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異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
2章 歪み
264/313

264.ロンドの町 復讐者

 小さな町ロンド、ここからそれほど遠くないところにアルスト教団の小さな支部があるんだけど。

 町に入ってすぐの広場には白い服を着た人達が吊るされ、周囲を兵士や町の人々がみていた。


「この者達は犯罪者だ!」


 吊るされた人たちの前には、以前教団支部を攻撃した後に、カイに向かってきた女の人が10人近い男女の中にいた。


「町や村で住む者達を騙し、金品を奪い女を奴隷にする奴らだ! 生かしておけば町を食い物にされるぞ!!」


 どうやら以前にアルスト教団に家族を奪われたという女性、カイに渡された資金を元に冒険者や傭兵を雇って、地道に各地を回ってアルスト教団の支部を襲撃しているみたい。

 まさか教えていないところまで自力で発見し、壊滅させて回っているなんてすごい執念。それともそこまでしてしまうほど恨んでいるのだろうか。


「……なんか、物騒だね。 みんなは外に出るんじゃないよ」


 イルレさんは少し警戒しながら御者席を降りる。

 あの人たちがしている事は、自分がしている事と大差はない。あくまで吊るし上げているか、ただ壊滅させるに留まっているか、違いはそれしかない。


「これからもアルスト教団に関わると家族や資産を失う! 見つけ次第殺してしまえ!!」


 一際大きな声で町の人々に伝えた後、町の人達が見ている中兵士の人達がアルスト教団の首を切り落とし処刑してしまう。

 昔は公開処刑は一種の娯楽であると本で読んだことがあるけれど、町の人達の中には笑いながら石を投げているのもいる、価値観の違いはわかっているつもりでも、なんとなく死者に対して酷い気がしてしまう。


「注意をすることだ! アルスト教団の奴らはお前達の財産や家族を狙っている!!」


 最後には死体が兵士の人達に引きずられてどこかに運ばれていく。

 その様子を見ながら10人くらいの男女は広場を離れ、こちらの横を通り過ぎていく。


「いくぞ。 次の教団も潰せば報酬を弾ませてもらう」


 こちらを見ると睨みつけ、しかし何かをするわけでもなく、多分雇ったであろう人達を連れ町を出ていった。

 広場に集まっていた人達もいなくなると喧騒が落ち着き、町はたぶんいつもどおりに戻ったと思う。


「少し町の雰囲気が良くないし、ここはすぐに出ようか」

「そうしましょう」

「それがいいね。 ちょっと気になる事が多いし、ギルド併設店に売ってしまおう?」


 みんなはここでは露店を開かず、作った物は商業ギルドに売ってすぐに旅を再開することにしたみたい。ギルドの前で停車し、イルレさんとエイケさんとベネリさんが作った石鹸を持ち込んでいる。

 少しするとベネリさんは顔色が悪いものの、お金が入っていると思う袋をもって出てきた。足早に荷車に入るけれど、イルレさんとエイケさんはまだ中で売買をしているのかな。


「結構な量を買えたね。 これだけあれば当分大丈夫だよ」

「液状石鹸も売れたし、準備は出来たね」


 出てきた二人の話では失敗した液体状の石鹸もそれなりの価格で買い取られ、ベネリさん用に新しく石鹸を作る道具を購入出来たらしい。


「それにしても荷が多いね」


 結構な量の品をギルド併設の店で購入し、往復して荷物を荷車に運び込んでいる。アウグさんも手伝い始めてもなかなか終わらない。


「商会ギルドの話じゃ、次の村まで10日間はあるそうだからね。 しっかり買っておかないと」


 今回は露店や商店ではなく、ちょっと高いけれど信頼できるギルド直営店で買い物を済ませたみたい。


「行くぞ。 町の中の状況が余り良くなくなってきた」


 カイが車体の上で周囲を見ていたのだけれど、同じように周囲を見ると剣や槍を持った住民の人達が増え始め、どこかに向かおうとしている。

 何が起きるのかはわからないけれど、物騒である事に違いはない。みんなが急いで荷物を運び込んで乗ったので、荷車と屋台車を牽引して南に向かって街を出る。

 町の外にも武器を持った人たちがいて、東の方向に向かっていくのが見える。


「どうやら……、アルスト教団の支部に向かっているようだな。 あの連中が壊滅させた跡を漁るつもりだろう」


 カイの言う通りアルスト教団の支部に向かっているのなら、残党狩りというかそういったものだろうか。何が残っているのかわからないけれど、物騒な事には変わりはない。


「金や食料がないと、貧民は敗残狩りするしかないからね。 止められないし止めようとすればこちらに襲い掛かってくるよ」


 経歴が良く分からないけれど元兵士のイルレさんが言う以上、実際に止める事は出来ないのだろう。

 アルスト教団の人達がどのような状況になったとしても、自業自得と思うしかない。ただ気になるのは、もし捕えられ奴隷にされた人達がそのまま放置されていたら、再び被害にあってしまうのだろうか。


「町を離れた後、森か林に荷車と屋台車を隠す。 上手く隠れて身を守っていろ」


 カイも教団の跡地に向かうつもりでみんなに隠れるように言う。


「あたい達も行くよ」

「何かできるわけじゃないけれど、放っておく事は出来ないから」


 だけど皆も一緒に行くと言ってくれる。守るのは大変かもしれないけれど、それでも被害に会うかもしれない人を思えるだけ心に余裕が出来たのはいいことかもしれない。

 そしてどうしようかと迷っていた自分が恥ずかしくなる。


「そうか。 イルレとオレが守る。 リョウ お前がやれ。 意味は分かっているだろう」


 カイの問うているのは、それは可能ならば酷い目にあっている人を保護することと、必要であれば襲っているだろうアルスト教団ではない人達を“排除”するということ。

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