257.シアタカの交易都市
暖かい地方に入ると同時に季節も良くなり、時折降る暖かい雨なのでステアーは雨の中でも車体の上で横になり、フサフサクラブのトーラスも雨に当たる為、雨の日は車体の上でのんびりしている。
「随分過ごしやすくなったけれど、雨が多いねぇ」
「たいくつ~」
御者席に座るイルレさんと、暇そうに横に座っているデュロ、雨のおかげで食事や野営するときも外に出る事は出来ず、時折の晴れには洗濯したり保存食を作ったりと余り遊ぶ暇もない。
「見えてきたよ。 シカタカの町」
イルレさんが指さす先には、立派な防壁に囲まれた都市が見えてくる。
「おおき~い船も見えるよ」
「途中の商人の話では交易の町らしいからね。 船での輸送もしてるんだろうね」
タカニガシアの町、大きな川沿いに面する比較的大きな町で船の交易も行われているらしい。
そうなるとかなりいろいろな物が商店でも取り扱われているのかな。
順番に並んでいる門の入場審査。
「問題なし 通っていいぞ」
数組ごとにチェックが行われ、順番になるといつも通りイルレさんが書類を見せる。
「ステアー商会か。 書類は、なるほど保証書もあるのだな。 通っていいぞ」
簡単なチェックだけで入場できるのは貴族からの保証書もあるから、普通は商会でもチェックを受けないと入れないのが楽に済んだ。
都市の中に入るとやはり大通りは商店や活気に満ち、どこも荷車に乗った商人で溢れ、多くの人々が歩いている。
「香辛料を色々買いたいねぇ」
「新しい料理!」
「新しく裁縫した布、売れるかしら」
「籠はきっと売れますよ」
みんな御者席から町の様子を眺めながら期待と不安の声を上げている。
普段通り商会ギルドに赴き、露店を開く許可をイルレさんが購入、割り当てられた場所に行くと荷車と屋台車を置けるだけの広さがある。
「さて、明日から数日はここで商売だよ」
「今日は食材の買い出しだね」
「売れるモノをまとめないと」
みんなで露店の準備を進めている中、エイケさんとアウグさんがイルレさんと共に買い出しに出かけた。
積んである丸太や荷車の予備の布で屋台車を道路側に配置してメインに囲いを作っていく。
「さぁ、みんなでしっかりと準備をしないと」
新しく加わった3人は、人目にあまり触れないように裏方に徹しているけれど、少しずつは動けるようになってきている。
荷車の中で布に刺繍をしたり籠を編んだりと、静かに落ち着いた作業がほとんどだけど。
「トーラスはここね」
デュロは屋台車の横にたらいを置き、そこに水を入れるとフサフサクラブのトーラスを入れる。
暖かくなってきたので動きが活発になり、一応屋台車や荷車から離れないと言っても活発に動き回っていた。
「ステアー、町にいる間はこれを付けて」
シグさんが用意した小さな布切れ、旅の仲間としてわかるように、車体の上によじ登るとステアーの首にスカーフの様に巻き付ける。
あまり気に入らないような素振りをしているけれど、それでも一応はつけてくれるようで、小さなため息を付きながら車体の上に寝転がっている。
「ごめんね。 でも町にいる間だけだから」
そう言うとシグさんは車体から降りると、みんなと一緒に屋台の準備を進める。
屋台車から調理具を出して洗ったり、荷車から売る為の布や籠を取り出したりと、あれこれ準備を進めている最中、開店前だというのに屋台の前にいい服を着た使用人のような人が立ち止まった。




