それからみんなも起き始め、朝食の準備を始める。
嗅覚がほとんどなくなっている自分でも感じるほど、どことなく懐かしく良い漂いが漂い始めると、デュロがカイを呼びに来た。
「カイさ~ん あさごはんできたよ~」
デュロが車体後部のドアに向かって声をかける。カイは数日の間食事の時以外はほとんど眠っていたのだけれど、昨日からは体を動かしたりと調子を取り戻しつつあった。
自分は相変わらずどうしたら良いかと悩んだけれど、余り解決してない。今までよりも注意深く気をかけ考えるくらいしか思いつかず、あんまり気持ちに変化はない。
カイは後部ドアを開けて出てると、皆と一緒に朝食を取る。
「もう大丈夫だ。 夕方には村を出て次に向かおうか」
「そうかい? それならまた買い出しに行かないと」
「冒険者皆にも、契約終了を伝えないとね」
「次はどこですか?」
「次は西に向かう。 一月以上かかるが、今まで通り村や町に寄って行くが、所々で休息を取るつもりだ」
村を出たらまた長旅、本来はとても疲れるのだけれど。
「今度は長いね」
「しっかり準備しないと」
「次の場所はどんな調味料があるんでしょうね!」
「……ゆっくりと行きましょうね」
所々でしっかり休む必要があるだけで、皆も長旅は慣れたもの、余り気にしている様子もない。




