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異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
2章 歪み
256/313

256.旅と言えば

合流した翌日、久しぶりに夜に皆で食事会というなの、エイケさんとアウグさんの新作料理発表会。


「今回は3品目あるから期待しとくれ」

「凄く美味しいんですよ!!」


 エイケさんとアウグさんの自信作、みんなも期待している中、熱せられた鉄板の上に、一品目の調理が始まる。

 小麦粉に卵に刻んだ野菜と水で戻した干し肉と穀物粥、それを混ぜた後鍋ではなくて鉄板で焼いたもの。見た目が、あれすぎる。


「もう少しなんとかならなかったの?」

「これ、ちょっと」

「……」


 匂いは良いのだけれど、どうみても嘔吐物に似た料理。

 これはいくらなんでも、日本人以外は食べるのを躊躇しそう。実際みんな嫌そうな顔をしている。


「大丈夫ですよ! これすごく美味しいんです!!」


 アウグさんが焼きあがった一部を木のへらで削り取り、木皿に移すと見た目の雰囲気も変わり、かなり美味しそうに見える。

 これでタレがあれば完璧なんだろうけど、残念ながらそれはない。


「さぁどうぞ」


 アウグさんが差し出した木皿を受け取り、カイはそのままステアーに与えた。

 熱い為ゆっくりとはいえ躊躇なくステアーは食べ始め、その様子を見てみんなも安心して食べ始める。


「みためはあれだけど、美味しい」

「少しぱりぱりした場所がいい感じ」


 感想を言いながら皆が食べている間に、エイケさんは次の料理を作っていく。

 硬いパンを薄切り、甘めの味噌を塗り、それを鉄板で両面をしっかりと焼く。味噌の焼けるいい匂いがしてきたところで、干し肉を挟んで出来上がり。


「もうちょっとまっとくれ。 これはスープと合わせるんだ」


 最近作った焼いた魚の粉末を湧いたお湯に加え、刻んだ干し野菜を入れて軽く煮立て、最後に味噌を少しだけ混ぜて出来上がり。

 これは立派な味噌汁になっている。


「このスープと合わせて食べてみとくれ」


 エイケさんはパンとスープを一緒に薦め、みんなも今度はすぐに口につける。


「うん 美味しいんだけど、味噌味がしつこい」

「美味しんだけど、どれか一品だけでいいかな」

「……スープだけでいい」


 みんなは美味しいとは言うけれど、味噌ばかりはいまいちと評価を出した。

 美味しくてもそればかりとなるとさすがにね。


「う~ん、味噌とは違う何かを考えないとそろそろだめみたいだね」


 エイケさんなら少しヒントがあれば考え付きそうだけれど、それはやっぱり自力で見つけてほしい。





 深夜、皆も寝静まったころ、車内で休んでいるカイに声をかける。


「カイ。 まだ起きてる?」


「どうした?」


「自分は人を殺すのに躊躇が減り、そして殺してしまってもほとんど何も思わなくなってしまってる。 これは自分が」


「命を奪い続けると、命を奪うことに躊躇と迷いがなくなる。 それは戦場に身を置くなら当然起こる事だ」


 ベッドから身を起こし、カイは話を始めた。


「自分の命と他人の命を無価値に思うな。 そう考えるようになってしまえば、後戻りは出来ない。 お前は今でも人を助けたいと思うだろう?」


「それは、……そうだけど」


「感情と意思を切り分けておけ。 普段と戦う時と別にな」


 上手く納得はしきれないし、やり切れるとは思わないけれど、カイのいう方法しかないなら、なんとか自分自身の意思を切り替えられるようにしなきゃ。

 自分は何も感じなくなって、誰かを傷つけるのが当然になるのは避けたい。


「お前はお前で居ろ。 前世界の心のままでな」


 そう言うとカイはベッドで横になった。

 前世界のままとはどういうことだろう。よく理解しきれないけれど、それを考えるだけの時間は朝までたっぷりある。

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