254.お料理 粉末系
2日ほど留まる中で1人だけ、精神的に落ち着いていて町での暮らしに戻っていた。話を聞けば元々娼婦な人で、頭と心の中で割り切りが出来たらしい。カイが渡したお金を元に、新しい生活を始めるとのこと。
残りの3人は精神的に体験を割り切れず、男性に対して以前のエイケさん達の様に恐怖と忌避する傾向があった。
それから少しして屋台車にエイケさんとアウグさんファルさんが移ったので、空いていた荷車に3人が寝泊まりすることになった。
最初は沸かしたお湯で体を拭き、ベッドで横になっているばかりでみんなの最初の頃みたい。当分の間は安全な睡眠が心身の癒しになるはず。
外ではエイケさんが新しい料理を夕食に披露していた。
「焼いた魚の骨が出汁になるから、しっかり焼いた後、粉になるまですりつぶしてみたんだ」
焼き魚の粉末、これも立派な調味料。それを使って作られたスープからは良い匂いがしている。
今夜の夕食は特製スープと硬いパンと干し肉の特性味噌焼き。
「これなら壺でも保存しやすいし、少し足すときにも使いやすいと思うんだよ」
「鍋に使いやすいし、次は燻製にした魚も試してみようと思います!!」
エイケさんとアウグさんの料理への情熱と研鑽は相変わらず凄いというか、それ以外はあまり気にしていないというか。
料理はどんどん多様に美味しくなり、屋台は毎回混雑するし、旅の食事はかなりよいものになっている。自分は食べられないから皆の意見だけど。
「それなら豆とかリョウのお茶でも出来るかもしれないね」
デュロがふと発した言葉に、エイケさんとアウグさんは何かに気付いたのか、顔を見合わせ話始める。
「まずは、豆からやってみようか」
「次は果物の皮ですね! 両方ともしっかり焼いてから粉末にしてみましょう!!」
二人は自分達の食事を手早く片付けると、道具を片手に何かを始める。
翌日、町からの出発前の朝食、少し目の下に隈を作ったエイケさんとアウグさんは、焼いた豆を粉末にしたきなこもどきを作り出した。
もちろん試作品みたいなものだし完全とは言えないけれど、徹夜に近い作業で作ったにしてはすごい。
「……二人とも、ちゃんと寝な。 出来たのならひと段落着いたろ?」
「あと少し、あと少しで味が良くなりそうなんだけど」
「上手くいかないんですよぉ。 どうしても焦げたような味がしてしまって」
イルレさんが呆れながら眠そうな二人に伝えるけれど、まだやりたりない様子できなこもどきをじっと見ている。
「いいから一回寝な! 眠れば何か思いつくかもしれないし、寝ないと頭も回らないだろ?」
さすがのイルレさんも強く言い、2人が大人しく屋台車に戻ったので出発。予定より長く居たし、遠巻きにこちらの様子を窺っているガラの悪そうな人達もずいぶん増えた。
気を付けて行かないと、突如襲われて大変な事になってしまうし、町を離れたら警戒を兼ねて少し移動速度を上げよう。




