260・クラブ競技?
露店を開き始めてから二日、味噌料理は好評で結構な混雑が出来ている。
「ミソスープできたよ! 味噌干し肉焼きは少し待っとくれ!!」
「ミソ焼き魚はおわりですよ~! また明日注文してくださ~い!!」
エイケさんとアウグさんが調理している中、屋台の隣に作られた露店では蔓で作った籠も丈夫だと売れている。編み方が他とは異なり、一般的な選り編みではなくて、三つ編みにしてから籠を編んでるおかげらしい。
寒い間の手仕事で皆が大量に作っていたので、在庫は沢山あるんだけど結構なペースで売れていく。
「すまないけれど、籠は一人一個で頼むよ」
イルレさんが一応止めるけれど、それでも在庫はどんどんはけていく。もしかしてこの町で全部売り切れてしまうかも。
「それにしても、随分と人が多いねぇ。 日に日に増えているよ」
エイケさんの言う通り町の人がなんとなく増えてきたというか、クラブ連れの人が多いのはなんでだろ。
観光客というより、何かがあるようなそんな感じがするのだけど、正直興味はあんまりない。
「おまちど~さま~」
デュロがお手伝いで料理が入った器を屋台のテーブルに出すと、お客さん達は受け取り各々の場所で食事をしている。
その中には木材で適当に作った簡易テーブルと丸太椅子もあり、勝手に持ち寄った飲み物と合わせて食べている人もいる。その話題は皆大体が同じ。
「明後日のクラブ競技、楽しみだな」
「今年はどこが優勝するだろうか」
「賭け率の発表は明日だな」
昼食を食べている人達の中にもクラブを連れている人達、クラブの競技があるらしい。お酒は出していないのだけれど、酔っぱらいも広げられたテーブルにそれなりの数が居る。
周囲をよく見まわしてみると他の露店でお酒を売っている店があり、そこで購入してテーブルに持ち込んでいるみたい。
お酒も販売できれば需要を全部満たせるかもしれない、それでも酔っぱらいがいることによる面倒ごとは避けたい。
「今年は~、昨年優勝したところだな!」
「ちげぇねぇ!!」
徐々に酔っ払いの声が大きくなり少し面倒くさくなってきた。
お酒で自制できる人は少ないし、それがお祭りみたいなものが近いならなおさら自制が甘い。
「お嬢ちゃん! スープおかわり!!」
返却されなかった器をデュロが集めているところ、大声で酔っ払いが声をかけた。
ここは酒場ではないし、もう力ずくでお帰り願おうかな。
車体に積んである丸太を掴もうとしたとき、イルレさんが屋台車から離れて酔っぱらいが騒ぎ始めているテーブルに歩いていった。
「酔っぱらいはいい加減にして帰りな! ここは酒場じゃないんだよ!!」
イルレさんが大冝で注意すると、威圧感に押されて酔っ払い達はしぶしぶとテーブルを空ける。
腰の剣にも手を当てているから、結構本気でイルレさんも気分を悪くしていたみたい。
「まったく!」
寄っぱいらが完全に視界から消えるまで見届けたあと、イルレさんは周囲を見回して他に酔って迷惑をかけそうな人がいないか確認、それから屋台の横に戻った。
それからは少し落ち着いた形で昼食から夕食の時間も終わりを告げた。
「トーラスと参加したい!」
クラブ競技会があると聞いたデュロは、みんなとの夕食時に参加したいと言い出した。
デュロはやる気になっているけど、どうみても周りは足が速そうというか、動きの機敏なクラブばかりだった。
一方でトーラスはなんというか、フサフサクラブの特徴なのかのんびり動くし攻撃的でもない。競技と言う物には不向きな気がする。
「明後日だけれど、出るだけだよ?」
「危ないことはなしだからね」
イルレさん達は止める事もなく、デュロは笑顔でトーラスに抱きつく。
「がんばろうね!」
一方のトーラスは普段通り、シグさんにもらった餌を食べているだけで、何かしら反応がない。それなりの知性はあってもというより、知性があるからこそもっと興味がない感じがする。
当日、デュロとトーラスを連れてイルレさんがクラブ競技会に参加する為、屋台を閉めて今日はお休み。
「怪我をしないようにね」
「イルレさんデュロをお願いね」
「行ってきま~す」
デュロとイルレさんがフサフサクラブのトーラスを連れて町の中央で行われる競技会に向かう。残った皆は料理を研究したり籠を作ったりと、時間を上手に使いながら安全な街中で過ごしていた。
「ステアー、天気がいいから体を拭こうね」
シグさんはお湯を沸かして布を取り出すと、御者席の上で寝ているステアーを拭き始める。毛皮が少し濡れても天日ですぐに乾くので、洗われるのは嫌でも撫でられるように体を拭かれるのはステアーは嫌いじゃない。
「これが終わったら、お肉を昼食にしようね」
ふき取ると一緒に取れる毛玉がモフモフと塊になり、ステアーは上機嫌そうに寝転がりされるがままにされている。
そんな中金が鳴り響き騒ぎの声が大きくなる、何事かとシグさんも手を止めた。
「盗賊団の襲撃だ! 兵士は皆防壁に集まれ!」
「民は家に入れ!!」
兵士が走り回り、悲鳴と共に住民の人達は家に入り扉や窓を閉ざしていく。
「イルレさんが居ないときに、大変な事に」
荷車の外にいたシグさんが慌て始めると、カイが車内から出てきて剣を抜いた。
「皆は荷車の中に居ろ。 オレが皆を守る間にリョウ、お前が片づけてこい」
カイの姿にシグさんは落ち着き、荷車の中に入った。みんなも落ち着いた様子だけど、少し緊張した雰囲気がある。
やっぱりカイの力を信じられるから安心できるのだろうか。
「ステアー、ついていけ。 何かあれば遠吠えで伝えろ」
自分が対応する上に狼のステアーも一緒ですか。とりあえずけがをさせないように気を付けないと。
「これ……、着けて行くといいよ」
ステアー商会の名と印が刺繍された布、アキュラ車体の一部に結び付けてくれた。
皆と別れステアーと共に防壁の所に行くと、木製で出来た町と外を隔てる門が大きな音を立てて歪み始めていた。
「扉が砕かれるぞ!」
「なんで盗賊連中が破城槌なんてもってんだ!!」
「切り合いに備えろ! 冒険者もかき集めてこい!!!」
兵士の人達が材木で扉を抑え、防壁の上では矢を放っている。
なんか、かなり大事のようなのだけれど、もしかして本当は盗賊団じゃないんじゃ。




