表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
2章 歪み
263/313

263.旅から旅 石鹸擬き

 シアタカの町に戻り、 旅に出る前にカイと話し合い、石鹸を作る事にし、いろいろな物を買い込みながら二日休んでから、次のアルスト教団支部に向かって街を出る。

 目的地はさらに南西方向に40日ほど離れた場所、また長い旅になる途中で一か所の小さなアルスト教団の支部を潰し、到着した町からまた離れた比較的中規模の支部を倒して南部は一応アルスト教団を排除したことになる。

 5日ほど町を離れた川沿いの街道で休み石鹸作りを始める。もちろん牛乳石鹸を作れるわけもないけれど、貴族のお嬢さんに石鹸を売ってしまった以上お手製品でも作っておかないと、何かしら問題になりそうだった。


「では作り始める。 オレも実際作るのは初めてだから、上手くいくとは限らない」


 雑誌の中に書いてあった 手作り石鹸の作り方 いくつもカイと一緒に沢山の雑誌を読んで、この世界で作れそうな代用品を色々買い集めた。

 天然石鹸だから難しい物ではないんだけど。

 体に害のない売られている中で油がとれる植物

 虫よけで売られていた石灰の粉

 凄く高かったハチミツ

 皆で作った乾燥させ石臼でひいた果実の皮

 凄く硬い木の薪で出来た灰

 大きくて熱に強い陶器の鍋

 家具職人の人に作ってもらった小さい木の箱


 色々と代用品ばかりだけど、あとはみんなの試行錯誤と運しだい。


 まずは油がとれる植物をしっかり煮て、柔らかくなったらひたすら潰して油を取り出す。


「リョウ 完全に潰して油を取り出せ」


 潰すのはかなりの力作業なので、自分が念動力で潰して油を取り出し壺に溜める。そのうち皆でも取り出せる道具も作らないといけないかな。

 次は数日かけて壺一杯にためた雨水に硬木の灰を全て入れ、ひたすらかき回してじっと待つ。

 そして壺に入った石灰の粉に雨水を入れると発熱し、気を付けながらかき混ぜて同じくじっと待つ。

 初日はこれでおしまい。

 翌日は混ぜ合わせた液体から上澄み液を集め、油と灰汁の上澄みを人肌ぐらいに温めながら混ぜ合わせひたすらかき混ぜる。

 そしてそのまま待った翌日、一回目は見事に失敗、完全には固まらずにそれっぽいどろどろの液体せっけんが出来た。壺にたっぷり出来たそれは布につけてこすると少ないけれどしっかりと泡立ち、石鹸としての役目は果たしている。


「一応、泡が立つけど」

「これは使えるけれど、銀貨では売れないね」


 みんなが諦めようとする中、1人だけ強く興味を持っている人が居た。


「興味深い……です。 石鹸がこんな作り方なんて」


 新しく加わった3人のうちの1人、薄茶色い髪を纏めることなく短いボサボサの髪をそのままにしているベネリさん。少し幼い感じがする表情なのだけれど、特徴的な青い目が珍しい。


「何を混ぜればいいのかしら。 それとも分量の間違い? 手順とか?」


 ベネリさんはとても興味を持ったらしく、石鹸の材料をあれこれとみながらカイに色々訪ねている。普段はじっとしているか、刺繍をしているくらいでまだ元気はなかったのだけれど。


「私は、もう一度やってみたい」


 どうもこういったモノに興味があったらしく、ベネリさんは一人で旅の間にもなんども試作し続け、次の町に着く15日間の間に固形石鹸を壺一杯分作り出した。


「凄いじゃないか!」

「本当に石鹸ね」

「良い匂いもするし、汚れもしっかりと落ちるわ」


 ハチミツと果実の粉末が混ざり、ちゃんと固形で木の箱に入れて固まっているので立派な出来だったらしい。

 試しに出来た石鹸を使うため、久しぶりのお風呂である野外入浴セットと浄水セットをSPで用意。

 いまいる広場には他に人もいないけれど、念のため野外入浴セットの出入口の場所に陣取って備えたのだけれど。


「ステアー! 逃げないの!!」


 前回は免除されたけれど、今回はイルレさんとシグさんに洗われるステアーは、泣き言も言わず小さなため息を付き浴場に引きずり込まれていく。濡れるのはなんとも思わなくても、石鹸でごしごしと洗われるのはステアーは嫌う。

 少しして服を洗う音が聞こえてくる。


「牛乳石鹸よりは良くないけれど、それでも凄いよ」

「そうだけど、この石鹸だってきっと高く売れるよ。 ベネリさん凄いじゃないかい」


 みんなの話では牛乳石鹸よりは劣るっぽい。それでもしっかりとした石鹸になったみたいで、これで一応の完成かな。


「少し甘い匂いがするね」


 ステアーと一緒にお風呂から出てきたデュロがくっ付きながら匂いを嗅いでいる。


「デュロ、ちゃんと髪を拭かないとだめよ」


「は~い」


 デュロが離れるとステアーは車体の上に飛び乗り、横になると天日干しになってまだ湿っている体を乾かし始めた。いい天気なので夕方までには熱々で乾きそう。

 少ししてすっきりした顔で皆も出てくるけれど、ベネリさんだけは何か悩んでいるような表情をしている。


「もっと良い物が作れると思うんです。 これからも色々作り続けていいでしょうか」


 材料は決して安くないからベネリさんは恐る恐る聞いているみたい。失敗した分は売れないだろうし、共同生活のお金を無駄にするのを躊躇しているのかな。

 お金を沢山儲ける為というか、共同生活費を稼ぐのと偽装の為だから、別に大赤字になって生活に困らない限り自分は使っていいと思う。


「構わない。 好きにやれ」


 カイもそれを分かっているから、特に止めるつもりもないみたい。何かに集中することでリハビリになるのなら、それでも十分稼いだ意味があるし。


「がんばりますね」


 まだ少しぎこちない感じがするけれど、笑顔を浮かべるベネリさん。あとの二人も何か興味を持てるものを見つけられると良いんだけど、色々やってみるのも大事かなぁ。

 今のところ 料理・動物の世話・刺繍・籠作り・音楽・石鹸作り と増えてきているけれど、あとは何ができるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ