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異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
2章 歪み
261/313

261.盗賊団ではなくて

 鈍い音を立てて木製の扉にひびが入り、扉が砕けて穴が開く。斧が割れた穴を広げるように次々と現れ、突破されてしまうのも時間の問題みたい。

 急いで念動力で兵士の人達をどかし、車体を割り込ませる。


「な……なんだこれは!?」

「誰かのゴーレムか?」

「こいつは、露店に居た商店の所のか!」


 何が起きたのか困惑している兵士の人達とは異なり、砕かれた扉から盗賊の人たちがなだれ込んでくる。


「「「おぉぉぉぉ!」」」


 雄たけびを上げながら槍が突き立てられハンマーが車体を叩くけれど、その程度じゃ少し歪む程度で壊すのは無理。

 それでも突破する為に攻撃してくる人達を念動力で適当に掴み、ロープで縛り上げ防壁の内側に放り投げ、兵士の人達はロープで縛られた盗賊の人達を引きずりながら連れて行く。

 ほとんど作業に近くよじ登ろうとする人を主に捕まえていたけれど、車内の運転席にいたステアーの唸り声に周囲に意識を向けると、防壁の上も盗賊の人達との戦いが始まっていた。防壁に梯子でもかけられたのか、盗賊の人達と切り合いが上でも下でも起こり騒ぎが広がっていく。

 かなりまずいかもしれない。そんな中、様々な武器を持った男女が集まってきた。


「首一つ銀貨10枚だ!!」

「報酬は個々だぞ!」

「銀貨の山よ!!」


 お金に目がくらんだ冒険者の人達の加勢も入り、盗賊の人達を押し返し始めた。それも容赦なく盗賊の人達を打ち倒し首を落としていく。

 時には生きたまま首を斬り飛ばし、正直言ってえぐくて見るのが辛い。

 嫌な光景から逃れるように砕けた扉の先に視線を向けると、アルスト教団の服を着た20名くらいが後方に陣取っていた。

 あれこれと指示を出しているようで、よく見てみると盗賊の人達も腕や首に白い布をみんな巻きつけている。

 これはもしかして、盗賊団ではなくてアルスト教団の残党では。


「ウォォォォォ!」


 ステアーが遠吠えを上げても周りの人達はなんら反応がない。だけど何かの合図をカイに送ったのは分かる。


「これで俺は銀貨120枚だ!!」


 大声と共に一人の冒険者が成果の声を上げた、それに続いてどんどん倒した数を言う声が上がり、押されている事が分かると盗賊の人達は徐々に逃げ腰になり前に出なくなってきた。

 冒険者の人達が暴れまわったおかげで塞いでいた門周辺には盗賊がほとんどおらず、その隙に旋回して防壁の外にいるアルスト教団の服を着た人達に向け走る。


「あれはまさか……」

「教団を襲ってるゴーレムか!?」


 教団を攻撃していた自分を知っている。やっぱりアルスト教団の残党に間違いない。


「退け! 全員退け!」


 白い服を着たアルスト教団員は、踵を返し馬に向かって走っていく。

 丸太ではなく車体に積んである鉄の鎖網を念動力で持ち上げ、逃げようとする人達に向かって投網の要領で広がるように投げる。

 8人を除いて投網によって捕えたけれど、避けた連中は馬に飛び乗り町から離れていく。

 追いかけようにも周りに見られ過ぎるのは不味い、どうしようかと迷っているとステアーが車外に出たがり、扉を開けると逃げた8人を追いかけていった。

 ステアーの事だからどこまでも追いかけ、場所を教えてくれるか倒してしまうのだろう。いまはステアーに頼るしかない。



 町の方も兵士の人と冒険者によって戦いは終わりを告げ、そこら中で倒された盗賊だった遺体が転がっている。皆首を切り落とされ冒険者の人達の銀貨に代わるのだろう。

 ただ倒れている兵士や冒険者の人もいるみたいで、今回の襲撃はかなり被害が出てしまったみたい。

 機銃を使えば被害はもっと抑えられたかもしれないけれど、今でも悪目立ちをしているのに誰かに仕えろとか売れとか言われても困る。

 自由人ならぬ自由戦車ではなくて、目的があって行動している、あくまで神様の指示に従っているわけで、出来うる限り貴族とか王様とか関わりたくはない。


「首31個で銀貨310枚だ!」


「「酒だぁぁ!!」」

「「豪気な冒険者に乾杯だ!」」


 なんか、一人凄腕の冒険者が居たらしく、自分が動いた事より大騒ぎになって注目を集めている。骨のような武具に特徴的な骨で出来た剣、見慣れたきつめの表情に短い茶髪、というかあれイルレさんじゃ。


「今日はあたいのおごりだ! 衛兵所で金を受け取ったらみんなは銀貨310枚で酒場で飲み明かしな!!」


 景気の良い言葉に兵士も冒険者の人達も、自分の存在を完全に忘れている。お酒にありつくために手早くというか乱暴に死体を片付け、自分に目もくれず壊れた扉の周囲を片付けたりしている。

 そんな中、一人立派な兜をかぶった兵士の人が近付いてきた。


「そこのゴーレム。 どこの商会か知らんが、これは礼だ。 命令した主のところに持っていけ」


 兵士の人に小さな板を車体に括り付けられる。

 何が書かれているかはわからないけれど、お礼と言っているのだから悪い事じゃないはず。


「やれやれ、随分と部下がやられちまったな。 家族連中への説明がつらいもんだ」


 ため息を付きながら、死んでしまった兵士の人達の事を考えているみたいだ。部下と言うのだから隊長か何かなのだと思う、どこか悲しげに言いながら死んでしまった兵士の人達が積まれている荷車に向かって歩いていった。

 戦いが起こっている最中はなんとか考えないように出来始めているけれど、戦いが終わって落ち着いてくると色々考えてしまう。

 戦わないと奪われるだけ、だからこそ戦う。それでもやっぱり誰かが死んでしまう、でも兵士の人達は守る為に戦う、その理由は分からないけれど、何かを守る為には戦わないなんて選択はしない。

 それが過剰に暴走したとき、自分も仲間や今の状況を守る為に犯罪行為をしてしまうのだろうか。それだけは起こさないようにしっかり気を付けておかないと。

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