17.報酬と噂
カンドの村まで襲われると思ったのだけれど、数匹の狼が出てきただけで何事もなく到着した。
「よし、これで依頼は完了だ。 取り分はギルドに配分されるから、明日受け取ってくれ」
森の騎士の冒険者はそう伝え、その場で解散になった。冒険者達は一度はギルドに戻るみたいだ。
「カイさんと仰ったかしら」
声に視線を向けると商人の奥方が馬車から降りてきた。
「今回は面白い物を使わせてもらいましたわ。 また次があれば依頼させてもらいますわね」
丁寧に頭を下げると、まだ10歳にも満たないだろう女の子も同じように頭を下げる。
「あぁ、硬殻の剣に依頼したとき縁があればな」
「それでは失礼致します」
馬車に乗り込むと、荷馬車に指示を出している夫を残して離れていった。
「オレ達も硬殻の剣に一旦行こう。 リョウは前で待つことになるがすぐ戻る」
大通りを抜け、回りに迷惑にならないようゆっくりと道を進む。
一軒家のようなギルドの前に到着し、入り口から少し離れた場所に停車。カイが1人で中に入っていくと、その間は1人でお留守番。
のんびりと村人達が歩いている様子を見ていると、田舎に来たみたいで気持ちがほっこりしてくる。
ただ、なんというかゴム履帯に変えてから少しは気楽だけど、土道に深い轍を刻みながら進むのはちょっと悪い気がする。今も通ってきた道には、そこそこの轍が出来てしまい、荷馬車とかが少し進みづらそうにしていた。
スキル欄に意識を傾けて何かないかと探してみるけど、解決できそうなものは何もなく、今選べる中でも一番軽いのが豆タンの60式無反動砲、その次に今のM24軽戦車っぽい。
気休め程度でももう一度60式無反動砲になろうかと少し考えたけど、まったく戦えない姿になるより、今のままが一番いいと思う。
のんびりと出来る事、できそうな事を確認していると、カイがギルドから出てきた。
「リョウ、良い情報が入った」
「どうかした?」
「大声では言いにくい。 中で話す」
言われたとおりハッチを開き、カイを中に入れる。
「白いローブを着た連中が、村から西の山岳地帯で見かけられたそうだ。 恐らく奴らの支部か何かがあるとみていいだろう」
カルト教団の支部、ようやく一つだけ使命を果たせそう。でも、もしかしたら人間をまた殺さなきゃいけないかもしれない。そう思うと憂鬱になる。
「それじゃ準備を整えて、明日村を出よう」
「それは良いが、具体的に何をする。 倒す事と神の存在を信じさせるのが使命だろ」
「・・・・・・どうしようか」
何も思いついていない。とりあえず倒す事は出来ると思うけど、
「仕方ない。 準備のない今は無理だが、次の村では神事を行い、奇跡の一つでも私が見せてやろう」
カイは高位の神官でもある。神と対話し、人では不可能な奇跡と言うか魔法を使える。この世界で神様が忘れられかけて久しいなら、きっと驚くことになると思う。ただ、
「軍神ヘイズ様って戦い以外の奇跡って起せたっけ?」
本で見た限り、一度も大衆的な奇跡を起すのを見たことがない。それこそ敵全てに恐怖を与えたり、カイ自身に無毒の加護を与えたりと、戦い一辺倒なものばかりだった。
「我が神は高位にある。 数多くある従属神の中に、雨を降らせたり病人を癒す神もいる。 まずはオレに任せておけ」
そういえばそうだった。カイが崇めている軍神ヘイズ、他の名前は女神セレン、多神教の中でも上位に属するのだから、従属神がたくさんいてもおかしくなかった。
それにしても、自分がこの世界に来た意義ってなんだろ。カイの方が敵を倒すのも遠慮がないし、信仰を復活させるための奇跡も起せる。今の自分自身はちょっと戦える荷車程度な気がしてならない。
「カイ、自分ももうちょっと何か出来ないか考えてみるよ」
気持ちを切り替え、スキル欄から奇跡のように見える物を探し始めた。




